契約社員から正社員に引き上げてやったのは私…「恩着せマウント上司」から身を守る唯一の方法

契約社員から正社員に引き上げてやったのは私…「恩着せマウント上司」から身を守る唯一の方法

転職が難しい年齢という弱みにつけこんでくる

昇進や採用を“恩”として強調し続け、相手の行動をコントロールする「恩着せマウント」はなぜ起きるのだろうか。精神科医の片田珠美氏は「人は程度の差こそあれ、他人を支配することに満足感と快感を覚える性を持っている」という――。 ※本稿は、片田珠美『マウントを取らずにはいられない人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

強い支配欲求の持ち主

物流会社で事務仕事に従事する40代の女性は、上司である50代の女性の厳しい態度と叱責に疲れ果てている。

40代の女性は離婚後一人息子を育てながら、この会社に契約社員として勤務するようになったのだが、働きぶりを50代の女性上司に認められ、正社員に引き上げてもらった。それはいいとしても、女性上司は何かにつけて「あんたを引き上げてあげたのは私」と恩着せがましく言い、40代の女性に厄介な仕事を押しつける。

それだけではない。他の社員の面前でことさら厳しく叱責し、「あんたを通してこの部署のみんなに言っているんだから、厳しく叱らないと意味がない」と正当化するという。


40代の女性は、契約社員から正社員に引き上げてもらったことについては心から感謝している。それによって身分が安定したし、給料も増えたからだ。とはいえ、そのことをたびたび引き合いに出され、厄介な仕事を押しつけられたり厳しい叱責を受けたりしてストレスが溜まり、不眠と頭痛に悩むようになったため、私の外来を受診した。

本当は辞めたいのだが、シングルマザーなので自分が稼がないと息子を育てられないという事情もあって、服薬しながら仕事を続けていた。しばらくは何とか続けられていたのだが、最近になって病状が悪化した。

例の女性上司が「あんたを引き上げてチームリーダーにしたい」と言い出したのだ。40代の女性の本音としては、引き受けたくないそうだ。なぜかといえば、給料は多少増えるかもしれないが、それに見合わないほど責任が格段に増えるからだ。

なぜマウントを取らずにはいられないのか

そのうえ、女性上司が「チームリーダーにしてあげたのだから」と恩に着せ、厄介な仕事をこれまで以上に押しつけ、何か問題が起きると責任をなすりつける姿が目に浮かぶという。だからといって、昇進の話を断ったら、「恩知らず」「恩を仇で返すのか」などと罵倒されそうで、睡眠導入剤を服用しても眠れない日が増えた。

女性上司が40代の女性を正社員に引き上げたことを恩に着せるのは、そうすれば相手が逆らえなくなると踏んでいるからだろう。相手が逆らわずに服従すれば、“道具”として自分の思い通りに使えるようになるので、しめたものだ。

厄介な仕事や責任を押しつけても、スケープゴートにして厳しい言葉で叱りつけても、問題にされることも批判されることもない。自分にとって都合のいい状況を維持できるわけで、やりたい放題といっても過言ではない。

つまり、何か得することがあるからこそ、恩着せマウントによって自身の優位性を誇示し、相手を支配しようとするのである。

もっとも、はたから見ると大して得することなどなさそうなのに、やたらと恩着せがましい人もいる。そういう人は、支配欲求を満たすことによって得られる満足感と快感を忘れられず、恩に着せる可能性が高い。

そもそも、程度の差はあれ、人間は他人を支配することに満足感と快感を覚える。相手が自分の言うことを聞いてくれたり、自分の思い通りに動いてくれたりすると、誰でもうれしくて心地よい気分に浸るはずだ。この傾向が恩着せマウントを取る人には顕著に認められる。支配欲求が人一倍強いといえよう。

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2025.07.15

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