どんな屈強な男でも必ず子猫のような弱音を吐く…米最強部隊を作るパワハラ、モラハラ当たり前の地獄の訓練
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世界最強の部隊のひとつ、米海軍の特殊部隊ネイビーシールズではどんな訓練を行っているのか。元隊員のデイビッド・ゴギンズ氏による『CAN’T HURT ME』(サンマーク出版)より、入隊訓練における「ヘルウィーク(地獄週間)」の一部を紹介する――。(第3回)
米海軍最強部隊をつくる「ヘルウィーク」とは
シールズの選抜訓練BUD/S(基礎水中爆破訓練)は、6カ月の総合錬成訓練で、3つの段階に分かれている。
「フェーズ1」は体力錬成訓練(PT)。「フェーズ2」は潜水訓練で、水中で移動する方法や、特殊な潜水装置を操作する方法を学ぶ。この装置は「閉鎖回路型潜水システム」といって、敵に検知されないように気泡を放出せず、ダイバーが吐いた息から二酸化炭素を除去して、呼吸可能な空気に再生するものだ。「フェーズ3」は地上戦訓練だ。
でも、「BUD/S」と聞いてふつう想像するのは、フェーズ1だ。新しい訓練生をなじませ、約120人のクラスを、海神ネプチューンの三叉矛トライデントをかたどったネイビーシールズの金章──ナメちゃいけない相手だということを世界に知らしめる印──にふさわしい、25人から40人ほどの精鋭たちに絞り込むのが、この段階だからな。
BUD/Sの教官は俺たち訓練生を鍛えるために、心身の限界を超えてしごき、勇気を試し、体力、持久力、敏捷性の厳しい身体的基準を満たすよう迫る。
フェーズ1の最初の2週間は、たとえば10メートルのロープを登る、スポーツ番組『サスケ』風の半マイル(800メートル)の障害物コースを10分以内にクリアする、4マイル(6.4キロ)の砂浜を32分以内に完走する、といった訓練をやる。
だが俺に言わせりゃ、そんなのは子どもだましだ。フェーズ1の最大の試練、「ヘルウィーク(地獄週間)」とは比べものにならない。
例えるなら中世の拷問
ヘルウィークはまったくの別物だ。それは中世の拷問に似た訓練で、BUD/Sが始まってすぐの第3週に行われる。筋肉と関節をナイフで刺されるような痛みが高まり、肺が魔物に握られた布袋のように勝手に収縮して過呼吸になる状態が、昼も夜もなく130時間ぶっ通しで続く。
それは身体の限界をはるかに超えた、心と人格をあらわにする試練だ。何より、俺たちの無意識の思考や行動のパターンをむき出しにするためにつくられた試練なんだ。
BUD/Sが行われるのは、海軍特殊戦センター。南カリフォルニアの観光地ポイントローマ半島の内側の、サンディエゴ・マリーナを太平洋から隠すように広がるコロナド島に置かれた施設だ。
うれしいことに、カリフォルニアの黄金の太陽だって、グラインダーを美しく見せることはできない。醜いままがいいんだ。あのアスファルトの錬成場こそ、俺が求めていたすべてだった。苦しみが好きだからじゃないよ。シールに必要な素質が俺にあるかどうかを、ここでやっと知ることができるからだ。