まともな性能の住宅なら「床暖房」は必要ない…海外では違法建築レベルの「寒い家」を許す日本の政策の大問題
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断熱はセーターなら、気密はウィンドブレーカー
日本の住宅の性能は優れていると思っている方が多いようですが、冬暖かく夏涼しく健康・快適に過ごすために重要な断熱・気密性能は、諸外国に比べて日本の住宅は極めて劣っているのが現状です。特にすきま風のない家である気密性能に関する取り組みは、非常に遅れています。
筆者は、高気密・高断熱住宅の住まいづくりをサポートする会社を経営しています。本稿では、その専門家の立場から、住宅の気密性能がなぜ大切なのかについて説明したいと思います。
まず、断熱と気密の基本概念について触れておきます。断熱と気密は、よくセーターとウィンドブレーカーに例えられます。真冬にどんなに分厚いセーターを着ても、セーター1枚で外出すると風を通してしまうので、寒いですよね。寒さを防ぐためには、風を防ぐウィンドブレーカーが必要です。
住宅も同様です。断熱材をどんなに分厚くして、断熱性能を高めても、隙間だらけの家では、冬はすきま風で寒いですし、夏も冬も冷暖房の効率が悪く、冷暖房光熱費が高くつきます。本来、断熱と気密は、セットで考えるべきものなのです。
日本の住宅の断熱性能はまだまだ諸外国に比べて劣っていますが、少しずつ改善されています。それに対して、圧倒的に取り組みが遅れているのが気密性能向上への取り組みです。
諸外国は断熱性能に厳しい基準を設けているが…
気密性能について説明する前に、断熱性能の制度面の現状に触れておきます。先進国は、住宅の断熱性能について基準を定めています。諸外国では、基本的にこの基準を満たしていないと新築することができません。
住宅の断熱性能は、外皮平均熱貫流率(UA値)で示されます。UA値は、住宅ごとに断熱材の厚さや窓の断熱性能から計算して求められます。
図表1は、国土交通省のホームページに掲載されている住宅の断熱性能基準の国際比較です。縦軸の外皮平均熱貫流率(UA値)は、値が小さいほど、高断熱であることを意味します。
横軸の暖房デグリーデーは、地域の寒さを表す指標です。暖房に必要な熱量で、冬の寒さがだいたい同じ気候の地域ごとに括っているもので、同じくらいの寒さの地域で住宅に要求されている断熱性能(UA値)を比較したものです。つまり、おおむね同じくらいの寒さのエリアにおける断熱性能の基準の国際比較です。