スポーツで負けても逃げださないメンタルはどう養う?【中澤佑二】

スポーツで負けても逃げださないメンタルはどう養う?【中澤佑二】

2021.12.21

Profile

中澤佑二

中澤佑二

元プロサッカー選手

1978年2月25日生まれ。埼玉県出身。元サッカー日本代表。三輪野江小→吉川東中→三郷工業技術高→FCアメリカ(ブラジル)→ヴェルディ川崎→東京ヴェルディ1969→横浜F・マリノス。

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は元サッカー日本代表の中澤佑二さんが、「負けると逃げる癖がある子どもにどう接するべきか」というお悩みに答えます。

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【お悩み】挫折してから逃げ癖がついたわが子への接し方は?

男13歳、女11歳のママ
男13歳、女11歳のママ

もともと足が速く、小1から3年は持久走大会で学年1位をとっていた長男。しかしそれ以降は体格差も出てきて、次第に1位を取ることは難しくなりました。

負けず嫌いのため、小4のときは「持久走大会に出ない」と言い出し、スタート時に泣き出して最後まで走り切れませんでした。小5では100%の力で走らず、結果10位でゴール。

サッカーでもクラブチームに入ってレギュラーでがんばっていましたが、仲間との実力差を感じたころから練習に行きたがらなくなりました。

現在は中1で、バスケ部に入り、学年リーダーをしていますが、スポーツを変えてもまた同じことになるのではないかと心配です。

小学生のときに挫折を経験し、逃げようとした息子に、親としてどう声をかければよかったのか、未だに悩んでいます。また、今後同じようなことがあったときにどう接すべきでしょうか。

【中澤さんの回答】小さいうちに挫折を経験するのはよいこと

まず、1位をとれなくなったり、競技を変えたりすることを、相談者さんは「逃げ癖」とネガティブに捉えていますが、幼いうちに挫折を経験しているのは悪い事ではないと思います。

挫折を経験しないまま大人になってしまうと、いざ挫折したときになかなか立ち直れません。今回、息子さんが早い段階で苦しい体験に直面したことはポジティブに捉えてよいでしょう。

もしかしたら低学年で続けて1位をとったことで、「1位すごかったね、来年も1位を目指そうね」という無言の期待を感じ取り、それ以降、「1位をとるためにがんばらなきゃ」「1位じゃないとダメなんだ」とプレッシャーを感じていたのかもしれませんね。

僕の子ども時代を振り返ると、持久走はいつも真ん中くらいだったし、サッカーのレギュラーもとれていなかった。仲間との実力差を常に感じていたので、息子さんが何でもできてしまうのは、個人的にはうらやましいお悩みだと思いました(笑)。

子どもが気弱になったときや挫折をしたとき、親としてどう声かけすべきかという点については、「雨が降ろうが台風が来ようが練習したい!」「もっとうまくなりたい!」「日本代表になりたい!」というような気持ちが本人にあるかどうかによっても変わってきます。

「負けるな!」という叱咤激励で奮起する子もいれば、強く言われて気持ちが萎縮する子もいるし、見守る事で自分で取り組む子もいるので一概には言えません。

僕は昭和気質な親父の血を色濃く受け継いでいて、その僕の血を受け継ぐ自分の娘には「何をやってもいいけど、やるからには全力でやるように」と言ってきました。自分の子に「どのように声をかけるとよいか」は、お子さんをよくみている、お父さんお母さんのほうが分かると思います。

相談者さんのお子さんは1位にこだわっている可能性があるので、今後、負けたことでバスケをやめようとしたら「1位じゃなくてもいいんじゃない?」「ミスをしても大丈夫だよ」「楽しんでやってごらん」と言ってあげて、上を目指すのではなく、息子さんが楽しくやれるようサポートしてあげましょう。

現在中1で、サッカーをやめたことで無気力になっているわけではないし、新しいスポーツに挑戦しているなら、スポーツ全般が好きなのでしょうね。心配はいらないと思います。

また、中1で競技を変えること自体は珍しいことではありません。サッカーなど足を使うスポーツの場合、幼少期から始めたほうが上達しますが、手を使うスポーツは何歳からスタートしても上達するといわれているので、バスケへの転向は特に問題ないと思います。

ちなみに、現在ヨーロッパでは、サッカーは小学校低学年でプロになれるかどうかが決まるといわれています。僕自身は小6で始めましたが、たまたま僕のスタイルが時代と一致していただけで、今の時代に6年からスタートしても、プロになるためには、かなり努力しないといけないでしょうね。

スポーツは、互いに勝ちに向かって勝負しても、必ず一方が勝ち、一方は負ける非情な世界です。しかし、負けたからといっていちいち悲観していては、次の戦いにも勝てません。「次もがんばるしかない」という切り替えも必要です。

僕自身、現役時代に負けが続くときは「成功はなくても成長はある」と自分を励ましてきました。そう思うしかなかった部分もありますが(笑)、勝負の結果より、「どれだけ自分がやれたか」を重視し、ストイックに練習し続ければ、気がつけば、絶対に「自分は成長している」と思えるはずです。

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中澤佑二

1978年2月25日生まれ。埼玉県出身。元サッカー日本代表。三輪野江小→吉川東中→三郷工業技術高→FCアメリカ(ブラジル)→ヴェルディ川崎→東京ヴェルディ1969→横浜F・マリノス。

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