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【小児科医監修】とびひの原因と使う薬、市販薬の選び方
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クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。
「子どもがとびひにかかったかもしれない」と心配なママたちへ。とびひの正式名称や原因と症状を紹介します。とびひと診断されたときのケア方法やすぐに病院に行けないときに市販の塗り薬や飲み薬を使うときの注意点も合わせて解説します。
とびひについて
とびひの正式名称と原因
とびひの正式な病名は、「伝染性膿痂疹」と言います。
虫刺されやあせも、切り傷など肌トラブルが起こっている部分を手でかきむしり、その部分が細菌に感染することで起こります。全身に水ぶくれが広がる様子が火事の火の粉が飛び火することに似ているため、「とびひ」と呼ばれています。
とびひの症状
とびひには「水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」と「痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)」の2種類あります。
「水疱性膿痂疹」は夏にかかりやすく、感染するのは7歳未満の乳幼児がほとんどです。
水ぶくれやかゆみが目、鼻、口のまわりから出始めることが多く、水ぶくれの中身やただれた部分からしみ出てくる液が他の皮膚に付着することによって体のあちこちに広がります。
かきこわしてただれた皮膚周辺に小さなかゆみを伴う水ぶくれができ、その周りが赤くなります。水ぶくれは初めは透明ですが、次第に膿が入っている状態になります。水ぶくれや膿疱は簡単に破れるので、他の部分に膿が触れないように注意が必要です。
「痂皮性膿痂疹」は、季節や年齢に関係なくかかり、水ぶくれは全身にできます。
痂皮性膿痂疹も同様にかきこわしてただれた皮膚周辺に小さなかゆみを伴う水疱ができ、赤みを帯びます。赤くはれた部分に小さな膿の入った水ぶくれやびらんをつくり、厚いかさぶたができます。ズキズキした痛みを伴ったり炎症が強く、リンパ節が腫れたり、発熱やのどの痛みを伴う場合もあります。
とびひにかかったときのケア方法
とびひにかかってしまったときに家でできるホームケアを紹介します。
処方された飲み薬、塗り薬を服用
まずは病院を受診し、処方薬を医師の指示通りに服用、塗布してください。
とびひになると細菌をやっつけるための抗生物質を中心とした飲み薬が処方されます。「なんとなくよくなってきた」「患部のじくじくがおさまってきたから」と症状が軽快したと思っても、医師に指示されたとおりに服用を続けましょう。
塗り薬は、塗る前にできるだけシャワーなどで肌を清潔にします。そのあと清潔なタオルで水気をおさえるようにふき取り、患部に塗るようにしましょう。
シャワーで皮膚を清潔に保つ
細菌を減らすために皮膚を清潔に保つことが大切です。石鹸をよく泡立て患部はこすらないようにして泡で丁寧に洗いましょう。洗ったあとはシャワーでよく洗い流してください。湯船にはつからずにシャワーで済ませるほうがよいでしょう。
タオルは分ける
とびひは接触感染するので、患者とタオルを共有せずに分けることが大切です。洗面やトイレなどのタオルは、他の家族と分けるようにしましょう。
患部をかかない
とびひの部分をかいたり、触った手で身体の他の部分を触れると症状が広がります。爪は短く切り、とびひ部分は触らないようにしましょう。
赤ちゃんや子どもがどうしても搔いてしまう場合は、通気性のよいガーゼなどで患部を覆っておくことが大切です。
熱が出た、患部が大きくなったなどの時は必ず受診を
とびひは、通常、肌トラブルが起こっている部位だけに症状が現れますが、ひどくなると症状が全身に広がることもあります。さらに重症となると、全身がやけどのような状態になってしまう「SSSS」、高熱が出て、全身状態が悪くなる「敗血症」「腎障害」を引き起こす可能性もあります。
熱がでてきた、全身に症状がみられるなど、異変があったらすぐにかかりつけ医を受診してください。
病院へすぐ行けないときの対応法
「これはとびひかも」とママが気づいても、なかなか病院を受診できないときもあるかもしれません。
そんなときは、どんな方法で乗り切ったらいいでしょうか。それぞれのパターンについて、やってよいことと注意点について専門家に聞いてみました。
市販薬を活用
とびひに市販薬を使用する場合は、抗生物質入りの市販薬を使いましょう。ステロイドのみの市販薬だと、菌を増殖させ症状が悪化する可能性があるため、ステロイドのみではなく抗生物質入りの薬を選ぶことが重要です。
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などの飲み薬を使うとかゆみがやわらぐでしょう。
過去にもらった処方薬を使う
過去に医者から処方された薬が残っていたら使ってよいのか迷う人もいるかもしれません。塗り薬には使用期限が書かれていることが多いですが、使用期限は開封しなかった場合の期限です。一度開封すると中身が空気に触れて成分が変化しやすくなり、本来の薬の効果が薄れてしまい、品質が保証できなくなります。薬によっては身体に害を及ぼす場合もあるため、使用期限の過ぎている薬は破棄するようにしましょう。
また、とびひの症状がなくなっても原因となる細菌が残っている場合があるので自己判断で辞めず、医師の指示で最後まで薬を使うようにしましょう。
幼稚園・保育園の登園は?
とびひは、出席停止が義務づけられた病気ではありません。でも、周りにうつる可能性があるので医師にみてもらい、きちんと治療をしてもらう必要があります。
炎症のひどい部分や化膿部分が広がっている場合は、傷を広げないように傷口に直接触らないことを伝えたり、とびひ部分を包帯で覆ったりしてもらいましょう。園によってはとびひの状態で登園許可証が必要になる場合もあるので、通っている園に相談するとよさそうです。
適切なケアと応急処置がとびひを早く治す近道
とびひは感染力が強く、接触感染をする病気です。子どもだと我慢できずに患部をかいたり、いじったりしてしまうケースも多く見られます。でも、その手で体のあちこちをさわってしまうと、症状があっという間に広がってしまいます。
とびひの症状がみられたり、疑わしいときにはすぐに病院を受診し、病院から出された飲み薬、塗り薬を正しく使うことで早く治すことができます。普段の予防をしっかりしつつ、どうしてもすぐに病院に行けないときには塗り薬や飲み薬などの市販薬を使ったり、適切なケアと応急処置法を知っておくことが大切でしょう。
監修:眞々田 容子(クローバーこどもクリニック)
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眞々田容子
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。