子どもの声でまちを創る!日本一の公教育を目指す北海道安平町

子どもの声でまちを創る!日本一の公教育を目指す北海道安平町

日本一の公教育のまちを目指す北海道安平町。安平町では、子育て教育をまちの政策の柱として掲げていて、日本で初めて「子どもにやさしいまちづくり実践自治体」として日本ユニセフ協会から承認されました。まち全体で子どもを育てる安平町では、具体的にどのようなことが行われているのでしょうか?今回の記事では、及川秀一郎町長にインタビューでお伺いした内容をご紹介します。

子育て教育を政策の大きな柱として掲げる安平町

安平町は、2018年から2020年にかけて日本ユニセフ協会から「日本型子どもにやさしいまちモデル実践自治体」に選ばれるなど、「子育て・教育」を第一優先政策としたまちづくりに取り組んでいます。安平町の子育て・教育に関する事業は多岐にわたりますが、代表するものは以下の3つの事業です。


①はやきた子ども園

はやきた子ども園は、全国に先駆けて「学校法人との公私連携・幼保連携型認定こども園」となったこども園です。元々は、町立の保育園こども園でしたが、教育の質の向上を目指して民営化されました。保育内容が一新されてからは、町外からも入園を希望する園児が増え、この園に通わせるために移住してくる家族がいるほどの人気です。園から徒歩5分のところには園の所有する広大な森があり、「遊びを通じて、自分を育む」ことができるこども園となっています。


②あびら教育プラン

あびら教育プランは安平町独自の社会教育の取り組みで、「学びから挑戦へ」を掲げ、3つの事業で構成されています。

一つ目は、「遊びを通じて、子どもの”好き”を増やすこと」を目的とした「遊育」です。二つ目は「視野を広げる」ことを目的とした教育を行うのが、教えない放課後教室「あびらぼ」です。三つ目は、子どものやりたいを形にするプロジェクト学習「挑戦(ワクワク研究所・ABIRA Talks)」です。


③安平町立義務教育学校「早来学園」

「早来学園」は、2023年4月に開校した義務教育学校です。文部科学省が進める令和時代の新しい学校施設の建設には、さまざまな先駆的な企業や団体が携わっています。

全国からの移住の問い合わせが多い安平町。移住したことにより、子どもが「季節ごとの自然遊びができる」「核家族ではできないことができる」「安平町ならではの学校教育が受けられる」というメリットを享受できるようです。

安平町について詳しく知りたい方はこちら
あびら教育、ココがすごい

日本一の公教育を目指す!町長が語る安平町のビジョンとは

「復興のシンボルとしては早来学園(はやきたがくえん)です」と語るのは安平町町長の及川秀一郎氏です。

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町長 及川秀一郎氏 プロフィール

  • 1965年生まれ。北海道安平町(旧追分町)出身。
  • 高校卒業後昭和58年10月に旧追分町職員となる。
  • 31歳で企画財政課に配属となり、数多くの計画策定に携わる。
  • 役場職員として勤務する傍らで通信で日本大学に通い、法律について学ぶ。
  • 平成20年総務課異動後、「安平町まちづくり基本条例」の策定に携わり、平成24年12月に教育次長拝命以降、町立学校・子ども園の全てにいち早くコミュニティ・スクールを導入し、他の自治体から注目を集めるまちづくりに取り組む。
  • 教育委員会事務局次長を勤めた後、2018年の安平町町長選挙に出馬し当選。
  • 安平町の2代目町長として就任。
  • 趣味はランニングで、道内各地のフルマラソン大会に出場。
  • ノーザンホースパークマラソン、北海道マラソンも安平町長として出場し完走。

町長:

「早来学園」の設立は、2018年9月に起こった北海道胆振東部地震がきっかけになっています。

2018年9月に発生した北海道胆振東部地震により、早来中学校校舎が大きな被害を受けたことから、当時老朽化が進んでいた早来小学校と一体化した新校舎を設立することにより、未来へつながる復興に向けて魅力的な教育環境を目指すことになりました。

「早来学園」は、ただの学校ではなく、学校と地域が融合したような建物になっています。例えば、学校の図書室は、学校の児童・生徒が利用するほか、地域の方の図書室利用や打合せ、ワークスペース、イベントなどで多くの利用があります。

こうした学校施設の地域開放を行う「早来学園」では、「まちが学校、学校がまち」という考えが学校の中で表現できています。心配されるセキュリティ面や手続き面についても、ICTを活用することで実現をしています。

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町長:

「早来学園」は、町内の3つの小学校と1つの中学校を統廃合し、2023年4月に開校しました。大きな特徴としては以下の2つがあります。


①縦割り活動の機会

「早来学園」では、学年にとらわれず、縦割り活動の機会を多く設けています。毎日のお掃除の時間はもちろん、スポーツフェスティバルも1年生から9年生までの縦割りのチームで競い合い、学年を超えて応援することでとても盛り上がりました。


②学校と地域の融合

学校と地域の融合が実現できるよう、前述の図書室は、毎日小さな子どもから高齢者まで多くの人が利用しています。また、学校の大小あるアリーナでは、さまざまな団体がスポーツの練習に使ったり、映画上映会のようなイベントを行ったりしています。そのほかにもキッチンでは地域食堂やおさいほう教室などが行われています。学校では勉強をするだけでなく、社会、まちとつながる場所としてさまざまな学びの機会を提供しています。

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安平町立早来学園

子ども自身の声が、子どもの住み良いまちをつくる

安平町は「子どもたちの声」を実際に取り入れたまちづくりをしているようです。具体的に、どのように子どもたちの声を活かしているのか町長に伺いました。


町長:

「早来学園」の設立にあたって、当事者となる子どもたちに対し、学校の名称や制服デザインのアンケートのほか、さまざまなアイデアをいただいたり、学校を考える会などの会議にも参加してもらいました。また、学校の授業を通じて、子どもたちからまちづくりに対して企画提案もしてもらっています。「まち全体が大きな学校」となるよう、子どもたちとまち全体がつながるような取り組みを活発に行っています。

このような取り組みを特に体現しているのが、安平町の独自教育手法「あびら教育プラン」の中の「ワクワク研究所」です。

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ワクワク研究所

町長:

「ワクワク研究所」は学校外での主体的な学びや探究を行う取り組みで、子ども自身のやりたいことや興味関心などワクワクするプロジェクトをつくり、実践することまでをサポートしています。プロジェクトの実行にあたっては、地元の民間企業の力も借りてやっているので、この辺りも日本一の公教育をさらに彩ってくれているのではないかと感じています。

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「ワクワク研究所」~ 廃校が決まった校舎を使ったイベント「逃”歩”中」

町長:

さらに、子どもたちの声をまちづくりに活かした例として、学校の総合的な学習の時間でまちづくりをテーマに学習を深めた生徒の提案から生まれたゆるきゃら「あびたまなっちー」と「ナチュラル・ビズ・スタイル」です。

「あびたまなっちー」は、子どもたちが主体となってまちの特産品を融合させたキャラクターを作ってくれました。こちらはすぐにホームページなどで採用させてもらいました。

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2023年度早来はやきた学園9年生が考えたキャラクター「あびたまなっちー」

町長:

生徒たちからは役場職員の服装や庁舎の環境について、職員の堅苦しい印象を改善し、子どもが行きやすい庁舎・話しやすい場にしてほしいと提案がありました。これまでも、安平町役場では、地球温暖化対策の一環として、夏季の期間において「クールビズ」、冬季においては「ウォームビズ」に取り組んできましたが、この意見をきっかけに通年で「ナチュラル・ビズ・スタイル」を取り入れました。また、一部の部局ではBGMを流すなどリラックスして話せる環境を創出しています。

その他にも、安平町では2023年4月に北海道で初めてオーガニックビレッジ宣言を行いました。オーガニックビレッジ宣言とは、農林水産省が推進する「みどりの食料システム戦略」に基づいて、有機農業の生産から消費まで一貫して取り組む市町村が行うものです。安平町では、以前から有機農業への取り組みを進めていたこともあり、今回オーガニックビレッジ宣言をするにいたりました。

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移住した子育て世代の声

ここからは、実際に安平町へ移住した子育て世代の方(A・Mさん)にお話を伺いました。


①安平町に移住したきっかけ(移住を検討したきっかけ)

安平町に移住するまでは、転勤で全国を転々とする生活をしていました。仕事にはとても満足していましたが、子どものためにどこか場所を定めて、落ち着いた生活をしたいと思ったことが移住を検討したきっかけです。夫婦で話し合った結果、妻の実家のある安平町に移住することになりました。


②子育て面で移住してよかったこと

週末になる度に町内で多様なイベントが開催されていて、学校だけだと学べない経験ができることが魅力だと思います。出かけるたびに顔見知りの方が増えて、移住者でも繋がりができやすいと感じます。

学童の活動も魅力的です。息子も楽しんでいるようで、夏休みも毎日、学童に行く!と張り切っています。また1歳の娘をはやきた子ども園に預けているんですが、安平町在住の子どもは必ず受け入れてくれるので年度の途中からでもすぐに入園できました。子どもたちを安心して預けられる先があるというのはとても助かります。


③早来学園での子どもの様子

自然豊かな環境で学べていることが一番良かったと感じています。子ども園からの顔馴染みの友達と楽しく授業を受けているようです。運動会では縦割り班で1〜9年生までの交流があり、お兄さんお姉さんとの活動に刺激を受けていました。

4月下旬に参観日に行ったのですが、1人1台アイパッドを貸し出されていて、それで写真を撮って学園のいい所を紹介するプレゼンテーションを作っていました。みんなイキイキとおすすめの写真を見せてくれて、学びの選択肢や子どもたちの可能性が増えていることを実感しました。また、1年生のクラスには担任の先生の他にも、はやきた子ども園の先生がサポートとして授業に来ていました。顔馴染みの先生がいてくれるのは子どもたちも安心だと思います。


④移住してからのライフスタイルの変化

通勤にかかっていた時間が減り、家族と過ごす時間が多くなったことがもっとも大きな変化です。職場が町内なので朝みんなを見送った後に家事をしています。一方で買い物をする機会がめっきり減りました。食材や生活用品は週末にまとめて千歳や苫小牧に買いに行くようにしています。これは家族のドライブも兼ねたいい気分転換になっていますね。また自治会の活動にも積極的に参加するようにしています。これは子どもたちも地域の大人と触れ合える貴重な場となっています。移住してから近所の方にとてもお世話になっているので、私も出来る範囲で地域に貢献できたらと思っています。

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安平町で叶える理想の子育て

最後に、今後の安平町の政策と実現したい子育て環境について教えていただきました。

町長:

現在、4つある公民館の利活用の検討をしています。早来公民館(町民センター)については現在改修を行っており、災害時などの緊急時には個室の避難所として整備を行っています。他の公民館についても、スポーツ的な公民館、文化的な公民館と色分けしようと考えています。実現したら、学校教育と社会教育の融合という関係性が、公民館だけでも表現できるのではないかと思っています。

学校教育と社会教育を融合させることで、子どもたちには素敵な大人の背中を見せて、その大人と一緒にさまざまな体験ができるようにしたいと考えています。こういったことが最終的にはまちづくりや人づくりにつながっていくと思っています。

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今後も安平町の取り組みに注目!

今回の記事では、「教育のまち」として知られる北海道安平町の及川秀一郎町長にインタビューをして、日本一の公教育を目指す取り組みや今後の計画などについて教えていただきました。今後も、学校教育と社会教育がどのように融合していくのか、取り組みが注目されますね。

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