産後の生理再開のタイミング。母乳の分泌への影響はあるのか

産後の生理再開のタイミング。母乳の分泌への影響はあるのか

母乳育児をしているときは生理の再開が遅れ、また母乳をやめると生理がくると言われていますが、授乳中は本当に生理が来ないのでしょうか。産後の生理が遅れる原因や、生理による母乳への影響、出産後の妊娠について解説します。

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

産後の生理再開に「早い、遅い」はあるのか

出産後、気になる生理の再開。妊娠すると生理が止まりますが、産後にもしばらく生理が来ないのは、子宮がまだ十分に回復していないからという理由があります。

産後は出産時に子宮から出血した残りや、胎盤があった場所や産道の傷跡からの分泌物など悪露による出血がおよそ4~6週間程度続きますが、これは生理とは異なるもの。悪露による出血が終わっても、すぐに生理が再開することはほとんどありません。

生理再開時期は母乳育児が関係

生理再開には、妊娠中に胎盤から多く分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)や、黄体ホルモン(プロゲステロン)により抑えられていた卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモンの分泌が再開すること、卵巣機能が再び機能することが関係しており、子宮が妊娠前の状態に回復するという条件が不可欠です。

子宮は産褥期と呼ばれるおよそ6~8週間後に妊娠前の大きさに戻りますが、機能が戻るにはもう少し時間がかかると考えられています。

生理再開には個人差があり、長い人では1年ほど無排卵になることも。そして、もうひとつ大きく関係しているのが、母乳育児かどうかという点です。
授乳
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産後は妊娠中から分泌されるプロラクチンというホルモンによって、排卵が抑制され無月経期間が継続します。プロラクチンは、赤ちゃんが母親のおっぱいを吸うことで分泌されることから、母乳育児が生理再開に大きく関係しているといえるでしょう。

一方、授乳期間が短い場合、プロラクチンの分泌量が減る影響を受けて生理の再開が早まる可能性があります。また、夜間断乳をすると、プロラクチンの分泌が減る関係で排卵が起こりやすくなり、授乳中でも生理が再開する場合も。

・生理再開は一般的に、産後2~3カ月後
・授乳をしている場合はそれにプラスして3~4カ月後

と考えられており、およそ70~80%の授乳婦の方が、産後8カ月頃までには月経再開するといわれています。

生理が再開しなくても妊娠する可能性はある

卵巣機能の働きが不安定な産後初回の生理は、無排卵性の場合が多いですが、人によっては排卵している場合も。排卵周期の回復は個人差があるため、産後直後でも避妊せずに性行為をすれば、当然妊娠する可能性が高まります。

産後初めての生理が来る前に排卵が起こる可能性もふまえ、生理がなかなか来ないときは妊娠をしている可能性が考えられることも忘れないようにしましょう。
妊娠検査薬
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また、生理の乱れや不調には病気が潜んでいる可能性もあります。月経過多の場合は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープ、子宮内感染などの病気も考えられるため注意が必要です。

出産後1年以上をすぎても生理が再開しない、または以前と比べて出血量が多い、生理期間が長い、1度生理がきてから2回目が来ないなど気になることがある場合は、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。

生理再開は母乳へ影響するのか

母乳育児の場合、生理再開によってどのような影響を受けるのでしょうか。

生理で母乳の味が変化する医学的根拠はない

母乳は母親の血液から作られていますが、母親自身の体調や、食べたものによる母乳の味の変化はないと考えられています。そのため、生理が再開したことで母乳の味の変化が起こるという医学的な根拠は解明されていません。
授乳
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生理が再開したタイミングで赤ちゃんがおっぱいを飲みたがらない場合、味の変化を疑うことがあるかもしれませんが、生理が原因で母乳の味や栄養が変わるということはありません。

生理痛などで飲む鎮痛剤は、基本的に問題なく使えます。しかし、赤ちゃんへの影響を考えるとなるべく飲まない方がよいでしょう。不安な場合は自己判断で服用せず、医師に相談すると授乳中に飲んでもよい薬の処方を受けることができます。

生理中の母乳分泌量減少は一時的なもの

授乳中に生理がくると、母乳を作るプロラクチンというホルモンが減る関係で母乳が出にくくなる場合も。ですが、母乳の分泌量が減るのは一時的なもの。生理が来たからといって母乳が全く出なくなるわけではなく、生理が終わるとともに、またいつも通りに授乳できることがほとんどです。

母乳の分泌には、母親が感じるストレスにも大きく左右されます。特に産前産後はホルモンバランスが乱れやすい時期のため、あまり神経質にならずに授乳を続けることが大切です。

とはいえ、赤ちゃんの吸う量と母乳の分泌が合わない場合は、授乳中に痛みを感じてつらくなってしまうこともあるでしょう。そのような状況では、無理をせずミルク育児に切り替えるのもひとつの方法です。
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授乳回数が減ると、母乳の分泌を促すプロラクチンの分泌量が減少して母乳の生産量も減ります。生理再開後でも授乳を続けることで再度生理がとまる場合もあります。

自分の生理や体調の状況把握が重要

産後の生理は産前と比べて変化することも多く、特に変化が多いのが出血量です。産後はホルモンバランスの影響で出血量や周期にばらつきがあり、なかなか安定しないことも。

特に産後は慌ただしく、自分の体のことを後回しにしがちなのに加えて妊娠中から止まっている生理のことは忘れがちかもしれません。生理再開後はできる限り記録をとり、状況を把握しておくことが大切です。
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また、第二子、第三子を早めに欲しいと考えている場合、生理を早めるためにホルモン剤を処方してもらうことも可能です。産前産後の自分の体の変化を知り自分の状況を適切に把握しておくことが適切な対処につながります。

女性にとって子宮は、子どもを授かり産むだけでなく、生理を司る大切な器官。生理周期や経血量などは個人差がありますが、それ以外にも母親自身の体調やメンタル面が大きく関わっています。

そのため、栄養バランスの整った食事や軽い運動を取り入れるなど規則正しい生活を心がけることはもちろん、ストレスが溜まらないように自分を労わって過ごすことが大切です。育児疲れを感じるときは、家族に甘えてしっかり休むことも大切にしましょう。

監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。

患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

2020年11月09日

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