「日産復活」にはこれしかない…トヨタでもホンダでもない、「6708億円の赤字解消」のカギを握る自動車メーカー
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「2万人リストラと工場閉鎖」を完遂できるのか
トランプ大統領が発動した米国輸入車への追加関税(25%)をめぐり、日本の自動車メーカーは岐路に立たされている。淑徳大学経営学部の雨宮寛二教授は「日産は2025年3月期の決算で最終損益が6708億円の赤字に陥った。2万人のリストラを計画しているが、十分とはいえない」という――。(後編/全2回)
ホンダはなぜトヨタと逆の道を選んだのか
本田技研工業(ホンダ)は、タリフを理由に現地生産を増やしたり現地の工場を建てたりしないとするトヨタとは対象的なスタンスをとっています。
2025年3月期で見ると、ホンダは世界全体の約4割を占める142万台をアメリカで販売し、このうち7割にあたる約100万台を米国で生産しており、米国に輸入する約42万台のうちカナダからの輸入が約30万台と最も多くなっています。
そのため、アメリカで3割増産すれば、アメリカ販売分の約9割を現地で生産できるようになることから、今後2~3年の間にサプライチェーンの再構築を図ることでタリフの影響分を抑える意向を示しています。
生産移管の対象となるのはカナダの工場で手がける多目的スポーツ車「CR-V」とセダン「シビック」で、両車種はすでにアメリカの工場で生産していることから、新たに生産ラインを設ける必要はなく、勤務形態を従来の2交代制から3交代制に代えたり、土日も工場を稼働させたりするなど、雇用を増やすことで対応が可能となります。
メキシコ工場の小型SUVはどうなるか
生産移管の検討は、メキシコで生産する小型SUV「HR-V」にも及んでいます。ただ、カナダとは状況が異なり、同車種はアメリカで生産していないため、生産ラインを設けるなど新規投資が必要となりコスト精査を十分に行うことが求められます。他方、日本からの輸出に関してはアメリカに主力車を輸出していないことから当面は継続する意向です。
ホンダは、日本の自動車メーカーの中ではアメリカでの生産割合が最も高いことから、タリフの影響は競合より低いうえ、生産移管をするにしても、すでにアメリカで生産ラインを持っている車種が多いことから、移管によるコスト増を最小限に抑えることが可能となります。
日産自動車(日産)の状況は、トヨタやホンダとは大きく異なります。2025年3月期の決算で最終損益が6708億円の赤字に陥ったことから、“多重危機”への対応以前に、業績回復が最優先課題として経営に立ちはだかります。
2025年5月に発表された再建計画「Re-Nissan」では、2028年3月までに国内外にある7つの完成車工場を閉鎖することや、世界従業員数の15%に相当する2万人の削減などが盛り込まれ、構造改革を全社的に推進する意向が示されています。