トランプ政権では書類で「ディール」という言葉を多用…上司が変わっても仕事は続く米キャリア官僚の悲哀
連邦政府"効率化"で12万人解雇の真っ只中
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アメリカでは大統領が変わるたびに政策も変わり、各省庁のトップも交代する。アメリカの首都・ワシントンDCで長くホワイトハウスを取材してきたジャーナリスト、阿部貴晃さんは「上司が変われば、方針やマネジメントスタイルも変わる。連邦政府職員にとって、その違いに対応することは簡単ではない」という――。
政権交代のたびに起こる「回転ドア」現象
組織や会社において、上司が変われば、方針とマネジメントスタイルが変わり、働く環境も変わることはよくある。そうなった場合、新しい上司と方針について話し合い、変化した環境に自分をうまく合わせ、仕事を進め、新たな状況を受け入れる者もいれば、新しい方針、マネジメントスタイルに合わせられず、戸惑い、異動や退社を余儀なくされる者もいるかもしれない。
例えばあなたの上司がアメリカの大統領だったら、どうだろう。数年ごとに、大統領が変わり、働く環境が極端に変わったとしても、その状況を受け入れて仕事を進めていけるだろうか。方針が突然大きく変わるこのようなダイナミックな状況下でも、多くの連邦政府職員は働き続けている。
アメリカでは、政権交代が起きる度に、各省庁の重要ポストが交代し、いわゆる「回転ドア」現象がおきる。その規模は、数千人とも言われている。政権が変われば、上司や同僚が変わり、政策や方針が変わるので、当然の現象だ。一方で、各省庁で働く数多くの連邦政府職員は、政権交代後も、引き続き働き続けることとなる。各省庁で働くキャリア職員は200万人以上いると言われており、特に、大統領の交代で、突然の極端な方針変更に最も大きな影響を受けるのは、首都ワシントンDCの政府中枢機関で働くキャリア官僚たちである。
スポーツ用語が飛び交ったオバマ政権
2017年1月20日、アメリカ合衆国大統領がバラク・オバマ氏からドナルド・トランプ氏に変わり、ホワイトハウスでの方針とマネジメントスタイルも大きく変わった。この政権移行時に、国家安全保障会議(NSC)で新旧大統領に政策の助言をしていた1人が、フランシス・ブラウン氏だ。彼女は、NSC退任後、米メディアへの寄稿で、スポーツ用語が飛び交うオバマ大統領の発言とホワイトハウスでの働く環境、そして、その後のトランプ政権の状況を語っている。
オバマ氏のスポーツ好きは有名だ。高校時代はバスケットボールの選手だったこともあり、大統領就任後、ホワイトハウスの南庭にバスケットコートを作り、NBA選手を招いて試合をしたこともある。2012年大統領選挙当日の大統領再選が決まるかどうかの重要な日でも、日中、元NBA選手らとバスケットの試合をしたほど。