「日本と並ぶ長寿国」の不都合な真実…「野菜と果物生活」をやめたスペイン人が代わりにたっぷり食べているもの
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健康で長生きするにはどんな食生活を送ればいいのか。科学者のバーツラフ・シュミル氏は「長寿地域として知られるスペインの事例が参考になる。スペイン人の食生活は、1986年にEUに加盟してから急速に変化している」という――。 ※本稿は、バーツラフ・シュミル『世界の本当の仕組み』(草思社)の一部を再編集したものです。
無制限の肉食vs.純粋なビーガン
長生きするには、何を食べるべきか? 現代の食生活に関する主張や反論がやたらに飛び交うなかでは、これは答えるのが不可能な質問、あるいは少なくとも、答えるのが非常に難しい質問に思えるかもしれない。無制限の肉食から純粋な完全菜食主義まで、さまざまな食事法の1つひとつの長所と短所をどのように検討すればいいのか?
「旧石器時代(パレオ)ダイエット」という謳い文句で推奨されている無制限の肉食は、食物エネルギーの3分の1以上を肉のタンパク質から供給する。反対に純粋なビーガンは、動物性のものは1マイクログラムさえ口にしないだけでなく、革靴を履いたり、羊毛を編んだセーターやシルクのブラウスを着たりすることもない。無制限の肉食は、私たちの遠い祖先が抱いていた肉食に対する憧れの権化のような人の心に訴える。完全な菜食は、長年痛めつけられてきた生物圏を維持するための最も確実な道を提供しようとする。有害な家畜と違って慎ましい植物は、これ以上ないほど軽い負荷しか環境にかけないというのがその理由だ(※9)。
「長生きできる食生活」の最終結論
80歳を超える長寿と結びついている、最もリスクが少ない食生活を見つけるための私の取り組みは、優れたものとしてメディアが売り込む怪しげな食生活をすべて無視するだけではなく、ひょっとするとこれはもっと意外かもしれないが、学術誌に掲載された何十もの論文も顧みない。過去に摂取したあらゆる食物についての本人の記憶をもっぱら拠り所として、食生活と疾患と長寿の間の関連を調べた、対象人数も期間もまちまちの論文は、特にそうだ。そうした調査の統合的な研究にも目を向けない。
冠状動脈性心疾患や飽和脂肪やコレステロールの調査から、肉を食べたり畜乳を飲んだりすることのリスクを取り上げたものまで、1950年以降のその種の論文をたんに並べるだけでも、小さな本なら1冊が埋まるだろう。そして、それらの研究のかなりの部分が、人間の記憶がどれほど当てにならないか(あなたは先週何を食べたか? きっと思い出せないだろう。あるいは少なくとも、正確には思い出せないだろう)を暴くことと、手順や解析の「欠点」を詳述することに捧げられている。つまりこの分野は、説得力のない結論への批判が蔓延しているわけだ(※10)。
だから、何を食べるべきかという問題に、ほとんどの人が頭を悩ませるのも無理はない。これらの研究や、それを統合する研究は、一貫した明確な結果を出すことに繰り返し失敗してきたし、新しい研究がそれまでの結果を根本から覆すことがしばしばある(※11)。食生活にまつわるはるか昔からのこの難問は、いまだに解決を見ていない。これにけりをつける、もっと良い方法はあるのか? じつは、それはごく単純なことだ。どこの人がいちばん長生きし、彼らがどのような食生活をしているかを見ればいい。