花粉症について、これまでの記事で「市販薬と病院、どちらが安いか」「何科を受診すればいいか」と2回に渡ってご説明しました。「それでもわからないことがあります」とご質問をいただいたので、子どもの花粉症の疑問について一緒に考えてみました。今回は検査と遠隔医療についてです。
内科医として約10年間地方の病院・診療所に勤務した後、現在は総合診療医として非常勤勤務しながら、二人の子どもの育児中
Q.
ママ友に「子どもが花粉症だったら検査してあげないとかわいそうだよ」って言われました。先生のコラムで「花粉症の検査は絶対必要ではない」って書いてあったのですが、なんだかもやもやします。うちの子は検査していないのですが、本当にこれでいいのでしょうか?
A.
検査が必要かどうかは、その子によってちがいます。
1年のうち、ある時期(スギ花粉なら2〜5月ごろ)だけ外に出ると鼻水やくしゃみ、目のかゆみが出る……ということでしたら、検査せずに『花粉症』と考えて治療をして良いと思います。なぜ検査しなくて良いかというと、検査で「スギ花粉アレルギー」とわかっても、完全に花粉を避けることはできないからです。
食物アレルギーだと、強いアレルギー反応のある物質は除去することができます(最近は、必要最低限の除去、となってきています)。しかし、花粉症では「スギ花粉だ」「ブタクサだ」と判明したからといって、スギ花粉のない地域に引っ越す…ということは、なかなかできませんよね。
アレルギー症状のある時期は、マスクやゴーグルをして花粉をできるだけ避けたり、お薬を使ったり、という対応になります。つまり、検査をしてもしなくても、対応や治療はあまり変わらない、という場合が多いのです。
アレルギーの検査は(何種類のアレルギー物質を検査をするか、にもよりますが)、自己負担で数千円程度かかり、決して安くありません。もし、検査しても対応が変わらないのであれば、必ずしも検査しなくても良いと思います。
ただ、検査することによって、人によっては「やはりスギ花粉アレルギーだったのか」と安心できる、というメリットはあります。またとても重症で、花粉症の症状のために強い薬を長く使わなければいけないような場合には、その強い治療が本当に必要なものか確かめるために一度検査をしておく意義は十分にあると考えられます。「かわいそう」とおっしゃったママ友は、こういうケースだったのかもしれませんね。
ですから、「検査してあげないとかわいそう」かどうかは、そのお子さんによって違います。医師や薬剤師と話し合って納得しているのであれば(あるいは、現在の対策で症状がコントロールできているのならば)、検査せずに花粉症対策をしているお母さんも、堂々とそのまま続けていただいていいと思います。
Q.
花粉症にもいろいろな花粉の種類があるようなのですが、「どの花粉のアレルギーか」を病院で検査してはっきりさせた方がいいのでしょうか?
A.
はっきりさせた方が安心、という方は検査していただくとよいと思いますが、以下の理由から必ずしも全員が検査する必要はないと考えています。
・検査しても、その花粉を完全に避けられるわけではない
・検査に数千円の自己負担がかかる
・全ての花粉を調べられる訳ではない
これも個人によって違いますので、ご心配でしたら一度医師にご相談ください。
実は、こんな疑問を持っておられるママこそ、市販薬を買うのではなく、病院を受診していただきたいと思っています。市販薬は診察料が必要なく手軽に買える分、「もやもや」は解決しにくいのが特徴です。病院を受診すると、時間と診察料がかかりますが、その分、薬代も健康保険で割安となり「もやもや」も解決するお手伝いができるのではないかと思っています。
Q.
「遠隔医療」という言葉が出てきたのですが、スマホを使って受診して花粉症のお薬がもらえるのですか?
A.
「遠隔医療」とは、直接病院を受診しなくても、スマートフォンのテレビ電話機能などを使って診察を受け、処方を受けることができるという制度です。
最初の1回はスマートフォンではなく、直接医療機関を受診することが必要ですが、次回からは症状が安定していれば、スマートフォンでの診察によってお薬をもらうことが可能になってきます。ただ、新しく始まった制度なので、すべての医療機関で積極的に取り入れられている訳ではありません。
「遠隔医療」による診療を行っている医療機関を探すには、例えば「遠隔診療」と「(都道府県名)」等のキーワードで検索をしてみてください。地方ではまだ実施しているクリニックは少ないと思われます。今後この仕組みが広がり、簡単に受診できるようになるとママにとっても便利ですよね。
今回は、お子さんの花粉症についての疑問にお答えさせていただきました。より一般的な回答を心がけましたが、状況のちがいや個人差がありますので、気になる場合にはお近くの医療機関にご相談してくださいね。
次回は、花粉症予防についてのママの素朴な疑問にお答えします。
内科医として約10年間地方の病院・診療所に勤務した後、現在は総合診療医として非常勤勤務しながら、二人の子どもの育児中
2017年02月22日
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