〈NHK朝ドラ〉だから生涯で約2000ものキャラクターを生み出した…やなせたかしの運命を変えた恩師のひと言
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NHK朝ドラ「あんぱん」の主人公のモデル、やなせたかし氏はどんな人物だったのか。『アンパンマンと日本人』(新潮新書)を書いた東京科学大学の柳瀬博一教授は「決して遅咲きの漫画家ではなく、マルチクリエイターだった。そのきかっけは東京高等工芸学校時代にある」という――。(第2回)(インタビュー、構成=ライター市岡ひかり)
やなせたかしさんをしのぶ会には、アンパンマンやばいきんまんなど、やなせさんが生んだたくさんのキャラクターたちが登場した=2014年4月19日午後、高知市
やなせたかしの学生時代にあった出会い
アンパンマンを生み出した、やなせたかしとその妻・暢の夫婦をモデルにした今回のNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。ドラマでは、主人公の嵩が紆余曲折ありながらもついに「絵を描いて生きていく」と決心し、東京高等芸術学校に入学しました。本格的に美術の道へと足を踏み入れました。
やなせたかしは「アンパンマン」以外にも、「手のひらを太陽に」「アンパンマンマーチ」の作詞家としても知られています。実はそのほかにもデザイナーや舞台芸術、シナリオライターなどさまざまなジャンルで活躍しました。
その仕事ぶりは、手塚治虫や立川談志、永六輔など、そうそうたる顔ぶれから頼りにされるほど。やなせたかしに「遅咲き」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、むしろ今でいうマルチクリエイターの先駆けとして若いころから活躍していたのです。そんな彼の方向性を決定づける出会いが、実はこの学生生活にありました。
嵩が通う東京高等芸術学校は、実際にやなせたかしが通った「東京高等工芸学校」がモデルになっています。
この学校は、私が現在所属する東京科学大学(旧東京工業大学)の前身である、東京高等工業学校の工業図案科を源流としています。