こちらの記事も読まれています
【小児科医監修】赤ちゃん、子どもの溺水の原因や救急の処置法と後遺症について
Profile
【小児科医監修】溺水は赤ちゃんや子どもなどの乳幼児に多く、夏場だけでなく年間を通して起こる不慮の事故の一つとされています。今回の記事では、年齢別の溺水事故の原因や子どもが溺水したときの処置法、治療法と後遺症などについて解説します。
乳幼児の事故原因、溺水はどの年齢でも上位
消費者庁の「子どもの事故の現状について」という調査によると、年齢別の「不慮の事故」の原因のうち、溺水は1歳~6歳まで、すべてワースト2位または3位にあがるほど、頻発しているのがわかります。
詳しくみると1歳は、交通事故に続いて2位。不慮の事故全体の1/4弱程度が、溺水によるものです。2歳、3歳、4歳では、不慮の事故の第3位。5歳、6歳では第2位にあたり、不慮の事故全体の25~30%くらいを占めています。
溺水の事故に気をつけるべき要因として、海や川、ため池、浄化槽など屋外の子どもには危険性がある場所からお風呂や洗濯機、洗面器、バケツなど、身近な生活用品にも注意喚起が促されています。このことからも、さまざまなシチュエーションで溺水事故が発生していることがわかります。この状況から考えると、溺水は夏だけでなく、1年中気をつけるべきトラブルといえるでしょう。
また、溺水が起きやすい理由は、子どもの成長によって変わるので、年齢に応じた処置が必要になります。
赤ちゃん(0~2歳)の溺水で多い原因
年齢によって溺水が起きる場所が異なると述べましたが、具体的に0~2歳の赤ちゃんはどのような場所で溺水の事故に遭うのでしょうか。
自宅の浴槽
0~2歳の溺水の原因で最も多いのは、自宅のお風呂(浴槽)です。主なシチュエーションとして
・ママが頭や体を洗っている間
・きょうだいが先にお風呂から上がり、ママがきょうだいの身体を拭いているとき
・ママが自分の体を洗うために赤ちゃんに首つけ浮き輪をつけ、1人で浴槽にいれていたとき
など、ほんの少し大人が目を離した間に溺水事故が起こっています。
ビニールプール
ビニールプールの水深50cm程度でも溺水事故は起こります。年齢が低い赤ちゃんだと、バシャバシャ音を立てて暴れたり騒いだりせず、溺れている状況が理解できないまま静かに沈んでいくという報告があります。
幼児(3~6歳)の溺水で多い原因
幼児でも浴槽での事故は起こっていますが、3~6歳くらいになると、浴槽以外にも溺水事故が起きやすいシーンがあります。
いったいどういった場面に気をつけたらよいのでしょうか。
海や川
大人が同行していても、気づかないうちに子どもが水深の深いところに行ってしまい、溺れてしまうことがあります。また、海では、子どもと同じ背の高さか、それ以上の波が来ると慌ててしまい溺れる事例も。
プール
海や川と同じように、水深が深いところにいって溺れてしまうケースだけでなく、潜水や水泳中に排水溝に吸い込まれて溺水事故につながった事例もあります。
溺水したときの処置
平らな場所に寝かせる
子どもの溺水を発見したら、まず水の中から引き上げ、平らな場所に寝かせます。水から、引き上げるときは頭を胸より下に下げた状態にするのがポイントです。
意識の確認
水から子どもを引き上げたら、声をかけたり、身体や顔を叩いたりして意識の有無を確認します。その際、反応がしっかりと返ってこなくても、身体やまぶたが動いたら意識が戻ってくる可能性があるので、声をかけながらほかの対応策を実行してください。
呼びかけに反応し、意識がある場合は、身体にタオルなどを巻いて温め、嘔吐に注意して病院に連れていきます。嘔吐してしまった際は、顔を横に向けるなど、気道に詰まらせないよう注意が必要です。身体を大きく揺さぶると、反動で水を吐き、気道に入ってしまうことがあるため気をつけましょう。
救急車を呼ぶ
意識がなく、状態が回復しないときにはすぐに救急車を呼びます。
救急車が到着するまでの間、呼吸を確認し、呼吸がないときには心肺蘇生法を行います。
胸の真ん中を圧迫するときに、幼児は両手、乳児は指2本と幼児と乳児でやり方が変わってくることを覚えておきましょう。
詳しい心肺蘇生法は
をご確認ください。
溺水事故が起こったとき、救急車を呼ぶべきか、自分で病院に連れていって治療をしてもらうべきか迷うことがあるかもしれません。
こんな症状がみられたらすぐに救急車を
救急車を呼ぶべきか、安静にして様子を見るべきか迷うときの目安を解説します。
救急車を呼ぶべき状況
・唇の色が紫色で呼吸が弱っている
・手足が硬直している
・意識がはっきりしていない
以上のような症状がみられたときには、緊急の治療や処置が必要なケースが多いため、すぐに救急車を呼びましょう。
救急車を呼んだときには、まず落ち着きましょう。
・溺水事故が起こった状況
・救急車が到着するまでの子どもの変化
・救急車が到着するまでに行った応急手当
を把握、できればメモを取り、救急隊員が到着したときに伝えられると、その後の搬送や治療もスムーズかもしれません。
自宅で様子をみてもよい状況
上記のような様子が見られず、子どもを水から引き上げたときに、大声で泣いたり、意識がはっきりしていて反応がある、顔色がよく元気もある場合には、救急車をすぐに呼ばずに家で様子をみてもよいでしょう。
救急車を呼ぶかどうかは、目の前の子どもの様子を落ち着いてしっかりと見て判断することが重要です。自分では判断できない場合は#8000に電話をして相談するのもよいでしょう。
溺水の後遺症と治療
溺水したときには、正しい対処や治療が大切です。溺水から酸欠状態が続くと、心臓や脳などの臓器が機能不全になり、不整脈や意識障害を引き起こす可能性があります。
意識障害があるときには、集中治療が行われることが少なくありません。意識がはっきりし、呼吸や血圧が安定していても、溺水後に肺炎を発症した事例もあります。経過を観察し、抗菌薬で治療する場合もあります。子どもの溺水したあと、なにか気になることがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。
溺水を防ぐためのポイント
溺水事故を防ぐために周囲の大人が気を付けるポイントをご紹介します。
浴室などで子どもから目を離さない
子どもが成長してくると「すぐに戻って来るから、少しくらいなら目を離しても問題ないだろう」と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、その一瞬が溺水事故につながります。乳幼児の溺水事故の6割以上が、親が目を離したときに起こっています。
赤ちゃんや、幼児をお風呂に入れているときや水遊びをしているときは、大人が目を離さない、幼児だけしないようにしましょう。
水をためない
乳幼児がいる間は、浴槽やビニールプールを使用していないときに水をためないようにしましょう。災害対策などで水をためておく場合には、お風呂場に鍵をかけるなど工夫が必要です。
ほかにも、バケツをのぞき込んだときにそのままバケツの中に頭が落ちて溺れた事例も。バケツに水がはられていないか確認しておきましょう。
危険な場所を事前確認
川や海は、急に水深が深くなったり岸辺でも足を滑らせると水に入ってしまうこともあります。事前に危険な場所がないか調べておいたり、子どもより先に大人が水の中に入って確かめておくことが大切です。
幼児1人で川や海に入ったり、勝手に深いところにいかないように言葉で必ず約束しましょう。
体調不良のときには入水しない
子どもは夏に川や海、プールで遊べることを楽しみにしているものですよね。お休み前に家族でプールや海などに行く計画をだいぶ前から立てている場合もあるかもしれません。
しかし、子どもの体調がすぐれないときには計画を断念する、入水しない、などの決断が溺水事故を防ぎます。
溺水は大人の配慮で防げる
赤ちゃんや幼児の溺水事故は、プールや海、川で遊ぶ機会が増える夏場だけでなく、入浴時や洗面器やバケツに溜めた水で起こる場合も多く、1年中を通して注意が必要です。
また、赤ちゃんと幼児では、溺水事故が発生する原因に違いがあります。
乳幼児の溺水は、治療をしても、身体に後遺症が残る場合や重症化につながる可能性もあるので、溺水したときは、正しい処置や治療が重要です。
溺水はママやパパが、子どもをしっかり見守ることで防ぐことができる事故です。お風呂などの水回り、海や川、プールなどのレジャーの際には、大人が事前に危険がないか確認したり、子どもから目を離さないことを心がけて溺水事故から守りましょう。
監修:金髙太一(おひさまクリニック)
Profile
※記事内で使用している参照内容は、2018年7月10日時点で作成した記事になります。