まるで人材紹介業者による"人身売買"…転職のたびにカネがもらえる「入社祝い金付き求人」の深すぎる闇
だから採用しても人がすぐに辞めていく
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「入社祝い金」付きの求人とはどのような仕組みなのか。ノンフィクションライターの甚野博則さんは「人手不足の介護業界などでは、人を募るためのインセンティブとして設定されていた。ところが、祝い金目当てに転職を繰り返す人が続出し、ついに国による規制が行われた」という――。 ※本稿は、甚野博則『衝撃ルポ 介護大崩壊』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
介護業界で横行する「入社祝い金」
不足している介護人材を集めるため、介護施設の運営企業はあの手この手を使っている。だが、なかにはルール無視のケースが横行している――。
「介護人材の求人サイトや紹介業者が、“入社祝い金”を餌に人を募っている実態があります」
そう話すのは、大阪の介護施設の運営責任者の男性だ。たしかに彼の言うとおり、介護職を募集する求人サイトで、「入社したらお祝い金10万円」などと記されているのを何度か目にしたことがある。
「本来、求職者に対して社会通念上相当と認められる程度を超えた金銭などを提供して、求職の申し込みの勧奨を行ってはいけないはずでした。ところが、そうしたルールを無視しエスカレートしていることが業界では問題になっています」
1人決まれば斡旋業者に100万円
男性の話によれば、祝い金は施設側が求人サイト運営側に用意するケースもあれば、求人サイトが求職者の登録人数を増やす目的でカネをばら撒いていたケースもあるという。
また、施設側が介護職を斡旋紹介する業者に対して、一人採用できた場合に高額な手数料を支払っているという実態が横行していると話した。ちなみに、この男性が勤める施設では介護職を一人採用するにあたり、斡旋業者に100万円の手数料を支払うことが慣例になっていると明かす。
「斡旋業者による介護職の人身売買みたいなものですよ」
男性はそう語った。