「これはオガオソースではない」くら寿司大阪・関西万博店で人気の「70種の世界料理」開発者が心折れかけた瞬間
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くら寿司大阪・関西万博店は「世界の料理70種類」を各300~320円で提供し、予約争奪戦になるほどの人気に。この特別メニューをわずか3カ月で開発した同社商品開発部の中村重男さんは「70のうち25カ国の大使館に協力を仰ぎ、試食していただいたが、みなさん自国の料理に誇りを持っていらして、ダメ出しをくらう日々だった」という――。〈前編〉から続く。
価格は「320円しばり」だが、ロブスター料理を提案され…
大阪・関西万博店の特別メニュー、世界の料理を改めて3カ月で70品作ることになり、くら寿司商品開発部の中村重男さんが、キューバ大使館にメニューの相談に行ったときのことだ。先方から提案を受けたのはロブスター料理。いくら国を代表する食材でも、利益度外視で高級食材を使うわけにはいかなかった。結局、キューバは「ロパビエハ」という牛肉の煮込み料理を選んだ。
「ロパビエハにコストの問題はありませんでした。ただ、調理の難易度が高いんです。ロパビエハは直訳すると『古い服』で、肉がボロボロにほぐれないとダメ。試食で一皿つくるならともかく、大量につくるときにその食感を均質に再現するにはどうすればいいのか。そこでまた社内でひと悶着あって(笑)。メニュー開発はまさに試行錯誤の繰り返しでした」(中村氏)
価格以前に食材を調達できるかどうかで頭を悩ませた料理もある。リトアニアの「シャルティバルシチャイ」だ。すりおろしたビーツにケフィアという発酵乳飲料を入れてつくるピンク色の冷製スープだが、日本ではケフィア菌が販売されているものの、完成品の乳飲料を手に入れることは難しかった。ヨーグルトなどの他に乳製品で代替できないか。検討を始めた中村氏の頭に浮かんだのは、普段から店で使っているある調味料だった。
「ケフィアはちょっと癖が強い。もう少しうま味と甘み、酸味のバランスが取れたものはないかと思ったら、うちで使っているすし酢がぴったりではないかと気づきました。実際入れてみたら、おいしいシャルティバルシチャイができた。大使館の方にも、さわやかな感じがしておいしいと褒めてもらえました」(中村氏)