こちらの記事も読まれています
O157とはどんな病気? 症状や治療法について
Profile
クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。
【小児科医監修】夏になるとO157の発生を気にするママもいるでしょう。O157感染症は、腹痛、嘔吐、下痢、血便などの代表的な症状のほか、後遺症が残ることもある病気です。今回は、O157感染症の症状や感染経路や潜伏期間、予防法について、さらに治療や検査の方法を解説します。
O157とは?
O157感染症の原因菌
O157とは腸管出血性大腸菌O157の略称で、強い毒素を持つ大腸菌の1種です。
O157の潜伏期間
3日~8日程度
O157の感染経路と流行時期
O157は感染力がとても強く、井戸水や食物などから人に感染し、人から人へと感染を広げていきます。O157のついた手で触ったドアノブや、タオル、食器などから周囲に感染します。
O157はおもに高温多湿な環境を好むため、初夏から初秋にかけて多発することが知られていますが、低い温度にも強く、春や冬の感染もみとめられることから、1年を通して注意な菌です。
O157感染症の症状
O157が原因の食中毒では、発熱の症状があっても37~38℃程度で、すぐ解熱するケースがほとんどです。ほかにどのような症状があるのか見ていきましょう。
腹痛
O157の感染者の大多数は激しい腹痛を訴えます。
嘔吐
嘔吐もO157感染患者の多くに見られる症状のひとつです。下痢と嘔吐が激しい場合や乳幼児に両方の症状がみられる場合、脱水症状を引き起こしやすい状態です。早めに医療機関を受診し適切な治療を受けましょう。
下痢(水様便)
数回の軟便の後、だんだんと水っぽい下痢(水様便)へと変化します。連続して激しい便意が起こります。
血便
O157では、血液そのものの赤い色をした血便が出ます。激しい腹痛といっしょに見られることが多く、血便が出たら迷わず医療機関を受診しましょう。
O157に感染した場合、医療機関を受診し検査を経て、O157だと判明する場合がほとんどです。医療機関への受診や検査,治療が遅れると重症化したり、後遺症や合併症に苦しむこともあります。
O157の合併症や後遺症とは
O157感染症は合併症を引き起こしやすく、合併症が悪化すると後遺症を残したり、最悪の場合、命の危険もあります。
合併症として主に下記の2つが知られています。詳しく見ていきましょう。
溶血性尿毒症症候群(HUS)
溶結性尿毒症症候群は通称HUSと呼ばれ、下痢や腹痛などの食中毒の症状があらわれてから、数日~2週間の後に発症します。大人も引き起こしやすい合併症ですが、特に子どもが食中毒にかかるとHUSへと移行することがあります。
症状は顔色が青くなる、倦怠感、おしっこの量が少なくなる、むくみが代表的です。意識の消失や幻覚、けいれんといった症状もみられるようです。
HUSが疑われる場合、血液検査が行われます。貧血や血小板(血を止める細胞)の減少、腎臓機能障害がみられるとHUSと診断されるでしょう。
点滴や様々な薬剤で治療しますが、症状が悪化してきた場合は血液透析などで血漿交換を行う必要があります。早期の治療が回復のカギとなるので思い当たる症状があれば、一刻も早く医療機関を受診しましょう。
脳症
食中毒の合併症として脳症が起こる場合もあります。頭痛や眠気、興奮状態、幻覚などが起こり、数時間~半日ほどで、けいれんや昏睡状態に陥ります。脳症も重症化した食中毒の合併症として、大人より子どもに起こりやすい病気です。脳症が悪化した場合、手足の麻痺などの後遺症が残るケースもあります。
食中毒の前後に、頭痛や意識の消失、けいれんなどがみられたら脳症を疑って救急車を呼ぶなどして医療機関を受診しましょう。
こんな症状が出たらすぐに病院へ
乳幼児の場合、水のような下痢や嘔吐が見られた時点で、早めに医療機関を受診しましょう。便に血が混じっている、などの場合は、特に早期の受診が必要です。
病院に行く際は、可能であれば、密閉した袋にいれた下痢のついたオムツや下痢の写真を持っていく、トイレや嘔吐の回数、始まった時間、症状があらわれる数日前から直前までに食べた物をメモする、などの準備をしておくと医師への説明がスムーズかもしれません。
受診前に医療機関に電話をして、病状を説明しておくのもよいでしょう。
O157に感染した大人のなかには、無症状だったり軽度の下痢で済んだため治療をしなかったという人もいるようです。その場合でも、O157に感染した人の便には一定期間、菌が混じって排泄されています。家族間などで感染を広げないよう十分な注意が必要です。
O157感染症は予防できる?
O157は食材の加熱調理や衛生管理など、食物の取り扱いに注意を払ったり、うがい、手洗い、消毒を徹底することで感染を予防できる菌です。
厚生労働省では「食中毒予防の3原則」として下記の3つのポイントを呼び掛けています。
①つけない (手洗い、消毒)
②増やさない (食品の保管)
③やっつける (加熱、消毒)
つけない
O157感染の予防を心がけていても、O157に少量でも感染してしまうと食中毒にかかってしまうケースがあります。特に赤ちゃんや子どもに感染した場合、重症化するケースがほとんどです。普段から生肉や生魚を触った後の手洗い、手指の消毒を心がける以外にも、家族がO157に感染した場合には下記のような対応をしましょう。
・感染者と同じタオルを使わない
・感染者が浴室やトイレを使用したあとは掃除や消毒を行ってから入る
・感染者の便や嘔吐物の処理は素手で行わない(オムツ交換時も)
・感染者の衣服の洗濯は別で行う
増やさない
買ってきた食材はすぐに冷蔵庫に入れる、食事中も生ものは早めに食べるように心がける、などして菌が増えないように気を付けましょう。
やっつける
O157は、冷凍庫のなかでも死滅せずに生きているほど低温に強い菌ですが、熱に弱く、1分以上、75℃以上の熱で加熱することで死滅させることができます。
また、消毒用アルコールの利用もO157の感染予防に効果があるようです。家族内で感染者がでた場合は、水回りやドアノブは日常的にはアルコールでの消毒を心がけましょう。
O157を寄せ付けない生活を心がけて
O157とは、感染力が強い大腸菌の1種です。強い毒性を持ち、下痢や血便、腹痛といった症状が特徴です。乳幼児に感染すると重症化や合併症、後遺症を招きやすい病気です。
O157は、普段から手洗い、消毒などの予防を心がけることで、感染を未然に防げます。赤ちゃんや子どものためにも、厚生労働省の食中毒予防の3原則を参考にしてO157を寄せ付けない生活を送りましょう。
監修:眞々田 容子(クローバーこどもクリニック)
Profile
眞々田容子
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。