備蓄米放出でもコメ騒動が収まらない…「日本のコメ」が抱える需給バランスでも不作でもない根本問題

備蓄米放出でもコメ騒動が収まらない…「日本のコメ」が抱える需給バランスでも不作でもない根本問題

「令和の米騒動」の本当の原因はなにか。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「日本の農政に求められるのは『同じ面積でより高く、より効率よく、より確実に生産する』ための構造的イノベーションである」という――。

コメ農政の「構造疲労」が一気に露呈

2025年、日本のコメ市場は“異常”としか言いようのない状態にある。価格は一時、平年の2倍に達し、消費者は「高すぎて買えない」、生産者は「これでも儲からない」と悲鳴を上げた。足元ではやや価格が下落し始めてはいるものの、流通現場ではパニック買いと品薄が繰り返され、配送遅延や在庫偏在といった流通の混乱も表面化している。第5次問屋まで存在するという流通の異常構造まで一般にも明らかになった。備蓄米の放出によって一時的な供給は補われたが、その中長期的な効果は限定的で、「備蓄米が底をついた後には輸入が必要になるのでは」との指摘も現場では広がりつつある。

この騒動の原因について、「需給バランスの偶発的なゆがみ」や「不作・天候要因」と論じられることが多いが、それはあまりに短絡的だ。本当の原因は、日本における農業制度、特にコメ農政の構造疲労である。そして、その根本には「長期的戦略の不在」がある。

なぜ小手先の“対処”が続くのか

今回の米価高騰を受けて政府は備蓄米の随意契約による放出を決定した。確かにこれは短期的な対応としては合理的かもしれない。しかし、その中長期的効果が限定的という事実が突きつけているのは、「そもそも制度設計が市場変動に耐えうる構造になっていない」という現実である。

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ディスカウント店「MEGAドン・キホーテ大森山王店」で、政府が随意契約で放出した備蓄米を購入するための整理券配布を案内する掲示物=2025年6月1日、東京都大田区

農政に限らず、日本の制度運営にしばしば見られるのが、「制度そのものを問い直すのではなく、既存制度に小手先の処置を積み重ねて“場当たり的に延命させる”」というパターンだ。

米問題もその典型である。

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2025.06.11

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