新型出生前診断・NIPTとは?特徴と注意点

新型出生前診断・NIPTとは?特徴と注意点

出生前診断には羊水検査をはじめ、いくつかの種類があることをご存じでしょうか。今回は妊婦の血液で検査可能なNIPT検査の特徴と、ほかの出生前検査との違い、検査で分かることなどを解説します。

出生前検査とは、妊婦の血液や羊水などを採取し、胎児の染色体異常などの先天性疾患を調べる検査です。出生前診断のひとつに含まれる羊水検査についてはこちらの記事をご覧ください。

羊水検査とは。受ける際に理解しておくべき知識やリスクなど

羊水検査とは。受ける際に理解しておくべき知識やリスクなど

NIPTは出生前診断の中ではもっとも新しく、2013年より日本医学会の認定施設での臨床研究としてスタートし、すでに10万件近くの検査がおこなわれています。

出生前検査とは?それぞれの検査の種類と特徴

出生前検査には、


  • その検査だけで診断が確定する確定検査
  • その検査だけでは診断が確定しない非確定検査

の二種類があります。

まずはそれぞれの検査の特徴と違いをみていきましょう。

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非確定検査

非確定検査には、血液検査や超音波検査があります。それぞれの検査の感度(ダウン症候群に対して)を確率で示した数字は以下のとおり。


  • 血清マーカー検査(採血)…80~85%
  • コンバインド検査(採血&超音波)…80~85%
  • NIPT(採血)…99%

非確定検査の中では感度がもっとも高いNIPTですが、仮に陽性が出たとしても100%ではないため、結果を確定させるには、確定検査である羊水検査を受ける必要があります。

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確定検査

確定検査はお腹に針を指し、羊水や絨毛を採取する検査で、非確定検査よりも感度が高い検査です。


  • 羊水検査…99.9%
  • 絨毛検査…99.1%

しかし、検査にともなう流産のリスクが、


  • 羊水検査…1/300
  • 絨毛検査…1/100

の割合で起こります。

検査の内容をよく理解して、検査を受けるのか、受けないのか、受ける場合にはどの検査を受けるのか、パートナーとよく話し合いって決めることが大切です。

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NIPT(新型出生前診断)の特徴

NIPTはほかの出生前検査に比べ、もっとも早い妊娠10週頃からおこなうことができ、血清マーカー検査、コンバインド検査などこれまでの非確定検査と比べても感度が高いことが大きな特徴です。

また、NIPTの検査は、基本的に内容を十分に理解したうえで希望すればどなたでも受けることが可能です。


NIPTで分かること

NIPTでは、先天性疾患の中でも、染色体の異常により起こる染色体疾患の可能性を調べることができます。

人の細胞には46本の染色体があります。染色体は常染色体と呼ばれる1番から22番までの男女共通の染色体と、X、Yという2種類の性染色体から構成されています。

常染色体は2本で1組のペアになっていて、性染色体は女性はXX、男性はXYとなります。

染色体疾患でもっとも多いのは、通常2本しかない常染色体が3本あるトリソミーと呼ばれる異常です。NIPTの検査では、


  • ダウン症候群/21トリソミー(21番染色体)
  • 13トリソミー(13番染色体)
  • 18トリソミー(18番染色体)

の3つの可能性を調べることが可能です。

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遺伝カウンセリング

NIPT検査を受ける前には、原則として妊婦とパートナーが一緒に30分~1時間程度の遺伝カウンセリングを受ける必要があります。ここで、


  • 先天性疾患や染色体異常について
  • どのような出生前検査があるか、その検査で分かること
  • 感度や検査のリスク
  • 検査で最終的に先天性疾患や染色体異常の診断が確定した後の選択肢

などについての説明を受けます。検査に関する情報を十分に理解し、本人たちの意思で検査をおこなうべきか判断することを目的としています。


検査費用

医療機関により異なりますが、15~21万円程度、また、診察料などは別途必要です。

NIPTで陽性の場合は確定検査を受けることができますが、日本医学会認定施設ではこの費用も含まれていることがほとんどです。

また、まれに血液中の胎児DNAが少なく判定が保留となることもありますが、その場合の再検査費用も必要ありません。

費用について心配な場合はあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

NIPTを受ける際の注意点

医療の進歩により、これまでの出生前検査と比べて手軽に受けることができるNIPTですが、受け止めるべき現実の重さは同様です。

NIPTを検討している方は、以下の2点を事前に確認しましょう。

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確定検査ではないことを理解する

繰り返しになりますが、NIPTはこれまでの非確定検査に比べ感度が高いとはいえ、確定的なものではありません。

もしも陽性が出た場合、確定させるために羊水検査が必要となりますが、それに伴う流産のリスクがあります。


パートナーと話し合い、二人で納得した選択をする

妊娠・出産では、親となる二人のさまざまな考え方の違いが浮彫りになることも少なくありません。

NIPT検査を希望する、しないはもちろんのこと、何故検査したいのか、もしも先天性疾患や染色体異常の診断がついたら、妊娠を継続して生むのか、妊娠を継続しないのかについてまで、十分に話し合っておく必要があります。

NIPT検査は、検査を受けて結果が分かればそれでよいというものではありません。

検査を受ける前に十分に内容を理解し、パートナーと納得した選択をすることが重要です。

そのために、適切な遺伝カウンセリングが受けられ、小児科とも連携体制をとっている日本医学会で認定された施設を受診しましょう。

出生前検査は基本的に医師から勧められるものではなく、妊婦とそのパートナーがよく考えて決めるもの。

リスクの可能性を事前に知る、という意味で検査を受けることはできますが、検査の結果リスクがある可能性が分かった場合、どう受け止めるかまでを考え、医師にも相談しながら納得のいく選択をしましょう。


監修:笠井靖代

Profile

笠井靖代(日本赤十字社医療センター)

笠井靖代(日本赤十字社医療センター)

日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長。 医学博士、産婦人科専門医、臨床遺伝専門医。 日本周産期メンタルヘルス学会理事。1988年、東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。米国留学を経て、現職。専門は周産期、出生前相談。専門医としてだけでなく、自ら40歳で出産した経験から、多くの妊婦さんに妊娠・出産への不安や悩みに応えている。NHKの子育て情報番組『すくすく子育て』コメンテーター。著書に『35歳からのはじめての妊娠・出産・育児』(家の光協会)など。

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2021年03月17日

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