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不妊検査の助成金について。自治体ごとの助成事業や適用範囲、申請の流れ
不妊治療の前段階に行う「不妊検査」には多くの自治体が助成金制度を設けています。検査の経済的な負担を軽くできるのはうれしいですね。今回は不妊検査に適用する助成事業の内容と、自治体ごとの取り組み状況や適用範囲、申請手続きの流れ、医療費控除との併用について解説します。
不妊検査等助成事業とは
不妊検査は、夫婦が適切な不妊治療を受けるための第一歩です。検査を通じて、妊娠を難しくさせている原因や要因を特定し、最適な治療方針を立てることができます。
検査項目は男女で異なり、女性は月経周期に合わせて行う必要があります。一方で男性は時期を選ばず受けられますが、検査結果次第で治療の方向性が大きく変わるため、夫婦そろって早期に受診するのが賢明かもしれません。
主な検査には、エコー検査で卵巣や子宮の状態を確認する検査、子宮鏡検査で子宮内腔を観察する検査、精液検査で男性の生殖能力を評価する検査などがあります。
このように、不妊検査は適切な治療を受ける上で必要不可欠な過程です。しかし検査には多額の費用がかかることがネックとなる部分もあるようです。
そのため自治体によっては不妊症や不育症に関する検査費用の一部を負担する、助成事業を実施しているところがあります。
不妊検査は以前から保険適用でしたが、2022年から不妊治療も保険が適用されたことで、不妊治療を検討する方も増えています。
治療を検討するにあたり、まずはこの助成を利用して検査を受けることで、経済的な負担をさらに軽減しながら安心して治療を検討することができるでしょう。
各自治体の取り組み状況
自治体ごとに不妊検査への助成金事業の内容は異なります。ここでは主な都道府県で行っている不妊検査に対する助成金について詳しく紹介します。
東京都
「不妊検査等助成事業」として、事実婚を含む夫婦が男女ともに検査を受けた場合のみ助成金の対象となります。保険診療を行う病院・診療所で行った検査に対して、上限50000円が助成されます。
対象となる検査は以下の通りです。
夫:精液検査、内分泌検査、画像検査、精子受精能検査、染色体・遺伝子検査、フーナーテストほか
妻:超音波検査、内分泌検査、感染症検査、卵管疎通性検査、子宮鏡検査、フーナーテストほか
夫婦それぞれの検査開始日のいずれか早い日から起算して開始日から1年以内の申請が可能です。また、事実婚の場合は届出の有無などの諸条件がありますので確認が必要です。
埼玉県
「早期不妊検査費助成事業」として、男女そろって受けた不妊検査費用を助成する制度です。申請受け付けは市町村単位で管轄しているため、居住地の役所に申請します。
要件としては、事実婚を含む夫婦が男女そろって不妊検査を受けた場合に限り、夫のみ・妻のみが検査を受けた場合は対象外となります。保険適用・適用外は問いません。
検査開始日から1年以内に受けた検査、1組につき1回までが対象です。
助成金は、対象となる検査開始時の女性の年齢が35歳未満の場合は30000円、それ以外は20000円とされています。また不育症検査に関しても助成金が支給され、要件は異なりますが助成金額は同額です。
福島県
「福島県不妊治療支援事業助成金」として、保険適用にあたらない不妊治療のほか、不妊検査に関する費用の一部を助成する制度を設けています。
検査費に関しては、医師が必要と認めた検査を受けた事実婚を含む夫婦が対象となり、保険適用・適用外を問わず、1組につき1回まで上限30000円が助成されます。
検査開始日から1年以内に受けたものであれば、複数の検査でもまとめて申請できます。また不育症検査に関しても別途で助成制度があります。
ほか実施している都道府県
そのほかに不妊検査への助成を行っている都道府県は以下です。諸条件などは各自治体に確認する必要があります。
・福井県「不妊検査・一般不妊治療費助成事業」
不妊検査にかかる費用の一部を助成。1組1回のみ上限35000円
・山梨県「不妊検査費・不育症検査費助成事業」
医師が必要と認めた不妊検査にかかる費用を助成。1組1回のみ上限20000円
・長野県「妊活検診(不妊検査)費用助成事業」
夫婦がともに受けた不妊検査費用の一部を助成。1組1回のみ上限25000円
・和歌山県「一般不妊治療費助成事業」
治療の一環として行われる検査および不妊原因を調べるための検査費の一部を助成。1年につき上限30000円
・島根県「男性不妊検査費助成制度」
保険適用外の男性不妊検査にかかる費用の一部を助成。居住は妻のみでも可能。上限28000円
・広島県「広島県不妊検査等助成事業」
夫婦がともに受けた不妊検査費用の一部を助成。1組1回のみ上限50000円
・大分県「妊活応援検診助成制度」
不妊に関する検査を受診した場合、その費用の一部を助成。大分市に居住している場合のみ市に申請。1組1回のみ上限30000円
・市区町村単位での制度
ほかにも埼玉県のように都道府県が制度を設計し、各市町村が助成を行っている自治体もあります。主に兵庫県、宮城県などがこれにあたるため、助成金を希望する場合は各自治体に問い合わせましょう。
また東京都中野区や大阪府大阪市など、都道府県の制度とは別に市区町村単位で独自の不妊検査の助成を行っている場合もあるようです。
申請から振込までの流れ
申請から支給までのプロセスは各自治体によって異なりますが、イメージをつかむためにここでは東京都を例にして申請から振込までの流れを見ていきましょう。
申請
検査開始日から1年以内に申請する必要があります。なお不妊検査に1年を要した場合は、1年を経過した日から3カ月以内に申請します。東京都は原則として電子申請とされています。
書類の審査
全ての書類がそろった段階で審査に進みます。申請時に必要書類が揃わない場合は期限に注意しましょう。審査内容によっては電話などで担当職員から問い合わせが入る場合があるようです。
承認決定書の送付
申請が受理された日から約2~3カ月ほどで、申請した住所に「承認決定通知書」が送付されます。なお、紛失などを理由に再交付を希望する場合は再発行の申請が可能ですが、申請後さらに2カ月前後かかるようです。
助成金の振り込み
通知から約1カ月後に指定の口座に振り込まれます。振込完了の連絡や通知は行われないので、入金は各自で確認する必要があります。
不妊検査・治療の助成金と医療費控除の併用
不妊治療にかかる費用は医療費控除の対象となりますが、それにともなう不妊検査も控除の対象となるのは意外と知られていないのではないでしょうか。
医療費控除を受けるには、1年間にかかった医療費の合計が10万円以上、または総所得金額の5%のいずれかの金額を超えていることが条件です。
そして、不妊検査検査や治療に助成金を支給されていても、実際に支払った費用が10万円を超える場合には医療費控除を併用することが可能です。
都道府県から助成金を受け取って不妊検査と治療を行ったケースでも、実際にかかった医療費から助成金の額を引いた費用が10万円を超えた場合は、控除の対象となります。
不妊検査だけでは10万円を超えることはほとんどないかもしれませんが、その後の人工授精や体外受精の費用、卵子凍結保存料や処方箋料、医師の紹介状発行料など治療にまつわる費用をすべて合わせた金額が10万円を超えていれば、確定申告をすることができます。
不妊検査は夫婦ともに受けることが多いこともありますので、生計をともにする家族全員の医療費を合算して、金額をを確認してみましょう。
不妊検査の助成金は忘れずにチェック
不妊検査に関しては、都道府県によってそれぞれの助成金制度があるようです。実施の有無だけでなく、対象範囲や助成金額が異なるため、制度内容を確認してみましょう。
また、助成金を受け取ってもトータルの金額によっては医療費控除の対象になることも忘れずに確認してみましょう。制度をしっかり利用しながら、安心を手にしてかしこく不妊検査・治療をすすめられるとよいですね。