子どもの花粉症が増えている?乳幼児期の検査と治療の選択肢

子どもの花粉症が増えている?乳幼児期の検査と治療の選択肢

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横浜市立大学医学部卒。耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医。大学病院や地域の中核病院で研鑽を積んだ後、おひさまクリニックにて耳鼻咽喉科を担当。小児から高齢者まで幅広く対応しています。

アレルギー疾患のひとつである花粉症。これから迎える花粉シーズンに向けて子どもの花粉症の受診時の検査や治療法が気になる保護者もいるかもしれません。今回は、花粉症が増えている背景や、花粉症のメカニズムと症状、検査、治療について解説します。

国民のおよそ25%が花粉症を持っている

花粉のシーズンが近づいてくると気になる花粉症。厚生労働省の全国調査によると国民のおよそ25%が花粉症を持っていると考えられています。

子どもにくしゃみや鼻水、鼻づまりの症状がみられるときや、目のかゆみがあるときは、花粉症を疑うこともあるのではないでしょうか。

保護者自身が花粉症に悩まされている場合は、子どもにも症状が出ないか気になることもあるかもしれません。まずは花粉症の概要からみていきましょう。


日本の花粉症の約7割がスギ花粉症

花粉症は、アレルゲンに対しての抗体をつくりやすいという遺伝的な体質と、花粉を大量に吸い込むという環境要因の相乗効果で発症します。

そのため、両親のどちらかが鼻炎や喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどの体質を持っていれば、発症する可能性が高くなると考えられています。

日本の花粉症の約70%はスギ花粉症。スギ花粉症が多い理由には、国土に占めるスギ林の面積が、全国の森林の18%、国土の12%と多くを占めていることが挙げられます。

iStock.com/TAGSTOCK1
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これには、戦後に農林水産省が木材の需要増加に対して、コストの少ない人工林であるスギやヒノキの植林を盛んに行ったことが関係しています。

ところが、今から20~30年程前までは、スギ花粉を吸い込んでもアレルギーは発症しないと考えられていました。しかし、花粉症の発症率は年々増加傾向にあります。

実際に、子どもの花粉症は印象としても増えて低年齢化しているのを感じますし、データとしても示されています。

また、スギ以外の以下の花粉症も増えているので注意が必要です。


  • ヒノキ
  • シラカンバ
  • オオバヤシャブシ
  • コナラ
  • クリ
  • オリーブ
  • ハンノキ
  • 草本花粉(イネ科・キク科)

これらの花粉症増加の背景には、食生活の変化や衛生状態の改善によって、鼻粘膜の環境が大きく変わったということや、花粉が私たちのところへやってくる過程で外気に浮遊する化学物質が吸着していることなどが考えられています。

さらに、果物や野菜のアレルゲンには花粉のアレルゲンと構造が似ているものがあり、花粉症の人がこれらの果物などを食べたときに口腔アレルギーを発症する確率が高くなることがわかっています。

子どもが食事中や食後に口や耳などの痒みを訴える場合は、専門医に相談しましょう。

【耳鼻科医監修】子どもの花粉症は何歳からなる?可能性や受診目安について

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花粉症のメカニズムと症状

花粉症は、花粉が鼻や目に入ることで体が過剰に反応するアレルギーです。

なぜ花粉症になると、くしゃみや、鼻水などが頻繁に起こるのでしょうか。これには、花粉症が鼻の中に入ってきたときに、肥満細胞という細胞からヒスタミンが放出され、このヒスタミンが、鼻の粘膜にある神経や毛細血管を刺激することが関係しています。

花粉症の反応には、体の中に入ってすぐに反応を起こす「即時相(そくじそう)反応」と花粉がない場でも反応を起こす「遅発相(ちはつそう)反応」の2種類があり、くしゃみや鼻水、鼻づまりといったアレルギー性鼻炎や、目が充血したり痒くなったりするアレルギー性結膜炎を引き起こします。

iStock.com/simon2579
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子どもは、くしゃみや鼻水、目の痒みといった症状も自分でうまく伝えられない場合もあるのではないでしょうか。花粉症は、風邪などの症状と似ていることから、判断しにくいという点にも注意が必要です。

自然治癒せず、放っておくと喉や鼻の病気が慢性化して中耳に滲出液がたまる滲出性中耳炎や副鼻腔炎や、中耳炎の引き金になる危険も。

さらに、鼻や目に起きるつらい症状は、子どもの活動を低下させたり集中力を削いだりと、日常生活に影響を与えるため、日頃から子どもの様子をよく観察して受診するべきかどうか判断しましょう。

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乳幼児期の花粉症の検査と治療

花粉症の症状が気になる場合は、アレルギー専門医や小児科、耳鼻科を受診します。目の痒みがひどい場合は眼科など、子どもの症状にあわせて受診先を選ぶことが大切です。


医師の診察と血液検査で判断

花粉症の診断は、いつからどのような症状が出ているかを問診で確認した後、鼻の粘膜を確認したり、目の結膜にアレルギー症状が出ていないか確認して行います。

iStock.com/Kyryl Gorlov
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それ以外の方法としては、採血によるアレルギー検査があります。

ハウスダストや食物アレルギーなどの検査と同様にIgE抗体検査(血液検査)によってアレルギーの段階を調べることができますが、月齢が小さい場合は採血が難しいことも少なくありません。

最近では、指先からごく少量の血液を採取して調べる簡易検査の選択も増えつつあります。摂取する血液が少ない分アレルギーのチェック項目が少ないですが、すぐに結果がわかり痛みの少ない検査です。

保険適用で受けることができるので、希望する場合は医師に相談するとよいでしょう。

乳幼児期に起こる子どものアレルギー。アレルギー検査はいつから受けられるのか

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治療の選択肢は年齢によって異なる

花粉症の治療には、「対症療法」と「根治療法」がありますが、近年は花粉症を根本的に治す根治療法に注目が集まっています。

根治療法のひとつである「舌下免疫療法」は、スギ花粉を原料とする薬を少量ずつ、継続的に飲むことで体を少しずつ慣らしていき、アレルギー症状を根本的に改善する治療で、5歳頃が目安となっています。

ただし、根治療法は効果に時間がかかり、対象とならない方もいます。そのため花粉症の治療は、抗アレルギー剤の飲み薬、ステロイド点鼻液、抗アレルギー剤・ステロイド点眼液など症状の緩和を目指す対症療法がとられます。これらは根治療法と併用も可能です。

その他、鼻粘膜のひだにレーザー光線を照射して意図的に花粉症の症状が出ないようにするレーザー治療は、保険適用で7~8歳頃から受けることが可能です。どの治療法にも個人差があるため、子どもに合った治療を選びましょう。

花粉に触れる機会を少なくすることが対策に

花粉症対策の基本は、花粉との接触を少なくすることです。花粉が多く飛ぶ時期にはマスクやメガネをして防ぐのはもちろん、外出を控えたり、帰宅時には顔や目を水で洗い流すとよいでしょう。

家に入る場合は窓を閉めて花粉が入らないようにしたり、花粉がつきにくい衣服を身につけるといった工夫も大切です。

iStock.com/monzenmachi
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環境省花粉観測システム(愛称:はなこさん)では、花粉の飛散の状況を地域別に確認することが可能です。花粉情報の収集をしっかりすることが、花粉に触れる機会を少なくするための行動につながるでしょう。

日本気象協会によると、2021年の東京のスギ花粉のピーク予想は3月上旬から4月下旬頃、ヒノキ花粉のピーク予想は4月上旬から中旬頃となっています。

花粉ピーク予測のグラフィックが入る予定

これから始まる花粉シーズンに備えて、親子でしっかり対策を行いましょう。

出典:花粉症特集/厚生労働省

出典:日本気象協会 2021年 春の花粉飛散予測(第3報)~花粉飛散は2月上旬からスタート!3月は各地でスギ花粉がピークに!~/日本気象協会


監修:金髙清佳(おひさまクリニック)

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金髙清佳(おひさまクリニック)

金髙清佳(おひさまクリニック)

横浜市立大学医学部卒。耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医。大学病院や地域の中核病院で研鑽を積んだ後、おひさまクリニックにて耳鼻咽喉科を担当。小児から高齢者まで幅広く対応しています。

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