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【小児科医監修】近年増加の川崎病。症状や原因、後遺症や再発するのか
治療や遺伝の影響はあるの?
Profile
クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。
主に4歳以下の幼児が発症する、川崎病。発病すると重い症状の出る川崎病ですが難病なのでしょうか。近年増えてきている川崎病の原因や特徴的な症状を解説します。保護者が気になる遺伝要素や再発率、後遺症、うつるのかなどについても述べています。また、川崎病の治療法もあわせてご紹介します。
川崎病とは
川崎病は、主に4歳以下の幼児がかかることが多く、なかでも1歳での発病が最も多い病気です。女の子より男の子の方がかかりやすいようで、男子の発症率が女子の1.5倍です。
川崎病は難病指定はされていない病気ですが、原因は、はっきりとは解明されていません。
遺伝的な影響や、ウイルスや細菌の感染を防ごうと免疫反応が起こって、全身の血管に炎症が生じているのではないかと考えられています。
川崎病の症状について詳しくみていきましょう。
症状
「イチゴ舌」「発疹」「両目の充血」「手足の腫れ」「突然の高熱」「首のリンパ節の腫れ、痛み」は川崎病の6大症状といわれています。
しかし、全ての症状がでない場合もあります。
イチゴ舌
イチゴ舌は、舌の表面がイチゴのような赤くブツブツした状態になります。唇が乾燥してひび割れて真っ赤になり、出血が見られることもあります。
全身の発疹
形や大きさがバラバラで、赤みのある発疹が全身に現れます。手足や、オムツが当たる股の部分に発疹が見られることが多いようです。
両目の充血
目の充血は、症状が出始めの1週間に見られることがほとんどです。
突然の発熱
川崎病の発熱の特徴は、突然38~40℃くらいの高熱が出て、その高熱が5日以上続く点です。その後上がったり下がったりして3週間程度続くこともあります。
手足の腫れ
手足は赤くなったり、腫れたりします。熱が下がると手足の皮膚がむけることもあります。
首のリンパ節の腫れ
首が痛み、耳の下の首の中央、リンパ腺上が腫れる症状が見られると川崎病の疑いがあるかもしれません。
年長児頃に発症すると、首のリンパ節の腫れと発熱は、発疹より先にみられることがあります。これらの症状があるときには川崎病の可能性もあります。
川崎病は遺伝するの?
川崎病は、日本人の病例が多いために遺伝的な影響も考えられていますが、川崎病が遺伝的な要素でかかるのか、遺伝的要素がないのかはっきりとは証明されていません。
ただし感染する病気ではないため、川崎病患者といっしょの部屋で過ごしたり、遊んだりしてもうつることはありません。
川崎病の再発率
川崎病を再発する確率が気になるママもいるでしょう。
川崎病にかかった患者の4.2%が、数カ月から数年後に再発しているという報告があります。なかでも、3~4歳までの年齢の患者の間で再発の報告が多いのですが、6歳を過ぎると再発率はぐっと減るようです。
早期発見、早期治療をすると、再発はレアケースとなるようですが、再発を抑えるためにも一度川崎病にかかったら、完治後も定期的な検診が必要です。
川崎病の後遺症
川崎病をそのまま放っておいたり、正しい治療を受けないと、心臓の冠動脈に後遺症が残ることがあります。冠動脈に瘤ができやすくなるため、将来、冠動脈が狭くなったり、冠動脈が拡大したりして急性心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患を引き起こす恐れがあります。
川崎病自体は難病指定はされていません。しかし川崎病から心臓と血管の障害になった場合には「川崎病性冠動脈瘤」という合併症と診断されます。「川崎病性冠動脈瘤」は、小児特定慢性疾病に認定されている重い病気です。そのため川崎病の発症後は、数年間専門医による観察が必要とされています。
川崎病は正しい治療が必要
川崎病と診断されると原則として入院して治療をする必要があります。症状のピークが2~3週間頃なので、だいたい2週間から3週間は入院することになります。
では、川崎病はどのような治療を行うのでしょうか。
アスピリン療法
血管の炎症を抑える効果と血液を固まりにくくするアスピリンという薬を投与します。川崎病の診断が早期の場合、アスピリン療法で効果が得られれば、この治療法のみで済む場合もあります。
免疫グロブリン療法
全身の炎症を抑えて冠動脈の合併症を防止するために、免疫グロブリン製剤を静脈内に点滴をする治療法です。川崎病の発症から5日以内に、免疫グロブリン療法を始めると、冠動脈への合併症のリスクを減らすことができます。
ステロイド
アスピリン療法と免疫グロブリン療法で効果が見られないときには、ステロイド薬を併用しての治療を行います。免疫グロブリンと併用すると、冠動脈への合併症のリスクが減らせます。
血漿交換療法
症状や治療の経過によって、血漿交換療法を行う場合があります。血液内の原因物質を取り除き、健常な血しょうに置き換え、血液中の血漿だけを交換する方法です。
川崎病は、症状が改善し合併症が見られなければ、基本的には自宅療養になります。
ただし、治療後2~3ヶ月間はアスピリン薬を服用し続け、退院後も定期的な検診が必要になります。
早期治療が後遺症のリスクを減らす
川崎病にかかるのは、遺伝的な影響も考えられていますが、うつる病気なのか、免疫疾患なのかなど原因については、まだはっきりとわかっていない原因不明の病気です。
難病指定されている病気ではありませんが、正しい治療をしないと、川崎病性冠動脈瘤や急性心筋梗塞、狭心症などの重大な合併症を引き起こし、後遺症が残る恐れがあります。
再発の可能性もあるため、川崎病にかかったら、早期治療がとても重要で、症状が改善してきても経過を見ながら定期的な検診が必要です。
子どもの将来のためにも川崎病かもしれないと思う症状が見られたら、すぐに受診することが大切です。早期治療で後遺症や再発のリスクを減らしましょう。
監修:眞々田 容子(クローバーこどもクリニック)
Profile
眞々田容子
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。