「斎藤元彦氏の圧勝」は選挙制度の"欠陥"である…「2人に1人が投票所にたどり着けない」高齢世代の深刻な格差
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17日に投開票が行われた兵庫県知事選は、失職した前職の斎藤元彦氏が下馬評を覆して再選を果たした。SNSや動画を通じての「ネット型選挙」が功を奏したといわれる。今後、選挙のありようは変わるのか。高齢者の在宅医療を行っている医師の木村知さんは「今の政治は投票率が高い高齢者に忖度しているという意見を見かけるが、実際はまったく違う現実がある」という――。
今の日本は「シルバー民主主義」なのか?
総選挙が終わって1カ月がたった。自公連立政権は過半数を割り込み、かわりに少数野党のなかには、大幅に議席を伸ばした政党もあった。とくに、先月〈玉木雄一郎代表の「尊厳死の法制化」発言に恐怖で震えた…現場医師が訴える「終末期の患者は管だらけ」の大誤解〉で取り上げた、高齢者と現役世代との世代間対立を煽あおった国民民主党は、その思惑どおり若者や現役世代の支持を集めて大躍進となった。
世代間対立と選挙について考えていると、ふと「シルバー民主主義」という言葉が頭に浮かぶ。これは「少子高齢化によって、政治家が高齢者の意向を忖度し、高齢者の利益を優先する高齢者優遇の政治をおこなうようになること」を指すようだ。
選挙権がありながらも投票所に足を運ばない若者たちが多い一方で、高齢者はしっかり投票所に行ってその権利を行使する。それゆえ民意の多くを占める高齢者の意向に沿った「高齢者優遇政策」が、ときの政権によっておこなわれやすいというロジックだが、これは今の日本に実在しているといえるのだろうか。
そもそも高齢者の投票率は高いのだろうか。高齢者の民意は本当に反映されているのだろうか。そう疑問に思ったのは、ごく身近な事例を今回の総選挙で経験したからに他ならない。
それはまたしても、私の両親の事例だ。
政治への関心が高い親が「棄権」を選んだ
これまで記事にも拙著にも何度となく登場させてきた91歳になる2人だが、このほどの総選挙で生まれて初めて「棄権」したのである。
父は、心肺機能には問題はないものの軽度の腎機能障害がある。短期記憶障害もあることから、同じことを何度も尋ねることが増えてはいるが、ニュースは理解できるし言語コミュニケーションは良好だ。ただ、下肢の筋力低下が著しく、室内では伝い歩きがやっと。数メートル離れたゴミ集積所に行くのも今や困難となってしまっている。
母は、もともと間質性肺炎を患っており歩行での息切れはあったものの、今夏の入院前までは車で買い物にも行けていた。だが入院を契機に呼吸状態が不安定となり在宅酸素療法を開始。移動手段としていた車も手放した。室内でも動くと息が切れ、ふとした拍子に咳が出始めると止まらなくなる。退院してからの4カ月ですっかりサルコペニアが進行し、以後一歩も外には出られない状態だ。
だが認知機能に問題はなく、新聞もよく読むし、テレビの政治討論を見ては政権与党の失政に憤るとともにわが国の未来を憂い、私がFacebookに書き込む政治ネタにも逐一コメントしてくるくらい、時事・政治問題への関心は高い。