乳幼児期に起こる子どものアレルギー。アレルギー検査はいつから受けられるのか

乳幼児期に起こる子どものアレルギー。アレルギー検査はいつから受けられるのか

肌の発疹が突然子どもに現れたときや、ミルクや離乳食が始まるタイミングなどで、子どものアレルギーを心配する保護者もいるかもしれません。乳幼児期に注意したいアレルギーにはどのような種類があり、アレルギー検査はいつから受けられるのでしょうか。今回は、乳幼児期に起こるアレルギーについての概要や、検査方法について解説します。

乳幼児期に起こるアレルギーの種類と傾向

現在では国民のおよそ3人に1人が持っているといわれるアレルギー。子どもの体に発疹が出ると、アレルギーではないかと心配になる保護者もいるかもしれません。

また、子どもの体に起こるアレルギーに気づくために、保護者はどのような知識を身につけておくとよいのでしょうか。

子どもの一番近くにいる保護者が乳幼児期のアレルギーについて知ることは、早期発見にもつながります。まずは、アレルギーの種類やメカニズムからみていきましょう。


アレルギーの種類とメカニズム

アレルギーとは、本来体を守るために備わっている「免疫」反応が、ある特定の物質に過剰に反応を起こし、体に異常が引き起こされた状態のこと。体に現れる症状としては、発疹やくしゃみ、呼吸困難などがあります。

iStock.com/triocean
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アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」といいますが、私たちの身の回りには、食物や、動物、ハウスダスト、ダニ、カビ、花粉などさまざまなアレルゲンが存在しています。

これらのアレルゲンが原因となって引き起こされるアレルギー疾患は、


  • 喘息
  • アレルギー性鼻炎
  • 花粉症
  • アトピー性皮膚炎
  • アレルギー性結膜炎
  • 食物アレルギー
  • 薬物アレルギー
  • 蕁麻疹
  • アナフィラキシー

などがあります。全身に強い過敏反応が起こるアナフィラキシーは、意識を失ったり、呼吸困難になったりと、命の危険もあるため注意が必要です。

アナフィラキシーショックを引き起こす代表的なアレルゲンにハチの毒やそばなどがありますが、人によってアナフィラキシーを引き起こす原因物質は異なります。


1歳未満の乳児に多い食物アレルギー

アレルギーのなかで特に1歳未満の乳児に多いのが食物アレルギーです。体に摂取した食物が原因となり、免疫学的機序によって、じん麻疹や湿疹、下痢、咳、呼吸困難などの症状が引き起こされます。

免疫学機序とは、体を守るための免疫反応が過敏になった状態のこと。アレルギーを日本語に訳すと「過敏症」という表現になるように、アレルギーは、私たちの体に起こる免疫反応の1つ。この反応は、主に人間以外の動植物由来のタンパク質に過敏に反応している状態です。

食物アレルギーは、即時型アレルギー反応と、非即時型(あるいは遅発型、遅延型)と呼ばれる反応がありますが、特に多いのがアレルギーの原因食物を摂取後、およそ2時間以内にアレルギー反応が出る即時型アレルギーです。

また、0歳児の食物アレルギーの原因は、鶏卵が最も多く、次いで牛乳、小麦で、これらの3品目で全体の9割を占めています。

ここに、大豆と米を加えて「5大アレルゲン」と呼ばれていますが、子どもの成長とともにその割合が減少していくのが、乳幼児期の食物アレルギーの特徴です。

iStock.com/I am a female photographer from Thailand I love create an
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乳幼児型の食物アレルギーは、1才頃に診断されたとしても、およそ9割の子どもは遅くとも小学校入学時までには自然に良くなることが多いと言われています。

反対に、魚類やエビ・カニ、果物などは成人型が多く、子どもの成長とともに増加傾向にあります。

昔と比べると野菜や果物、いも類などのアレルギーの報告も増えつつあるため、乳幼児期のアレルギー症状が落ち着いても、継続して子どもの食事を見守ることが重要です。

近年は、キウイ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなどの果物や野菜を食べたときに口腔内がかゆくなる口腔内アレルギーの報告も増えています。口腔内アレルギーは、花粉症との関連が高いと考えられています。


アトピー性皮膚炎とアレルギーとの関係

アレルギーは、乳児期にアトピー性皮膚炎として発症するケースもあります。

生後6カ月以下の乳児の場合は、主に顔面に痒みを伴った湿疹が現れますが、幼児期になると、全身の乾燥が目立ち、ヒザやヒジの内側、手首などの皮膚の薄い箇所が痒くなりやすいです。

iStock.com/DmitryPK
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また、乳幼児期のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーが関係している事が多く、食事面からの診断・治療が有効なケースもあります。

およそ60~80%の乳幼児期のアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関係しているという報告もありますが、すべてのアトピー性皮膚炎の原因に、食物アレルギーが関係している訳ではないため自己判断しないよう注意しましょう。

出典:リウマチ・アレルギー情報/厚生労働省

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アレルギー検査の種類と検査時期

保護者の中には、アレルギー検査によって事前に子どものアレルゲンを把握しておきたいと思うこともあるかもしれません。

アレルギー検査にはどのような方法があり、いつから受けられるのでしょうか。


アレルギー検査の種類と方法

一般的なアレルギー検査は大きく分けて2種類あります。


  • IgE抗体検査(血液検査)
  • 皮膚テスト(プリックテスト)

IgE抗体検査は、アレルゲンに対して即時型アレルギーを引き起こすIgE抗体が血液中にどれくらいあるかを調べる検査です。現在はその段階を0~6の7段階で示す方法が一般的で、ある程度のアレルギーのステージがわかるようになっています。

ただし、血液検査の結果が必ずしも臨床症状と相関しない場合もあるため注意が必要です。特に食物アレルゲンでは、特異IgE抗体がある程度高い場合に、その原因アレルゲンを摂取しても症状が出ないケースも。

一方、皮膚テストは、皮膚表面から直接アレルゲンを接触させてアレルギー反応が起こるかどうかを調べる検査です。

iStock.com/microgen
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たとえば、梨アレルギーの場合、皮に反応しているのか、それとも実に反応しているかは血液検査ではわかりません。皮膚テストでは、それぞれを皮膚に接触させることで、どちらにアレルギー反応が起こるか判断することが可能です。

即時型アレルギーの場合は、すぐに反応が出る場合がありますが、反応に時間がかかる遅延型アレルギーの場合は、パッチテストを行って調べます。

どちらの検査も補助的な検査であるため、アレルギーを決定づけるものにはなりません。そのため、食物アレルギーを確定したい場合は、食物除去試験や、食物経口負荷試験を行って判断します。


アレルギー検査はいつから受けられる?

血液検査によるアレルギー検査は、生後半年頃から受けることができますが、赤ちゃんは血管が細く、皮膚から見えづらいため、希望すれば必ず血液検査ができるとは限りません。

2歳までの乳幼児の食物アレルギーでは、スキンケアや、環境指導などによる経過観察になることが多く、湿疹が出ている場合はステロイドなどを処方して治療します。血液検査は、これらの治療で改善されなかった場合に初めて考慮されます。

血液検査によるアレルギーの検査費用は、症状がある場合は保険適用となり、およそ2万円程度かかる検査費用が数千円の負担で受けることができます。乳児医療がある場合は、無料となります。

一方皮膚テストは、比較的簡単に受けることができる検査です。費用は、1箇所あたりおよそ400円程度となっていますが、こちらも保険適用の検査対象になるため、乳児医療であれば無料で受けることができます。

子どもにアレルギーの疾患が見られた場合や、気になる症状がある場合は、小児科やアレルギー専門医のいる病院を受診し、相談することから始めましょう。

子どもの様子をよく観察しておくことが早期発見に

アレルギーにはさまざまな原因が考えられますが、乳幼児期に多い食物アレルギーで気にかける必要があるのは、赤ちゃんが初めて口にする食品を与える場面かもしれません。

粉ミルクを含め子どもが初めて食べる食品を与える場合は、アレルギー反応が出ることも考えて、病院の受診ができる平日の午前中のタイミングを選ぶことが大切です。

iStock.com/Alex Liew
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また、子どもの皮膚に湿疹が現れたり、咳が出る、鼻水がとまらないといった症状で病院を受診する際は、熱の有無や全身状態の観察以外にも、摂取した食べ物について記録をしておくとよいでしょう。皮膚に気になる発疹が出ている場合は、スマートフォンで撮影しておくのもひとつの方法です。

アレルギーに関わらず、どの病気にも当てはまることですが、子どもの食生活や様子を普段から観察しておくことが早期発見につながります。検査や治療については、かかりつけ医と相談しながら子どもにとってベストな方法を見つけていきましょう。


監修:眞々田容子(クローバーこどもクリニック)

Profile

眞々田容子(クローバーこどもクリニック)

眞々田容子(クローバーこどもクリニック)

台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。 症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。 お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。

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