こんな人には孤独な人生が待ち受ける…タイパ、コスパに腐心する「効率人間」が行きつく落とし穴

こんな人には孤独な人生が待ち受ける…タイパ、コスパに腐心する「効率人間」が行きつく落とし穴

あとになって芽が出るかもしれない種まきを最初から放棄している

効率化を重視しすぎるあまり、コスパ、タイパに振り回されていないだろうか。日本デジタルデトックス・ジャパン理事の森下彰大氏さんは「コスパやタイパに執着しすぎると短期的な目線になりがちだ。効率という尺度で測ろうとする呪縛から逃れることができれば、生きることはもっと豊かになる」という――。 ※本稿は、森下彰大『戦略的暇 人生を変える「新しい休み方」』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

技術がものを資源化する

ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーは、技術の本質は「潜むものを明らかにする(開匿)」にあると考えました。

たとえば、身の回りにある自然も、技術なくしてはそこから何も生まれません。山にある木を切り倒し、運搬し、それをさらに加工する技術があって、初めて山は人にとって「資源」になりえます。このハイデッガーの指摘を踏まえると、技術があれば非常に多くのものが開発の対象であり、資源になる可能性があるとわかります。ハイデッガーは人間が自然だけではなく自分自身をも開匿し、場合によっては搾取さえしうると警告していたのです。

時計時間の誕生

そして、人が人そのものを資源化するに至るうえで重要な役割を果たしたテクノロジーの一つが、「時計時間」です。2021年、米誌「ノエマ・マガジン」に大変興味深い論考が掲載されました。

ジャーナリストのジョー・ザデーが著した「時計の暴政」では、かつては天体の移動によって移り変わる自然時間に親しんでいた人間たちが、機械式時計の誕生をきっかけに、大きく生活様式を変えたと考察しています。

機械式時計が誕生したのは、およそ13世紀頃。修道士が祈りの正確な時刻を測るために発明した、と言われています。その後、時計は世俗化し、時の権威者は自らの定めた時間を「標準時」と定め、それに沿った生活を浸透させました。それに付随して、各地に根づいていた太陽時(地方時)や、自然の移り変わりをもとに時間、そして季節を割り出す方式は影を潜めていきました。

英国の鉄道時代初期、各地の鉄道会社は現地時間に即した異なる時刻をそれぞれ採用していました。しかし、鉄道網が広がるにつれて鉄道時刻の統一が急務となり、1840年にグレート・ウェスタン鉄道が世界で初めて標準時(GMT)を採用。他の鉄道会社も、これに続きました。標準時とは、特定の国・地域で用いられる標準時間のことで、この標準時が統一基準として用いやすいため輸送や通信の分野で多く採用され始めたのです。

1855年までには、英国のほぼすべての公共の時計はロンドンの時間、つまり標準時に設定されました。そして1880年、「時間に関する定義の法」が施行され、英国全土の法的な時間は標準時であると定められました。

標準時の導入によって鉄道の運行効率は大いに向上しましたが、その一方で、太陽が南中した(天体がちょうど真南に来た)時間を正午としていた各地の住民たちは標準時に適応しなければいけなくなり、生活のリズムが自然の流れと異なるものとなってしまいました。

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2025.05.25

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