女性より男性のほうが「生きづらい」と感じている…政治学者が危惧する「男女平等」が招く新たな社会的分断

女性より男性のほうが「生きづらい」と感じている…政治学者が危惧する「男女平等」が招く新たな社会的分断

男女平等な社会は実現できるのか。オランダ・フローニンゲン大学助教授の田中世紀さんは「男女平等を実現する途中が、最も反発が生まれやすいのかもしれない。特に、男性優位の恩恵を受けていない若い男性は、女性優遇策に不満を持つ可能性が高い」という――。(第2回) ※本稿は、田中世紀『なぜ男女格差はなくならないのか』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

優遇策には必ず「もれ」が出る

男女平等をめぐる対立について、具体例を使ってもう少し掘り下げてみたい。日本で女性の役員・管理職を増やすという試みがある。これを例にとってみよう。

下の図が示すとおり、女性役員の数は急速に増えてきている。ただし、急速に増えてきたとはいえ、もともと日本における女性役員の数は他の先進国に比べて少なかった。そのような背景を踏まえると、女性役員枠、女性管理職枠を設けて男女の格差を是正することに反発する人は本当にいるのだろうかと疑問に思う人もいるかもしれない。

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筆者作成(『なぜ男女格差はなくならないのか』より)

しかし、そもそも誰かを優遇するということは、優遇措置からもれてしまう人が出てくるということでもある。そうした人々からの不公平感や反発が出てきてしまうのは、論理的にもわかりやすい。

女性優遇策の敗者は若い男性

たとえば、女性管理職の増加が優遇措置によって実現した場合、本来そのポジションを獲得できたかもしれない男性の不満が高まる可能性がある。そのような男性にとって、優遇措置は「他人にとっての正義」として映り、自分自身にとっての正義とは感じられないかもしれない。社会全体で女性への優遇策を推進しようとした場合、これまで格差の便益を得てきた年配の男性にとっても、自分たちの慣れたやり方や既得権益を簡単に手放すことは難しく感じられるだろう。

そして、これからの社会を考えるとき、それ以上に重要なのは、若い世代の反応かもしれない。

特に若い男性の中には、自身が成長する過程で優遇策の影響を直接受けることで、優遇策の「敗者」としての立場を経験する人がこれからますます多くなることが予想される。大学入試や就職、昇進などの競争の場面で、ポストに限りがある場合、彼らの目には、この社会は「女性が常に優遇される社会」として映るだろう。

男性優位な社会が長く続き、女性が不当に扱われてきた歴史を踏まえれば、「男性は少し我慢するべきだ」という主張もあるだろう。しかし、男性優位社会の恩恵や影響をあまり経験していない若い世代の男性にとっては、特に優遇策が長期にわたって続く場合、このような主張を支持することは難しく、反発が強まるかもしれない。

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2025.12.12

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