世界注目の哲学者「AIの内部は回路と電流だけ」…全知全能AIは「知能がなく思考もしていない」と断言する理由

世界注目の哲学者「AIの内部は回路と電流だけ」…全知全能AIは「知能がなく思考もしていない」と断言する理由

生成AI全盛の時代、人間にしかできない思考とは何か。そもそも、人類は何のために生まれてきたのだろうか。ベストセラー『なぜ世界は存在しないのか』の著者で、今世界でもっとも注目を浴びている哲学者に聞いた──。

画像
マルクス・ガブリエル 1980年生まれ。史上最年少の29歳で、200年以上の伝統を誇るボン大学の哲学科正教授に就任。著書『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)は、日本を含む世界中で哲学書として異例のベストセラーに。最新刊に、日本向け書き下ろし『倫理資本主義の時代』(早川書房)。

本質をつかむ天才的な思考の全容

「あなたは生まれながらの天才だ」。幾度もそう言われてきました。私は物心ついたときから、目に映るあらゆるものの仕組みを知りたがりました。ハイハイしているときも、行き先を妨げるものがあれば、それが何なのか、どうすれば乗り越えられるかを考えて試行錯誤していました。記憶をどんなに古くさかのぼっても、私のなかには「物事の本質は何なのか」という哲学的思考が常にあったと思います。

4歳のとき、独学で読み書きを覚え、思考の対象は文字の世界にも広がりました。小学校に入る頃には周囲との差は歴然としていました。私の家は学問に縁のない労働者階級でしたので、両親は「変わった子だ」と思っていたようです。

幸運だったのは、私がドイツに生まれたことです。哲学の先進国であるドイツでは、非常に早い段階で子どもの論理的思考力を見抜き、伸ばしてくれます。おかげで、私は自然と哲学の道に進むことができました。

ひととおりの課程を修了し、アメリカのニュースクール大学で教鞭をとることになるのですが、着任して3カ月たった頃、ドイツのボン大学から教授職のオファーを受けました。当時私はまだ29歳で、史上最年少のことでした。すると今度はニュースクール大学が、終身教授職のオファーを出してきました。私を手放したくないからだったようですが、これも大学史上最速のことでした。最終的に、私はドイツに戻ることを決めて現在に至ります。

哲学を知ろうとすると、古代ギリシャ語やラテン語はもちろん、私にとっては古代ヘブライ語や、さまざまな現代言語も必要でした。今は7カ国語以上を使いこなしています。だからでしょう、「どの言語で思考しているのか?」とたびたび尋ねられます。

これについては、「主題をつかんで離すな。言葉が後に続くだろう」というラテン語の格言がありますが、まさにそのとおりです。言語領域のなかで私が何かを考えることはありません。私の応答が瞬間的に見えたとしても、まず先に思考があり、その後に言葉を紡いでいます。思考と会話は直接つながっていて、間に別の言語が介在することはありません。

ではいったい私は、どうやって思考しているのでしょうか。全容を明かしてみましょう。まず、思考を始めると、心の中にクリスタル結晶のような論理構造が現れます。目に見えないクリスタルを想像してください。思考はこの結晶ネットワークをめぐる論理の旅です。ある場所に到着すれば、言語が、その位置を表現し、その位置から見た論理構造を説明します。

もし、私が論理的な破綻はたんを察知すると大変です。結晶ネットワーク全体がすぐさま反応して、「混乱を取り除け」と指令を出してきます。論理的な混乱は存在してはならず、常に取り除かねばならないのです。実のところ、仕事のほとんど、時間のほとんどを、こうした混乱を解消することに費やしています。論理的な一貫性が最高レベルに達していないものは「悪」としか言いようがありません。

すべてにおいて大事なのは論理的な一貫性です。そのためなら、既成概念や既存学問に反抗することは、どうということはありません。哲学界の古典派からは、それはもう、すさまじく敵視されます。だから、私は「哲学界のロックスター」という異名で呼ばれるのでしょうね。以前、ドイツの新聞が私のことを「ドイツ哲学のエミネム」と書きました。あの、ヒップホップ界の常識を覆したラッパー・エミネムですよ?

内心、このニックネームはお気に入りです。

詳細を見る

この記事を読んだあなたにおすすめ

画像

https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-report-240315-65168020

2024.11.26

ニュースカテゴリの記事

天才はどう育ったのか?幼少期〜現在までの育ちを解明

天才の育て方

この連載を見る
メディアにも多数出演する現役東大生や人工知能の若手プロフェッショナル、アプリ開発やゲームクリエイターなど多方面で活躍する若手や両親へ天才のルーツや親子のコミュニケーションについてインタビュー。子どもの成長を伸ばすヒントや子育ての合間に楽しめるコンテンツです。ぜひご覧ください。
夫婦2人で全部は無理?「子育て・家事・仕事」現代子育てに素敵な選択肢を

共働き家庭が増加している昨今、夫婦ともに実家が遠いと、どうしてもシッターが必要になることもあるのではないでしょうか。今回の記事では、共働き家庭のママが有資格者のみが登録できるKIDSNAシッターのサービスをはじめて利用した様子をレポートします。