子どもに多い夏の肌トラブルのうち、あせもや虫さされなどと並んで、ママたちが耳にする機会が多いのが水いぼです。今回は、水いぼの症状、感染源や感染経路について解説。さらに、水いぼの治し方、自然治癒の期間、かゆいときの対応、免疫との関係性、ヨクイニンや処方薬などについても、専門医に確認しました。
水いぼとは、伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)といわれる皮膚にできるいぼの一種です。
いぼ一つひとつの大きさはおおよそ2mm~5mmぐらいで、半円ドームのような形をしています。中央が少しへこんでいるのが特徴で、光沢があって内部に水が入っているようにみえることから「水いぼ」と呼ばれるようになったようです。
このいぼの中には白い粘着性の塊があり、 中には、伝染性のウイルスがたくさん入っています。
水いぼができたことで痛みは生じません。しかし、水いぼは周囲が乾燥して湿疹が起こることが多く、これを軟属腫反応と呼び、かゆみを伴います。
また水いぼをかくことで、さらに広がるという悪循環を自家接種と呼びます。水いぼは、顔や指、腕、脚など全身にできる可能性があり、特に胸部や脇の下、肘の内側などの間擦部分では自家接種により多発する傾向があります。かゆみには個人差があり、全くかゆみを訴えない子もいます。
水いぼの中には 、感染源となる伝染性軟属腫ウイルスが含まれています。水いぼをかきこわしたり、つぶしたりすると水いぼのウイルスが飛び散り、それが他の部位や他人の皮膚に付着することで感染していきます。
ウイルスが付着してから新たな水いぼができるまで数週間~数カ月の潜伏期間があるので、「思い当たる節がない」と思っていたのに、できてしまうこともあるようです。
では、実際にどういったシーンで子どもが水いぼウイルスに感染することが多いのでしょうか。シーン別に解説します。
お風呂では、知らないうちに水いぼがつぶれウイルスが飛沫することがあります。それがタオルに付着し、タオルを共有することで感染が広がっていきます。
ママの中には、プールの水を介して水いぼが感染するのか気になる人もいるのではないでしょうか。しかし皮膚科の専門医たちの間で、プールの水では水いぼはうつらない、という見解が出ています。水いぼのある人と同じプールに入っただけでは感染することはありません。
プールもお風呂と同じで、知らないうちに水いぼがつぶれて、そのウイルスが飛び散ったり、タオルやビート板などを共有したことが原因で感染源のウイルスに触れてしまうことがあります。
同じ環境下や感染源のウイルスに触れても、免疫力の高い大人は、水いぼにかかりづらい傾向にあります。
子どもの皮膚は大人に比べて薄く、肌のバリア機能が弱いです。そのため、乾燥や摩擦などで肌が傷つきやすく、その傷に水いぼのウイルスが付着するとあっという間に感染してしまいます。
なかでもアトピー性皮膚炎や乾燥肌の子どもは、皮膚がよりデリケートでバリア機能が弱いため、何度も水いぼになってしまう傾向にあります。さらに、子どもは大人に比べてウイルスに対し免疫がないことも、水いぼにかかりやすい理由のひとつといえます。また、幼児期は「水いぼはうつるもの」と話しても、忘れてしまうことってありますよね。そのため、友だちの水いぼに触れたりしてうつるケースもあるようです。
水いぼには、さまざまな治し方があり、なかには多少の痛みをともなう治療法もあります。どの治療を選択するかは、小児科や皮膚科の先生と相談しながら決めるのがいいでしょう。
水いぼの治療法として、よく知られているのが専用のピンセットを使った「摘除」による治療です。摘除では痛みを伴ったり、視覚的に子どもにストレスを与えたりすることがあるため、麻酔テープを使用して施術を行う医療機関もあります。子どもの年齢が低かったり、痛みにあまり強くないタイプの場合には、あらかじめ医師に相談できるとよいですね。
また、保育園や幼稚園、スイミングスクールに通っている場合は、水いぼについての考え方や対処方針、奨励する治し方が決まっているところがあるので、確認をしてから治療をはじめるようにしてください。
個人差がありますが、水いぼ以外に肌トラブルがない子どもであれば6カ月~3年ほどで自然治癒します。
ただし、自然治癒を待っている期間に幼稚園や保育園で感染を広げてしまう可能性があること、アトピー性皮膚炎やデリケートな肌質の子どもの場合、水いぼの範囲や数がどんどん増えていくケースもあります。
ママが自己判断で「このまま様子を見よう」と決めるのではなく、一度、皮膚科を受診して長時間かかっても自然治癒するのを待つのか、他の治療の方法を選択するのがいいのかを医師に相談してください。
水いぼの治療では、どういった薬が処方されるのでしょうか。主な処方薬とどういった役割で処方される薬なのかを紹介します。
ヨクイニンは水いぼには保険適応外ですが、小児科や皮膚科で内服を勧められることがあるでしょう。ヨクイニンは、免疫力を高めて水いぼウイルスの働きを抑制する作用があるといわれています。
アトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹を患っている子どもが水いぼを発症したとき、水いぼの周りの湿疹などに対し、中~弱のステロイド剤が処方されることがあります。肌がデリケートな状態のときは、軽い刺激でも肌が傷つき、その傷口から水いぼのウイルスが入り込み新しい水いぼを誘発することがあるためです。
その際ステロイドを、直接水いぼに塗らないように注意しましょう。また「ステロイド剤はクセになるから怖い」と、ママが自己判断で使用を中止するのはNGです。ステロイド剤の使用に不安や疑問がある場合は、処方を受けた医師にいつまで塗布するのか、1回の使用量などを細かく確認してください。
ほかにも、かゆみを抑えるために抗アレルギー剤や、乾燥肌の子どもに保湿剤などが処方されることがあります。薬以外で、かゆみを抑える方法として、どういった対策があるのでしょうか。
水いぼは治りかけのときにかゆみが生じやすいようです。特にこの時期はかきこわさないよう注意をしましょう。子どもが無意識に水いぼをかいた手で他の部位や他の人を触ると、あっという間に感染拡大してしまいます。そうならないためには、ポイントをおさえてケアをしてください。
肌を清潔に保つことも「かかない」ようにするためのポイントです。肌を汚れたままにしておくと肌に刺激となり、かゆみが生じることがあります。こまめにシャワーを浴びるなど意識できるとよいでしょう
通気性のよい素材のもので水いぼを覆うことによって、無意識のうちにかきこわすことは少なくなるでしょう。
万一、水いぼをかいて、水いぼのウイルスが爪の中に入り込み、その手で他の部位をさわることで感染が広がる可能性があります。水いぼのときは、常に爪を常に短くしておくよう心がけてください。
水いぼとは、主に夏の子どもの肌トラブルで、いぼの一種です。水いぼの内部はウイルスです。水いぼは治りかけのときにかゆがり、子どもがかきこわすことで破け、ウイルスが飛び散って他の部位や他人に感染が広がっていきます。
大人に比べて十分な免疫をまだ持っていない子どもやアトピー性皮膚炎や乾燥肌などの皮膚トラブルがある子どもは、水いぼに感染しやすい傾向にあります。
水いぼの治し方は、病院での処置、自然治癒を待つ方法などがあり、医師の考え方によって勧められる治し方が異なるでしょう。また、水いぼの予防には皮膚を健康な状態に保ち、皮膚バリア機能を守る事が重要です。どの治療の方法がいいかは水いぼの数や状態、子どもの体質や性格などふまえ、かかりつけの皮膚科医と相談して決めましょう。
楽しい夏を過ごすためにも、水いぼかなと思ったら、早めに皮膚科、小児科を受診し、適切なケアをしましょう。
加藤円香(mamaCLINIC 恵比寿mama)
医療法人社団mamaCLINIC 恵比寿mamaクリニック院長。
4児の子育てをしながら、恵比寿にお母さんと家族のための皮膚科、漢方内科を開院。こどものスキンケアから美容など、小さなことでも相談できる『家族みんなのかかりつけ医』として診察を行なっている。
2018年07月06日
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