年3万キロのプロが実践! ガソリン代が本当に安くなる方法
Profile
レギュラー車にハイオクは不要
ガソリン価格が高騰しています。資源エネルギー庁の発表によると、4月14日付のレギュラーガソリン全国平均小売価格は、1リットルあたり186.5円。2024年前半はおよそ170円台前半で推移していた価格は同年末から上がり始め、ついに23年9月に記録した過去最高値に並んだ形です。
実はこれでも、日本は先進国の中でガソリン価格が安いほう。日本よりガソリンが安いのはアメリカくらいで、ドイツやオランダは1リットルあたり2ユーロ。日本円換算で約320円します。
ヨーロッパのガソリン価格が高いのは、税負担率が5割前後と、税金が高いから。日本はガソリンの税負担率こそ4割強と低めですが、高速道路が有料だったりして、基本的にクルマからお金を取ることが好きな国。今後、ガソリン価格がヨーロッパ並みに引き上げられてもおかしくありません。
この状況からドライバーはどうやって自衛するべきか。手っ取り早いのは、安いガソリンスタンドで給油することです。料金が安い販売店は自分の足で探してもいいし、「gogo.gs」といった情報サイトで調べるのもありです。
どちらにしても注目したいのは「会員価格」。ガソリン価格には、店頭で表示されている現金価格のほかに、アプリ会員だったり、提携クレジットカードで支払ったりする場合に適用される会員価格があります。もちろん価格が安いのは、顧客の囲い込みを狙って設定される会員価格のほう。割引額は販売店によって異なりますが、1リットルあたり4円以上は安くなる場合が多いです。
私はいつも、東京都世田谷区のエネオス上野毛SS(サービスステーション)で給油しています。ここはエネオスのアプリ会員なら、クーポンを使うと1リットルあたり8円の値引きで給油できます。値引き額はハイオク、レギュラー、軽油すべて8円。値引き額が均一なら、軽油はもともとの価格が安いため最も割引率が高くなります。私は現在マイルドハイブリッドのディーゼル車に乗っており、年間3万キロメートル走ることもあって、このディスカウントはとてもありがたいです。
給油時の車体揺らしは2つの意味でナンセンス
セルフのガソリンスタンドでは、給油時に車体を揺らす人をたまに見かけます。揺らすことで燃料タンクの上層に溜まったエアを抜き、文字通り「満タン」までいっぱいに給油することを狙っているようです。
しかし、これは2つの意味でナンセンスです。まず今のクルマは車体を揺らさなくてもタンクから空気が抜けていきます。また、給油がタンク容量の9割程度で止まるのは、タンクがガソリンの膨張分を考慮した構造になっているからです。ガソリンは10度上昇するごとに、体積が1.35%増えるため、バッファを確保する必要があるのです。
もう一つは、ガソリン代は満タン1回いくらではないこと。スーパーの詰め放題のように少しでも多く入れたら得だと勘違いしているのかもしれませんが、ガソリン代は従量課金であり、多く給油すればその分お金がかかります。車体を揺らすのは無意味です。
逆に、クルマの重量を軽くしようと半分までしか給油しない人もいますが、これも疑問です。たしかに車体が軽いほうが燃費は良いですが、ガソリンを半分にしたところで子ども一人分程度の重量差しかなく、誤差の範囲です。むしろ給油回数が増えて走行距離が延びるおそれがあり、逆効果でしょう。使わないゴルフバッグや工具類はクルマから降ろしておくべきですが、ガソリンは基本満タンで問題ありません。
ガソリンスタンドで給油以外にやってほしいのは、タイヤの空気圧チェックです。空気の抜けた自転車を漕ぐと力を要しますが、クルマも同様。タイヤの空気圧が低いと、転がり抵抗が増えて燃費が悪化します。また、空気圧が低いとタイヤの接地面の両端がすり減ってしまい、長持ちしません。燃費そのものは数%の差ですが、タイヤ交換の間隔が短くなることも考慮すれば、空気圧チェックだけで年間10%程度のコスト削減を期待できます。
空気圧は車両指定空気圧に保つことが原則です。タイヤメーカーは月1回のチェックを推奨していますが、スローパンクチャー(タイヤに釘などが刺さって空気が少しずつ抜ける現象)を放置すると、走行中に釘が抜けるおそれがあります。その場合、タイヤから急激に空気が抜け、立ち往生することになりかねません。スローパンクチャーを早期発見するためには、2週間に1回は空気圧をチェックするべき。ガソリンスタンドに行けばタダで空気圧を調べられるので、利用しない手はありません。
先ほどタイヤの空気圧が燃費に影響すると言いましたが、特段「低燃費タイヤ」を選ぶ必要はありません。というのも、近年は全体的にタイヤ性能が向上していて、ノーマルタイヤやスポーツタイヤがかつての低燃費タイヤと同等の品質を持っています。
一方で、スタッドレスタイヤの通年使用は要注意です。夏は燃費が10%ほど悪くなってしまいます。季節の変わり目にタイヤを履き替えるのが面倒だという人にオススメなのは、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。これまでのオールシーズンタイヤと違い、シンクロウェザーはアイスバーンを走れて、夏の乾いた道でもグリップがいい。燃費もノーマルタイヤと遜色なく、現時点で最強です。
ガソリン代を節約したいなら、クルマの使い方も重要です。もはや常識ですが、停車中のアイドリングは原則的にやめるべき。2000cc4気筒のクルマだと、アイドリングで1分間に15〜20ccのガソリンを使います。渋滞に1時間ハマってアイドリングを続けると、たいして進んでいないのに1リットル前後ガソリンを消費します。
また、エアコンの使い方にも気を配りたいところです。電装品はエンジンで発電して動かしますが、なかでも電気を使うのはエアコンのファンです。特に暖房はエンジンの排熱を使って車内を暖める仕組みなので、いったん暖まった後はファンを弱くしてもそれほど寒くなりません。こまめな管理を心がけましょう。
冬場、出発前にエンジンや車内を暖めようと、暖機運転する人をいまだに見かけます。寒いのは理解できますが、エンジンのためを思ってやっているのであれば、まったくの無意味です。停車中の暖機運転は最適運転温度になるまで時間を要し、むしろエンジンに負担がかかります。暖機運転の間ガソリンを消費もしますし、経済的ではありません。エンジンは、出発の準備がすべて整って、シートベルトをしてからかける。この習慣を身につけることがガソリン代の節約につながります。
給油時の車体揺すり、アイドリング、暖機運転などは、「昭和の運転」スタイル。それらをアップデートして、ガソリン代高騰に負けずに快適なカーライフを送りましょう。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年5月30日号)の一部を再編集したものです。
菰田 潔 Kiyoshi Komoda モータージャーナリスト。自動車レース、タイヤテストドライバーを経験後、1984年から新型車にいち早く試乗して記事を書くフリーランスのモータージャーナリストになる。日本自動車ジャーナリスト協会会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。JAF交通安全・環境委員会委員。 |
---|
(構成=村上 敬)