これほど「子供のお小遣い」に適した金額はない…税理士が「1日100円の皿洗いから始めて」と説く超合理的な理由
「借入、投資、貯蓄」を網羅できる
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子供の「生きる力」を育てるにはどうすればいいのか。税理士の山下明宏さんは「生きる上で、お金について知ることは重要だ。“1日100円のお手伝い”を通して、金融の基礎『貯蓄・投資・借入』の意味を、実践的に学ばせることができる」という――。 ※本稿は、山下明宏『稼ぐ力は会計で決まる』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
「借金も実力のうち」という勘違い
いまの日本の中小企業にとって一番の問題は、前回記事でもお話ししたとおり、借入金が多すぎることです。そのため、自己資本比率の低い会社が多い。債務超過に陥っている会社は、まさに「酸化」が激しい状態といえるでしょう。
さらに問題なのは、借入金による「酸化」が常態となってしまったことで、多くの経営者がそこに危機感を抱かなくなっていることです。「酸化」は「還元」に向けたプロセスにすぎないのですから、借入金の多い状態に慣れてはいけません。
昔から、「借金も実力のうち」などと嘯く人はよくいました。金融機関が融資するのは相手を信用している証拠だ、たくさん借金できるのはそれに見合った力があるからだ、というわけです。
融資にそういう面があることは否定しません。たしかに、返済能力のない会社に融資する金融機関はないでしょう。
しかし、いま中小企業が抱えている借入金の多くは、決して「実力」に見合ったものとはいえません。さまざまな経済危機を受けて政府が打ち出した対策によるものです。リーマン・ショック、東日本大震災、そしてコロナ禍と、中小企業の経営を危うくする事態が続いたので、救済のための融資が次々と実施されたことは、前回記事でもお話ししました。
「できる」と「する」とでは大違い
それを「これも実力のうち」などと考えるのは、勘違いもいいところです。そのような借金は、会社の実力とは何の関係もありません。
むしろ、そのような融資が結果的に中小企業の実力を削いでしまっている面もあるのではないでしょうか。国民生活を守るために必要な政策ではあったものの、中小企業側がその保護的な政策に寄りかかりすぎると、自立するための力がつきにくくなるように思えてなりません。
そもそも、たとえ「借金も実力のうち」だとしても、お金を人から借りずに済むなら、そのほうがいいに決まっています。
銀行の担当者が「お願いだから借りてください」と頼んでくるようなら、その会社には実力や信用があるのでしょうから、喜んでいいでしょう。でもその時点で自慢できることなのですから、いわれたとおりに借入をする必要はありません。「借金も実力のうち」とは、あくまでも「借金できる能力」が評価されているのであって、借金そのものが実力というわけではないのです。