SIDS(乳幼児突然死症候群)になりやすい3つの原因と対策

SIDS(乳幼児突然死症候群)になりやすい3つの原因と対策

2021.02.26

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保科しほ

保科しほ

医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック

日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

既往歴のない乳幼児が突然死に至るSIDS(乳幼児突然死症候群)。今回は厚生労働省が発表するSIDSを防ぐ3つのポイントと、幼いお子さんを保育園に預ける際の注意点を解説します。

昨日まで元気だった子どもがある日寝ている間に亡くなってしまうSIDS(乳幼児突然死症候群)。

これまでSIDSは防ぎようがないといわれてきましたが、厚生省心身障害研究が発表する「乳幼児死亡の防止に関する研究」総括研究報告によると、SIDSは育児環境も大きく関係していることが分かっています。

今回はSIDSになる可能性を少しでも下げるために、知っておきたいSIDSの基礎知識と、研究データから見るSIDSの対策をご紹介します。

SIDS(乳幼児突然死症候群)とは

SIDS(Sudden Infant Death Syndrome=乳幼児突然死症候群:以下、SIDS)はその名前の通り、何の前触れもなく、既往歴のない乳幼児(0~3歳)が突然亡くなる病気です。

SIDSは世界中で発生しており、年々減少傾向にありますが、これまでの研究で、冬に時間帯としては早朝から午前中、男児、早産児、低出生体重児、うつ伏せ寝、両親の喫煙、人工栄養児で多いと言われています。

しかし、直接の原因ではなく、いまだにはっきりとした原因は解明されていません。

日本では令和元年度に78名、毎年100名弱のの乳幼児がSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第4位です。

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iStock.com/kyonntra

現在までに分かっているSIDSになり得る要因を知ることで、100%は無理でも、SIDSを防ぐことができるかもしれません。

SIDSを防ぐ3つのポイント

厚生省心身障害研究が発表する「乳幼児死亡の防止に関する研究」総括研究報告によると、SIDSの明確な予防法は確立されていないものの、ご紹介する3つのポイントが、SIDSの発生率に大きく影響することが分かっています。


1歳までうつぶせ寝をさせない

赤ちゃんは放っておくとうつぶせ状態になって寝てしまう場合もありますが、あおむけに比べてうつぶせの場合のSIDSの発症が多いことが調査の結果分かっています。

うつぶせ寝はSIDSだけではなく、まだ寝返りができない赤ちゃんの窒息を招く可能性もあるため、医学的な理由による医師からの指示がない限り、あおむけに寝させさせましょう。

医学的な理由とは、


  • 扁桃腺肥大
  • 嘔吐しやすい

などの場合があげられます。

ただし、米国国立研究所の研究によると、すでに寝返りができる赤ちゃんの場合、あおむけで寝てうつぶせになってしまっても、無理にあおむけに直す必要はないといわれています。

SIDSリスクを減らすためには、入眠時にあおむけにすることと、寝返りをした際に窒息を招くクッションのような柔らかな寝具を置かないことが重要です。

また、寝返り防止クッションの使用は、窒息事故が起きているケースもあるため控えましょう。

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iStock.com/Yue_

可能な限り母乳育児をする

母乳育児は赤ちゃんにさまざまな免疫を与えてくれるだけでなく、SIDSの研究では、母乳育児でない子どものほうがSIDSの発生率が高い、ということが分かっています。ただし、


  • 母乳量が少ない
  • 服薬している
  • 母体の産後ダメージが大きい

など、さまざまな理由で母乳育児が叶わない場合もあります。母乳育児については、無理せず可能な場合はおこなう、という気持ちでいましょう。

「母乳をあげなければSIDSになる」というわけではなく、あくまで「母乳育児のほうがSIDSの発生率が低い」という話です。

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iStock.com/szeyuen

喫煙をしない

喫煙が胎児に及ぼす影響として、低体重、呼吸中枢への弊害などがあげられます。

妊娠が分かったら、ママはもちろん、同居家族も喫煙はやめましょう。産後も受動喫煙を防ぐため、周囲と協力して禁煙を心がけてください。

これらの条件の場合、そうでない場合と比べ、3~4.83倍多くSIDSが発生することが分かっています。

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SIDS以外の睡眠中の死亡事故と対策

乳幼児の睡眠中の死亡事故はSIDSだけではありません。良かれと思って準備したベビーグッズが悲しい事故を招くこともあります。

ここでは、3つの対策とともにお伝えします。


ベビーベッドの柵をあげ、必ずロックしておく

ベビーベッドのロックが不完全な場合、寝返りなどで動いた子どもがベッドからずり落ち、柵とベッドの間に頭を挟まれ窒息する事故が相次いでいます。

たとえ赤ちゃんがまだ寝返りができない月齢でも、ある日突然動き出す場合もあるため、油断は禁物。ベビーベッド使用の際は必ずロックがかかっていることを確認しましょう。

また、大人用ベッドに寝かせていてベッドと壁の隙間に落ちて窒息する場合もあるため、必ず国が定めた安全基準をクリアしたPSCマークのついたベビーベッドを選びましょう。

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iStock.com/Image Source

布団は固めのものを選ぶ

赤ちゃんにはふわふわとした柔らかい布団を準備してあげたくなりますが、実際は柔らかすぎる布団は窒息の恐れがあるため、なるべく固めの敷き布団と固めの枕を準備します。

掛け布団はもしも赤ちゃんの顔にかかっても自分で払いのけられる軽いものにしましょう。

心配な方は体をすっぽりと覆ってくれるスリーパーなどがおすすめです。


首に巻きつくものなどを置かない

ぬいぐるみやタオル、よだれかけなどが口や鼻をふさいだり首にまきつくなど、意外なものが寝ている赤ちゃんにとっては危険なものになってしまうことも。

ベビーベッドや赤ちゃんの寝ている周囲には極力何も置かないようにしましょう。

SIDSと慣らし保育の重要性

これからお子さんを保育園に預ける保護者の方がたに知っておいてほしいのは、保育の現場でも毎年SIDSが起きているということ。

平成30年の保育施設等での事故報告の集計によると、


  • 0~1歳児での死亡事故が多い
  • 9件中8件が睡眠中の事故

であることが分かります。

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iStock.com/paylessimages

慣らし保育の初期はもっともSIDSが起きやすい

前述したように、SIDSはまだはっきりとした原因が分かっていない病気ですが、保育施設に預けた初期に起きる可能性が高いという研究結果があります。

慣らし保育は設けられる期間も園によって異なり、慣れるのが早い子や保護者がどうしても預かり期間を持てない場合はすぐに通常保育に入ることもあります。

しかし、過去15年間に起きた、保育施設での31例のSIDSを調査した研究では、31名中17名(54.8%)が、預かりから1ヵ月以内にSIDSを発症しています。

また、保育施設では基本的にあおむけ寝を推奨し、数分おきの保育士のチェックがおこなわれているにも関わらず、この研究によると発見時にうつぶせの状態だった子どもが6割を超えていました。

あおむけの状態でもSIDSは発生しますが、表情や呼吸などの変化を感じ取ることができないうつぶせ寝は、さらに危険度が高いことがうかがえます。


環境変化によるストレスがSIDSの原因に

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また、同調査によると、発症当日に体調が良くなかった子どもが67.7%と、7割近くがなにかしらの体調の異変があったことが分かります。

体調の異変には、


  • 微熱
  • ミルクの飲みが悪い
  • 食欲不振
  • ぐずり
  • 風邪のような症状

など、どれも乳幼児を育てていればよくある些細なことで、37.5度以上の発熱やよほどの体調不良がなければ保育園に預けるという方も多いでしょう。

しかし、環境の変化によるストレスは子どもにとっても想像以上に大きなものであり、とくに慣らし保育の期間は、少しでも異変があれば預けるのをやめるという選択が必要です。

愛するわが子を、理由も分からず突然失ってしまう悲しみは想像に難くありません。SIDSになり得る要因を知ることで、少しでもSIDSが減ることを願っています。


監修:保科しほ

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保科しほ

日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

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