【産婦人科医監修】NST(ノンストレステスト)のグラフの見方や数値の目安は?妊娠中、陣痛がきたとき

【産婦人科医監修】NST(ノンストレステスト)のグラフの見方や数値の目安は?妊娠中、陣痛がきたとき

2022.03.29

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杉山太朗

杉山太朗

田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

妊娠後期にあたる34週頃から行うNST(ノンストレステスト)では、どのようなことがわかるのでしょうか。今回の記事では、NST(ノンストレステスト)検査の方法やグラフの見方、陣痛が始まったときの数値の目安を産婦人科医監修のもとお伝えします。NSTを受けたママたちの体験談も併せてご紹介します。

NST(ノンストレステスト)とは?

NST(ノンストレステスト)とは、お腹の中の赤ちゃんの心拍数や胎動をチェックする検査のことです。NST(ノンストレステスト)は妊娠後期に行われる検査のひとつで、胎児の心拍数と子宮収縮の関係をモニターし、おなかの中の赤ちゃんに十分な酸素が供給されているか、胎児の健康状態などを確認します。

長時間にわたる出産に耐えなければならないのは母親だけではなく、赤ちゃんも同じ。赤ちゃんは子宮口を開いて、せまい産道の中で体を上手に回旋させながら、少しずつ進んで生まれてきます。

そのため、NST(ノンストレステスト)は赤ちゃんが出産に耐えられる力を持っているかを確認するために行います。

NST(ノンストレステスト)では、胎児の心拍数とママの子宮収縮がそれぞれグラフで記されていきます。心拍が正常な拍数や波形を描き、正常であることがわかれば赤ちゃんが健康であると判断でき、出産時にきちんと赤ちゃんの心臓が動き産声をあげられることが予測されます。

NST(ノンストレステスト)において、胎動があったときに心拍数が一定数以上増加する場合は正常な検査結果とされます。一方、胎動があっても心拍数が増加しない、心拍数の変動が少ない場合は異常とされ、追加で検査などが必要となったり、早めに帝王切開に切り替えるなどの対策が講じられることがあります。

検査の方法

NST(ノンストレステスト)では、分娩監視装置というモニターを使って検査結果をグラフに記していきます。NST(ノンストレステスト)で使用される分娩監視装置は、母体と胎児の状態を確認し、分娩をサポートするために重要な機械です。母親のお腹の張りをキャッチするためのセンサー(子宮収縮計)と、胎児の心拍数を聞くためのセンサー(心音プローブ)をベルトでお腹に固定します。検査器具のベルトがずれると正しい結果が出ない場合があるので、できるだけ動かないようにしましょう。

NST(ノンストレステスト)中の妊婦さん
※写真はイメージ(iStock.com/joruba)

下腹部を圧迫しすぎないように、脚を伸ばして、やや上体を起こした仰向けの姿勢で計測します。妊娠後期はおなかも大きくなっているため、長時間同じ姿勢を取ることで気分が悪くなってしまうママもいるかもしれません。体勢が辛い場合は、近くにいる看護師などに相談してみましょう。

計測時間は約20分~40分ほどで、お腹の赤ちゃんが起きていれば最短20分ほどでテストは終了しますが、寝ている場合には赤ちゃんが起きるまで待つ必要があります。

NST(ノンストレステスト)を受ける時期

病院によって異なりますがNST(ノンストレステスト)は、妊娠経過が順調な場合、妊娠後期にあたる34週~36週以降に行われます。病院によっては、1週間ごとの毎回の妊婦健診で行なわれる場合もあるようです。

妊娠高血圧症候群や早産の兆候が見られるとき、胎児の発育不良が疑われる場合には、妊娠34週以前に行うこともあります。


NST(ノンストレステスト)にかかる費用

NST(ノンストレステスト)は妊婦健診で行われることが多いようです。妊婦健診は健康保険の適用外であるため、自費診療となり、2,000~3,000円程度の負担額となるようです。自治体によっては、妊婦健診補助券が使えることもあるようなので病院で確認してみましょう。ただし、切迫早産などの検査・治療のためNSTが必要な場合は保険適用となります。

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NST(ノンストレステスト)のグラフの見方

NST(ノンストレステスト)の結果は、上下2本の波線グラフで記録用紙に印字されます。

NST(ノンストレステスト)モニター
※写真はイメージ(iStock.com/Kyryl Gorlov)

胎児の心拍

グラフの上の線は胎児の心拍数を示し、胎児が起きている状態ではよく動き、心拍数の上昇にともなってグラフに山ができます。

正常値は110〜160bpm(beats per minute:1分間の拍動数)で、妊娠後期の胎児では6~25bpmの変動があることが正常です。このグラフのゆらぎを「基線細変動(きせんさいへんどう)」といいます。基線細変動の動きを見ることで、赤ちゃんに十分な酸素が供給されているか、心拍数が異常な動きをしていないかを知ることができます。

その他にグラフで確認されるのは、「一過性頻脈(いっかせいひんみゃく)」です。胎児が体を動かすと一時的に心拍数が多くなることを「一過性頻脈(いっかせいひんみゃく)」といいます。心拍数15bpm以上で15秒以上の一過性頻脈が2回以上認められれば正常です。一過性頻脈は、胎児が動くときやママの体が動きや音、光などの刺激に反応して起こることがあります。一過性頻脈が起こることは、胎児の健康を示す反応と考えられています。

もうひとつ重要な波形のひとつに「一過性徐脈」があります。「一過性徐脈」は一時的に胎児の心拍数が減少することをいいます。一過性徐脈について、問題ないとされるものと追加の検査などが必要となる場合があります。

基線細変動が減少している場合、心拍数と一過性徐脈の関係に応じて「波形レベル」が分類されます。波形レベルがレベル1なら正常、レベル5なら異常で、緊急帝王切開をするなど分娩への対応を判断します。


母体の子宮収縮

グラフの下の線は母体の子宮収縮を示します。安定期にはあまり子宮収縮が起こらなかった場合でも、妊娠後期になるとお腹が張るようになり、子宮収縮の頻度が高まります。強い収縮が定期的に見られると陣痛のサインとなります。

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陣痛の強さとNST(ノンストレステスト)の数値の目安

子宮収縮を示す波線グラフは、お腹の張りをキャッチすると山ができ、張りがないときは直線で表示されます。

個人差もありますが、一般的にお腹が張っていない状態の数値は20~30を示し、少しお腹が張ると40~50ほど。とても強い張りの場合は、90を超えることもあります。

陣痛が始まり子宮口が開いてくると100を超えることもあります。

 
 

陣痛がきてしばらくはモニターを見る余裕があったのですが、80~100を超えたあたりからモニターを見る余裕がなくなりました。

 
 

陣痛がきて100を超えたあたりまでは子宮収縮計の数値を見ていましたが、数値がいくつになったら生まれるのだろうと不安でした。人にもよるのでしょうが最大数値がどれくらいになるのか気になります。

 
 

陣痛がきてから子宮収縮計の数値が90近くなり、かなり痛みを感じるように。「どれくらいが生まれる目安ですか?」と看護師さんに聞いたら「100までいったらもう少しです」と言われ、もっと痛くなるのかと思うと同時に、もう少しという言葉に励まされました。

無痛分娩の場合の数値は

NST(ノンストレステスト)の数値は無痛分娩の場合ではどうなるのでしょうか。

無痛分娩は、脊髄の近くに麻酔薬を投与して神経から感じる痛みを軽くします。そのため子宮収縮の数値は大きくても陣痛を感じることはありません。無痛分娩は、出産の痛みを軽減することで、母体のストレスや疲労を減少させることができるといわれています。

 
 

無痛分娩だったので、NSTをつけて子宮収縮計の数値が100になったときも全く痛くありませんでした。「自然分娩だったら一番陣痛の痛みを感じるタイミングだったんだ……!」と驚いたことを覚えています。

NST(ノンストレステスト)の体験談

最後に、妊娠中にNST(ノンストレステスト)を行ったママたちに体験談を聞きました。

エコー写真を見る妊婦さん
※写真はイメージ(iStock.com/NataliaDeriabina)

NSTの数値は安定していたと思います。逆子や妊娠高血圧症でしたが、赤ちゃんの健康状態に問題ないと看護師さんから教えてもらい安心しました。

細かい数値などは覚えていませんが、検査中のことは結構覚えています。個室でひとり、20~30分くらいの間横になって検査をしたのですが、「ドクンドクン」と心音が大きく響いていて、「子どもが生きてるんだな〜」と感動した記憶があります。

子どもは3人とも正常値と言われました。

NSTは妊娠後期に行う検査と聞いていたので、もうすぐ赤ちゃんに会えるんだなと楽しみでした。検査中は特にやることもなく、眠っていました。

赤ちゃんに会えるまでもう少し

今回の記事では、産婦人科医監修のもとNST(ノンストレステスト)検査について、検査の方法やグラフの見方、陣痛が始まったときの数値の目安、NSTを受けたママたちの体験談も併せてご紹介しました。

お腹の赤ちゃんが健康か確認して、無事に生まれる力を持っているかを予測するNST(ノンストレステスト)は、とても大切な検査です。赤ちゃんの心音を聞きながら、リラックスして検査を受けましょう。

そして、陣痛がきていざ出産となったら数値や痛みのレベルがどれくらいになるのか気になりますよね。陣痛がきたら、痛みのレベルはピークに向かいながらNST(ノンストレステスト)の子宮収縮計の数値は100を超えることもありますが、その頃にはお腹の赤ちゃんに会えるまでもう少しです。

監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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