タワマンが増え続ける街にはしたくない…異例の「タワマン禁止令」を打ち出した神戸市長の危機意識
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近畿圏の人気エリアである神戸市は、条例で新築タワーマンションの建設を規制している。その狙いはどこにあるのか。NHK取材班がまとめた『人口減少時代の再開発』(NHK出版新書)から一部を抜粋してお届けする――。(第4回)
“タワマン規制条例”を打ち出した神戸市
神戸市は4年前、独自のまちづくりを打ち出し、世間を驚かせた。中心市街地の三宮駅。2020年7月、その周辺でタワーマンションの新築を規制する条例をつくったのだ。三宮を中心に、地区内において住宅等の新築を規制する「都心機能誘導地区」を設定。これによって、中心市街地にタワーマンションを建設することが困難になった。
“タワマン”は人口を一気に増加させ、民間業者に富をもたらす、言わば“魔法の杖”とも呼ばれる。日本全体で人口減少が進む最中、各自治体はその存続をかけて人口の奪い合い競争を繰り広げている。都市の眺望や駅へのアクセス、ハイスペックな施設を備えるタワマンは、消費者のニーズが高い。そのため自治体にとっては、人口を獲得する選択肢の一つと言える。
実際、大阪にアクセスが良い兵庫県の複数の駅には、近年、高層マンションが相次いで出現している。駅徒歩圏内の好立地では、マンション建設を見込む不動産業者によって水面下で地上げも起きている。もし神戸市に“タワマン規制”がなければ、デベロッパーや不動産業者が莫大な市場価値を見逃すはずがない。
大きな流れに逆行するかに見える施策に踏み切ったと言える神戸市の狙いは一体どこにあるのか。