気温が上がってくると、食中毒に特に注意が必要な季節になってきます。O157は、食中毒を引き起こす菌のなかでも感染力が強く、日頃の予防が大切です。O157とはとはどのような症状なのか、O157の潜伏期間や死滅温度、加熱やアルコール消毒による予防対策、家庭でできる2次感染予防法をご紹介します。
O157の正式名称は、腸管出血性大腸菌O157です。大腸菌の一種で、食中毒の原因菌として知られています。通常の食中毒は100万個単位の菌で感染しますが、O157は50~100個程度の菌でも感染するほどの強い感染力が特徴です。
食中毒は、初夏から初秋に起こることが多いのですが、O157は気温の低い時期にも発生する可能性があり、1年を通して注意が必要です。
O157に感染すると、主な症状として腹痛や下痢の症状がみられます。潜伏期間を経たあと、激しい腹痛を伴った下痢が頻繁に起こり、その後、血便が出ることが特徴です。吐き気や嘔吐、発熱を伴う場合もありますが、発熱があっても一時的で高熱にはならないケースがほとんどです。
O157はどのように感染するのでしょうか。
O157は、菌に汚染された食品を、食べることで感染してしまうことがほとんどです。
飲食物以外にも、O157にかかった子どもの便や嘔吐物から出る菌に触れたり、感染した人が触ったドアノブやおもちゃなどに触れた手で食事や調理をしたりすることなどで人から人への二次感染をしていきます。
咳やくしゃみを介したり、同じ空間にいたりすることだけではO157には感染しません。
O157にかからないためにどのようなことに気をつければよいでしょうか。厚生労働省の食中毒予防の3原則をもとに具体的な予防法を見ていきましょう。
調理の前や帰宅時、トイレやオムツ交換のあとなどには、必ず石鹸を使って手を洗い、菌をつけないことが大切です。
ほかにも、まな板やお箸などの調理器具や食器は、使う度に洗い、清潔に保ちましょう。肉や魚などの生もの用と野菜、調理済みのものに使用する、まな板、包丁などの調理器具を使い分けることも菌をつけない対策になります。食品を保管するときは、菌が付着しないようにラップや密封できる容器で保管することで菌から守ることができます。
購入した生ものなどの食品はなるべくその日の内に使いきるようにしましょう。菌は高温多湿な環境で増殖するため、どうしても使いきれなかった食材は冷蔵庫などの低温で保管することが大切です。また購入直後の食材もできるだけ早く冷蔵庫に入れるように心がけましょう。
O157の細菌は熱に弱く、死滅温度は75℃です。75℃以上の熱で1分以上加熱することで菌を消滅させることができます。O157の死滅温度での加熱が行われていなかったために、感染が広がった事例として過去に、牛肉や牛肉の加工品、サラダなどが原因の集団感染がありました。肉や魚は死滅温度の75℃を意識して、中心部まで十分に加熱しましょう。
またO157は75℃で1分以上の加熱で死滅しますが、食べ物を電子レンジで温めるだけでは菌は死滅しないので注意が必要です。
O157に感染したときに家庭内で2次感染しないための予防対策を紹介します。
O157は、菌のついたタオルを共有すると感染の可能性があります。家族間でもタオルの共有はせずに分けるようにしましょう。
O157に感染すると、便からも菌が排出されるため、オムツ替えの際に便に触れないように気をつけましょう。直接便に触れてしまわないように手袋の着用が予防につながります。
もし触ってしまった場合には、石鹸を使ってよく手を洗い、アルコール消毒をすることが有効です。
O157の菌がついたドアノブを触り、調理や食事をすると家庭内で感染が広がります。ドアノブなどの家族みんなが触れる場所はアルコール殺菌するとよいでしょう。
子どもに下痢の症状がある場合にはシャワーのみにしましょう。温度の高い湯船でO157が増殖する可能性があるからです。家庭内で感染が広げないために、O157の患者の入浴は最後にし、入浴後は掃除や消毒をするとよいでしょう。O157の流行シーズンには、普段からお風呂の水は毎日変えるようにしたいですね。
O157は普通の食中毒よりも感染力が強いため、普段の食品の扱い方や保管の仕方などに十分注意が必要です。O157の正しい予防法とは
手洗い、うがい、アルコール消毒を徹底すること
食品を死滅温度で十分に加熱すること
調理器具や食器の消毒
食品の低温保存、殺菌する
など食中毒にならないために心がけて感染を防ぎましょう。
また家庭内でO157の感染があった場合には、タオルの共有は避けて、ドアノブは殺菌する、感染者のお風呂は浴槽に浸からずにシャワーにするなどの対策で家庭内での感染を広げないように注意しましょう。
眞々田容子(クローバーこどもクリニック)
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。
症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。
お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。
2018年06月27日
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