だから少子化対策で雑に7兆バラまいてもダメ…日本の女性が「子供は欲しくない」と答えるお金より深刻な理由

だから少子化対策で雑に7兆バラまいてもダメ…日本の女性が「子供は欲しくない」と答えるお金より深刻な理由

同じ少子化現象に悩む東アジアに共通した課題

【関連記事】「日本で女の子を産んだらその子は性被害に遭う…」子供を全然作る気になれない20代女性の本音 若い女性が「子どもが欲しくない」理由のトップは「お金」ではない。最も厄介なのは「それ以外」の理由だ。ジャーナリストの池田和加さんは「安全で豊かで育休や医療制度も整っているのに、出生数が低下する一方の日本の原因は人を生きづらくさせる“因習”にある」という――。

「安全で豊かな日本でなぜ子供を産まないの?」外国人の直球質問

「日本って、安全だし豊かだし、育休や医療制度も整っているのに、なんで子供を産まないの?」

先日、アメリカ人の友人にこう問われて、「それは……」と答えようとして、うまく説明できなかった。「なぜ?」。自問自答したものの、改めて少子化問題の複雑さを実感することになった。客観的に見れば、日本は恵まれた環境にある。治安は良く、経済は低迷しているとはいえ安定し、社会保障制度も比較的充実している。それなのに、出生率は1.15という世界最低水準を記録し続けている。

この素朴な疑問をきっかけに、国内外の調査や研究を改めて探った。そこで見えてきたのは、単純な経済的要因では説明できない、もっと根深い文化的・心理的な構造だった。

データが示す日本の若者の「結婚・出産離れ」

まず、数字で現実を確認してみよう。子ども家庭庁が2023年に実施した国際比較調査(13~29歳までの5カ国の子ども・若者1000人対象)によると、「結婚したほうがよい」(「結婚すべきだ」と「結婚したほうがよい」の合計)と答えた日本人の割合は45%だった。これは調査対象国の中で最も低く、ドイツ(58%)、フランス(55%)、スウェーデン(51%)、アメリカ(47%)を下回っている。

※こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」

さらに注目すべきは、「子どもがほしくない」と答えた割合も、日本人が5カ国で最も高かったことだ。日本の少子化の直接的要因が20代の未婚化である以上、この結果は決して意外ではない。しかし、冒頭の友人が指摘したように、日本はアメリカよりも安全で、健康保険や育休制度も整っている。それなのに、なぜ結婚や子どもへの意欲が低いのか。

「お金以外」の理由が過半数を占める現実

この疑問を解く鍵は、BIGLOBEが2023年に実施したZ世代調査(18~25歳の男女209人対象)にある。子どもが欲しくない理由として「お金」だけを挙げたのは17%に過ぎず、「お金以外」が42%、「お金とお金以外の両方」が40%を占めた。

注目すべきは「お金以外」の具体的な理由だ。「育てる自信がないから」(52%)、「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」(46%)、「自由がなくなるから」(36%)という結果が示すのは、経済問題を超えた心理的な障壁の存在である。

※こども家庭庁「少子化の背景―日本の状況―」

筆者も20代後半から30代前半の女性20人に直接話を聞いた。サンプル数は限られているが、興味深い共通点が浮かび上がった。「完璧に育てる自信がない」「周りの『良い母親』を見ていると、自分にはとても無理だと思う」「子供の教育費を考えると、一人でも大変そう」と出産に二の足を踏んでいる。

これらの声に共通するのは、経済的な要素以外では、「子供を持つこと」への異常なまでのプレッシャーと完璧主義だった。これは単なる個人的な不安ではなく、「完璧な子育てをして、完璧な子どもを持たなければいけない」という社会的重圧が、結婚・出産の全ての段階で若者を萎縮させている証拠かもしれない。

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https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-column-250609-82158347

2025.06.29

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