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子どもの包茎は治療が必要?症状と受診の目安
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順天堂大学医学部 小児外科・小児泌尿生殖器外科
順天堂大学医学部 小児外科・小児泌尿生殖器外科
順天堂大学医学部 小児外科・小児泌尿生殖器外科 主任教授。東京医科大学 消化器・小児外科学分野 兼任教授。1985年、順天堂大学医学部卒業。
男の子を持つママにとって子どもの「おちんちん」の悩みはなかなか相談しづらいもの。しかしネットでは「ムキムキ体操」というキーワードが話題となるなど、多くの方が真剣に考え、悩んでいる問題といえるでしょう。今回は「子どもの包茎」の症状と、治療法について解説します。
ママにとって男の子の育児は心も体も分からないことだらけですが、なかでも「おちんちん」については謎が多く、プライベートな部分だけにお悩みも複雑。
ママ同士でふとした瞬間にわが子以外の裸を見たり、お風呂での洗い方の話題になったりした際に、「うちの子のおちんちんの形、ほかの子とちょっと違う?」「むいて洗ったことなんてない!」とさまざまな不安が巻き起こることも多いようです。
「そもそも包茎って何?」「放っておくとどうなるの?」という素朴な疑問から、治療が必要な状態との違いについてお答えします。
包茎とは?種類による状態の違い
そもそも包茎とはどのような状態を指すのでしょう。大人の男性のお悩みというイメージが強く、何故ダメなのか分からないという女性も多いものです。
乳児はみんな包茎で生まれてくる
包茎とはおちんちんの先端の包皮口がせまく、包皮をむいて亀頭を完全に露出できない状態をいいます。
そもそも生まれた瞬間の亀頭は完全に包皮に覆われています。また、亀頭と包皮はくっついていて、包皮の出口である包皮輪も動かすことはできません。
1歳を過ぎ幼児期になると年齢とともに亀頭と包皮の間に隙間ができ、じょじょにはがれ、動くようになってきます。
さらに学童期には、亀頭の成長や生理現象としての勃起などにより、動かせば亀頭がすべて露出できるくらいに包皮がむけてきます。
包茎の種類
一言で包茎といっても、
- 普段は亀頭をおおっている皮をむいて亀頭を露出させることができる仮性包茎
- まったく皮が動かない真性包茎
- むいた皮が戻らなくなる嵌頓(かんとん)包茎
があります。
日本の成人男性の6~7割は仮性包茎といわれており、簡単にむくことができる状態で、基本的に対処が必要なのは真性包茎です。ただし、乳児期(1歳頃まで)は多くの場合皮は動かないため、判断はできません。
また、仮性包茎の場合も衛生上の問題や、本人がコンプレックスに感じている場合は処置をおこないます。
また、きつい包皮輪を無理やり剥いた場合、包皮輪が元に戻らない嵌頓包茎の状態になりますが、包皮輪が亀頭をしめつけてうっ血してしまうため、早急に処置が必要になります。
包皮を無理に剥くと包皮が裂けてそこに感染を生じたり、瘢痕化が起きたりするため、乳児期に無理矢理剥く必要はなく、逆に良くないと考えています。
海外では宗教上の理由で生まれた瞬間に割礼(かつれい)といって包皮を切ってしまう場合もありますが、無理に切除する必要はありません。
受診や治療が必要な包茎の症状
幼児の包茎は基本的に年齢と体の成長とともに改善するという前提で、以下のような症状がある場合は受診することをオススメします。
亀頭包皮炎
包皮がむけない状態が続くと、包皮と亀頭の間に汚れがたまり、細菌が繁殖して炎症をおこします。亀頭包皮炎になると
- 包皮が腫れる
- 膿が出る
- 発熱
- 排尿時の痛み
などの症状がみられます。
ただし、幼児期は不衛生な手で触ることが原因となっている場合もあるため、手洗いをしっかりとおこない、不潔な手では触らないよう子どもに伝えましょう。
母親が手洗いしていない手で無理に剥いて包皮が裂け、そこに感染がおきるのも予防すべきです。
包皮炎を繰り返すと尿道口狭窄も生じることがあるため受診が必要です。
バルーニング
包皮輪がしまり過ぎた状態だと、バルーニングを生じ、尿の飛び散りがみられたりします。
尿が包皮と亀頭の間に溜まり、おちんちんが膨らむバルーニング現象がみられた場合、受診が必要です。
尿路感染
水腎症、膀胱尿管逆流症など、尿路疾患がある場合、尿路から細菌が入ると腎盂腎炎などを引き起こす可能性があるため、包茎の治療も考慮されます。
嵌頓包茎
冒頭で触れましたが、包皮輪がきついのに無理に亀頭を露出させ、包皮が元に戻らなくなる 嵌頓包茎は、亀頭がうっ血し、酷い場合には組織が壊死してしまう可能性があるため、早急な対処が必要です。
包茎はナイーブな問題であると同時に、医師によって考え方もさまざま。勇気を出して受診したのに「そんなことで悩んでいるのか」という対応をされ傷ついた、という声もあります。
そのため、専門医である小児外科、または小児泌尿器科の医師に見ていただくことをおすすめします。
包茎の治療方法
包茎=手術しなければ治らないというイメージがあるかもしれませんが、子どもの場合、その限りではありません。
ステロイドによる翻転(ほんてん)
一般的な幼児期の包茎の場合、内科的治療としては、まずはステロイドホルモン含有軟膏の塗布を提案されます。
入浴後、清潔な状態で、可能であれば包皮の先端を亀頭部分から裂けない程度に包皮を優しく剥き、緊張のかかった包皮と亀頭の隙間(亀頭はまず見えないので)にステロイドを少量塗布しよく塗り込むことを続けます。
こうすることで包皮が柔らかくなり、スムーズに動いて亀頭を露出することができるようになります。
このとき亀頭が露出するくらい包皮が下がったとしても、必ず包皮は元に戻しておきましょう。そのままにしておくことで、せまい包皮輪が亀頭をしめつけ、亀頭が鬱血してしまうケースがあるためです。
ステロイド外用薬の副作用
なお、ステロイド外用薬の局所性副作用(塗った部分に現れる可能性のある副作用)としては、極めて稀ですが次のようなものがあります。
- 皮膚の萎縮
- 毛細血管の拡張(特に顔面に起こりやすい)
- 酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎、紅潮
- 乾皮症(肌の乾燥)
- 感染症の誘発、悪化
副作用があらわれた場合ただちに使用をやめて医師に相談してください。
ステロイドを2か月以上続けてもまったく効果がみられない場合、ならびにステロイド後に何度も再発し、再び包皮がキツくなってしまう場合も、医師に相談しましょう。
環状切開(かんじょうせっかい)
余分な包皮を環状(リング状)に切除し、残った皮膚を縫い合わせる手術です。
ステロイド塗布での治療で効果がなかった場合や包皮炎などの場合におこなわれます。
尿道の損傷といったリスクの可能性を示唆する医師もいますが、尿道損傷は極めて稀で、専門医がおこなえばほぼ起きないと考えて良いと言えます。
手術前に知っておきたいこと
子どもにとっても親にとっても「全身麻酔による手術」は大きな問題ですが、包茎はプライベートな問題であることからも、知りたい情報がなかなか手に入らないのが実情です。
何歳から可能なのか、手術にどのくらいの時間がかかるのか、体への負担はどうなのか、術後の生活への支障はどの程度あるのかなど、気になる点をまとめました。
手術は0歳から可能
小児の包茎の手術は全身麻酔下で行われ、入院が必要なことが多いので、早急な処置が必要な場合は0歳からおこなうことができますが、全身麻酔の安全性を考慮して、卒乳後が好ましいでしょう。
手術時間
手術自体は1時間未満で終わりますが、手術当日は朝9時以降、手術後は麻酔から目覚めて数時間は水分をとることができないため、小さなお子さんにはつらいかもしれません。
また、術後に一番痛い部分は創よりも、包皮と亀頭がくっついていた部分です(手術で無理やり剥がすため。剥がした部分の痛みは1~3週間続きます)。
入院日数
病院によりますが、手術前、手術当日、手術後、退院日と2泊3日から3泊4日が一般的です(病院によっては日帰りの場合もあります)。
術後の痛み
これまで包皮に守られていた亀頭部分が露出し、術後は1週間程度は腫れや痛みを感じることがあります。
患部が直接下着などにこすれないよう、亀頭部の痛みが強い場合は紙コップなどでガードする場合もあります。
費用
子ども医療費助成が適応されるため、基本的に手術費用などは無料です。病院によっては食事代などだけ必要な場合があるので確認しましょう。
子どもの包茎は小児外科、または小児泌尿器科で相談を
ママが悩んでしまいがちな子どもの包茎。基本的に生まれたときの子どもはみな包茎で、年齢とともに自然にむけるようになりますが、むけにくい場合はステロイドでの翻転で多くの場合が改善します。
しかし、包皮がまったく動かず、亀頭包皮炎を繰り返したり、嵌頓包茎になってしまったりする場合には環状切除手術が必要になります。
ステロイドか手術か、必要な治療方法は医師でなければ判断できないため、「うちの子は包茎なの?」「手術は必要?」と不安を抱えているママは、一度、小児外科または小児泌尿器科を受診してください。
監修:山高篤行
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