受信料のためなら自社の記事を「ウソ」と切り捨てる…新聞もテレビもスルーした「NHK会長の失言」の深すぎる闇

受信料のためなら自社の記事を「ウソ」と切り捨てる…新聞もテレビもスルーした「NHK会長の失言」の深すぎる闇

NHKの稲葉延雄会長の発言が物議を醸している。元関西テレビ記者で、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「問題になっているのは、NHKの過去のネット記事は『試行的にやっていたもので、正しい発信ではなかった』という旨の国会答弁だ。不正確な情報を流し続けてきたなら、NHKに受信料を払う価値はあるのだろうか」という――。

「本当の情報か、偽の情報か、よくわからない」

その発言に耳を疑った。11月27日の衆議院総務委員会での質疑で、立憲民主党の道下大樹議員からNHKサイトの更新停止や、コンテンツ削除について問われ、NHKの稲葉延雄会長は、次のように言い放ったのである。

なかなかこれは表現が難しいんですけれども、「政治マガジン」これは、言ってみれば試行的に、NHKのネット必須業務が認められる前に、試行的に許された、試みにやってる番組(表現ママ)なんです。たしかに一部の視聴者の方には、それなりに評価をいただいている面があります。それは、なんで評価をいただいているか、よく吟味してみますと、ちょうどネットの社会で、ほんとの情報か、偽の情報か、よくわからないんだけどおもしろい。というのがもてはやされるような、そういう傾向がなかったか、というふうに思います

重要なのは、この後との対比である。

(2025年)10月1日からやっているNHKの、ネット社会に対する配信業務ですけれども、これは明らかに、NHKの基準に沿った正しい、あくまでも正しい情報を提供する。豊かな番組に沿った、あくまでもNHKの基準に沿った番組をお出ししたい

いまは「正しい情報」だが、かつての「政治マガジン」は「ほんとの情報か、偽の情報か、よくわからないんだけどおもしろい」。そう答弁しているのである。NHKのトップが自分の組織で出していた情報を疑うどころか、真偽不明とまで国会答弁で言い切ったのである。真意を疑うほかない。

元NHK記者からの問題提起

ニュースサイトSlowNewsでは熊田安伸氏が、このやりとりをもとに〈NHK稲葉会長への公開質問状「過去のネット配信では正しい情報を出していなかった」のならば即座に国民に謝罪し、不正確な内容を示して修正すべきではないのか…現場から怒りの声が〉(2025年12月1日11時30分配信)という記事を書いている。そこでは「『政治マガジン』に出ていた正しくない情報というのは、具体的にどの記事のどういう内容のことか」との問いから、「会長としての国会での発言なのだから、これはNHKの総意として受け止めてよいか」まで8項目が並ぶ。

熊田氏は元NHK記者であり、稲葉会長の挙げた「政治マガジン」を担当してきた。怒りというか当惑は、察するにあまりある。

もし会長の発言が「正しい」のなら、熊田氏が述べる通り「長期間にわたって不正確な情報を流し続けてきたことになり、それこそ大スキャンダル」である。もちろん、熊田氏をはじめ、現場の職員たちは、これまでも、いまも、そして、これからも「正しい情報を提供」しているに違いない。

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