「長距離バスの後ろを走れ」は本当か? 混雑予測のウラを突く! 渋滞をとことん回避する法

「長距離バスの後ろを走れ」は本当か? 混雑予測のウラを突く! 渋滞をとことん回避する法

日本の道路が過去最悪に渋滞している。混雑予測はどう読むのが正解か。高速道路なら一般道に迂回すべきか。流れやすいのは走行車線なのか。ストレスなく運転する方法はこれだ。

ドライバー減少でも渋滞が増えている理由

年末年始やGW、お盆といった大型連休につきもののレジャー渋滞。今年のGWは、中央自動車道下りの相模湖IC付近、東北自動車道下りの羽生PA付近、関越自動車道上りの坂戸西スマートIC付近で、それぞれ40キロメートルを超す大渋滞が予測されていました。

渋滞は近年、拡大傾向です。渋滞の程度を示す指標に、「渋滞損失時間」があります。これは渋滞によるロス時間と、影響を受けた交通量と乗車人数を掛け合わせたもの。NEXCO東日本管内の高速道路における渋滞損失時間を見ると、民営化前のピークは1997年で、約700万台・時間強でした。2008年には300万台・時間まで減少したものの、そこが底になり、その後は増加トレンドに入っています。23年には900万台・時間を突破し、過去最高を記録しました。

渋滞損失時間が悪化した原因はいくつかあります。まず、09年3月から11年6月まで国が生活対策として行った「高速道路料金休日上限1000円」の施策が、減少トレンドを反転させた契機でした。このとき、日帰り旅行が前年比1.3倍、宿泊旅行が1.2倍に増えて、毎週末GWさながらの大渋滞が発生。特に東名・名神は深刻で、例年の約3倍の渋滞が発生しています。この施策で、高速道路の交通量は一気に10年前へ逆戻りしました。

コロナ禍も渋滞損失時間が増えるきっかけでした。外出自粛に伴い、20年は渋滞損失時間が激減しましたが、公共交通機関と比べてクルマには「三密回避」での優位性があることから、移動手段として復権していきます。また、物流の総量はほぼ横ばいですが、EC市場の拡大とともに小口化が進んで物流の件数が増えたことも、渋滞増加に拍車をかけたと思います。

このように、短期的にはさまざまな要因で渋滞量は上下しますが、根底にあるのは首都圏への一極集中です。

日本全国で見ると、運転免許の保有者数は18年をピークに減少傾向です。単純に考えて、運転する人が減れば渋滞も減少するはず。ところが、日本の人口が減少する局面でも、首都圏は人口が増え続けているのです。特に東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では、10万人超の転入超過が続いています。

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日本の高速道路ネットワークは完成に近づいており、首都圏以外では渋滞が減っています。関西圏の渋滞は、27年度に予定されている新名神高速道路の全線開通で激減するでしょう。一方、首都圏の高速道路は拡幅工事の余地が少ないです。東京一極集中という構造的問題が解決しない限り、首都圏の渋滞は続くと覚悟しておくべきです。

50キロ超の大渋滞は姿を消している

渋滞がなくならないとしたら、ドライバーはどのように対応すればいいのでしょうか。各NEXCOには「渋滞予報士」などがいて、過去3年間の渋滞データをもとに渋滞予測カレンダーをつくっています。

高速道路の渋滞とは、「時速40キロメートル以下で低速走行あるいは停止発進を繰り返す車列が、1キロメートル以上かつ15分以上継続した状態」を指します。それを聞いて、「時速40キロメートルなら少し流れが詰まっている程度」と考える人もいるでしょうか。たしかに、時速40キロメートルで進むことができれば、それほどストレスを感じないと思います。

ただ、時速40キロメートルというのは、あくまでも渋滞かそうでないかの境目の速度です。実際の渋滞中の流れは時速25キロメートル前後と考えてください。渋滞予測をする際も、アクアラインなら時速15キロメートル、中央道なら時速20キロメートルといったように、路線ごとの実態に即した速度を設定して距離や通過所要時間を算出しています。

ちなみに、渋滞予報の的中率は8割といわれています。私の感覚でも、かつてはそれくらいの精度を誇っていたと思います。しかし、近年は的中率が下がった印象で、おそらく7割程度でしょう。的中率が悪化しているのは、予測技術の問題ではありません。まずコロナ禍というイレギュラーな事態が発生したことが大きい。交通量の落ち込みと回復の見通しが立たず、渋滞予報士はさぞ苦労したことでしょう。

もう一つ、「アナウンス効果」も見逃せません。渋滞予測カレンダーを見たドライバーが、「この日が渋滞のピークなら帰省する日を一日ズラそう」と、回避行動を取る動きが増えているのです。その結果起きているのが、渋滞の平準化です。以前は珍しくなかった50キロメートル超の大渋滞が姿を消し、代わりに小さな渋滞が増えています。この動きが的中率を引き下げています。

予測カレンダーにアナウンス効果があるなら、渋滞が予測されている時間帯やルートをあえて逆張りで利用するのもありでしょう。意外に空いている可能性があります。

NEXCOは口が裂けても言いませんが、そもそも彼らは渋滞の長さや通過時間を意図的に多めに見積もっていると思われます。短めに見積もってひどい渋滞になれば、利用者のフラストレーションが溜まる。一方で、長めに見積もっておいて案外スイスイ流れると、ドライバーは「ラッキー」と考えて文句が出ません。道路の管理者として選びたくなるのは後者です。そのことも考慮すれば、予測が外れるほうに懸ける人がいてもおかしくないです。

ただ、私自身は順張りです。多少悪化したとはいえ、的中率が7割なら素直に予測を信じて渋滞を回避します。

今回のGWは、首都圏からの下りのピークが5月3日でした。冒頭で挙げた下り2路線のほか、関越道の高坂SA付近で最大30キロメートル、東名の綾瀬SIC付近で最大25キロメートルの渋滞が予測されていました。一方で、東京から成田方面に向かう東関東自動車道や、横須賀方面に向かう横浜横須賀道路には10キロメートル以上の渋滞予測が出ていませんでした。もしこの日に私が東京からドライブするなら、北や西は避けて、南や東の方面の行楽地を探すでしょう。

ただ、東京から南や東の方面といっても、アクアラインを使うルートは選びません。確実に渋滞するからです。

一般的にトンネルは圧迫感があり、ドライバーが無意識にアクセルを戻すことで渋滞が起きるといわれています。一方で、アクアラインで速度低下が起きるのは、「サグ効果」の影響が大きいです。サグ効果とは、下り坂から上り坂に移っているのに、それに気づかず速度が低下する現象です。

アクアラインの本線は片側2車線。アウトレットモール等の商業施設が周辺にある木更津金田ICから本線への連絡道も、2車線あります。これらが合流することで、激しい速度低下が生じています。連休時のアクアライン渋滞は、今後も避けられないでしょう。

新東名ではなく東名に乗るべき人とは

頻繁に渋滞になる場所は毎年決まっています。国土交通省発表の「高速道路の交通状況ランキング(平成31・令和元年)」によると、IC区間別の渋滞損失時間のランキングは次の通りです。

第1位

東名高速道路上り

海老名JCTから横浜町田ICまで

第2位

中央自動車道上り

調布ICから高井戸ICまで

第3位

東名高速道路上り

東名川崎ICから東京ICまで

これら3区間は、前年のランキングでも同じ順位でした。週末の外出でこれらの路線を使う場合、渋滞を覚悟したほうがよいでしょう。

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渋滞するとわかっていても行きたい行楽地があるなら、日程や時間帯を工夫したいところです。たとえば、週末のレジャー渋滞は、下りは土曜日、上りは日曜日に発生します。首都圏発で目的地に宿泊する計画なら、往復で渋滞に巻き込まれることも。

一方で、土曜ないし日曜の日帰り旅行であれば、渋滞に巻き込まれるリスクは片道だけです。日曜日の日帰り旅行なら、現地で夕食を食べて帰る時間帯を夜遅くにすれば、往復とも渋滞に巻き込まれないことすらありえます。

仕事などの諸事情で、行先や日程が決まっているケースもあるでしょう。その場合はルート選びをするしかありません。たとえば東京から名古屋に向かう場合、東名、新東名、中央道、どのルートを選ぶと早く着くでしょうか。

普通に考えたら、新東名の一択です。東名と同じく片側3車線ですが、東名が勾配率最大5%であるのに対して新東名は2%で、渋滞の原因になる速度低下が発生しにくい。また、仮に渋滞に遭遇しても、そこさえ抜けてしまえば時速120キロメートル区間でスイスイ目的地に向かうことができます。

そんな新東名にあえて文句をつけるとしたら、PAやSAの駐車可能台数が少ないことです。新東名では、サービスエリア渋滞がたびたび起きます。お年寄りや子供連れでトイレ休憩をたくさん取りたい、あるいは豪華なSAそのものを楽しみたいときは、収容能力が大きい東名も選択肢に入ります。

では、中央道はどうか。片側2車線、最高速度が時速80キロメートルなので、はっきり言って論外です。24年8月には一部区間の最高速度が時速100キロメートルになりましたが、それでも物足りない。昔はトラックドライバーが東名の迂回路として中央道を使っていましたが、新東名ができたことで東名の渋滞も減り、迂回路としての魅力はなくなりました。

もっとも、今や自分の勘や経験でルート選びをする時代ではありません。私が全幅の信頼を寄せているのはグーグルマップです。車載ナビと違い、グーグルマップは位置情報をオンにしているすべてのスマホからデータを収集して所要時間を計算し、最速ルートを導き出してくれます。今のところナビツールとしてダントツの存在であり、“神”と呼びたくなるほど。ルート選びはグーグル頼みでいいと思います。

唯一の弱点は長大トンネルです。トンネル内はGPS情報を取得できないため、グーグルマップはトンネルに進入するときの速度などから通過時間を予測するしかありません。神といえども、山手トンネルやアクアラインなど長いトンネルは予測精度が落ちます。

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渋滞にハマったときはリムジンバスを探せ

諸々の対策を講じても渋滞にハマってしまったとしたら、ジタバタしないで諦めることが肝心です。

10年前までは、追い越し車線より走行車線のほうが渋滞を早く抜けることができました。流れが悪くなり始めると、少しでも早く走ろうとクルマが追い越し車線に集中。そこから渋滞が始まり、逆に走行車線のほうが流れやすくなるのです。ただ、走行車線のほうが早く抜けるといっても、その差は20キロメートル渋滞でたったの1分、クルマなら30台分程度です。しかも、NEXCOが「渋滞は追い越し車線から始まる」と啓蒙活動した結果、近年は走行車線へ移動する動きが増え、車線間の差はほとんどなくなりました。

車線間で違いがあるとしたらストレスでしょうか。走行車線は合流があるため少々気を使います。それがストレスになる人は、追い越し車線を進めばいい。本当は、それすら気にしないで悠然と走るのがベストです。

ちなみに高速が渋滞しているからといって、一般道に迂回するのは愚の骨頂。高速の渋滞時は、並走する一般道も混雑します。高速道路の渋滞距離は一般道よりも長いものの、渋滞時でも時速25キロメートルで走ることができて、通過後は時速80〜120キロメートルで巡航できます。一方、一般道は渋滞の場合時速5キロメートル程度でしか走れませんし、そもそも信号があるため距離を稼げません。

もちろん高速の渋滞区間だけをピンポイントで一般道に迂回できればよいのでしょうが、ICはそう都合よく設置されていないため、遠回りさせられることもしばしば。高速を走っているとグーグルマップが一般道への迂回を指示してくることもありますが、所要時間の差はせいぜい5分程度。私はその程度の時間短縮のために、ギャンブルする気にはなれません。

一般道への迂回で唯一の例外は、目的地を同一とするリムジンバスが前方を走っている場合です。リムジンバスのルート取りは独自の情報をもとにしており、国土交通省の認可を得た迂回経路を駆使しながら最速を目指しています。渋滞を避けるためなら、1区間だけ高速を降りて一般道を進み、再度高速に合流することも厭いません。リムジンバスが走っているのは主要空港方面だけなので、役立つ場面は限定的ですが、覚えておいて損はありません。

同様の観点でいうと、高速バスに追従しても早く目的地に着きそうですが、こちらは違います。高速バスは基本的に国土交通省から認可されている経路しか走ることができません。また、運転巧者が乗っていそうなトラックやハイエースに着いていくと、無関係のICで高速を降りた挙げ句、よくわからない土地でさまようことになりかねません。前のクルマに一方的に追従することはやめましょう。

昔に比べて、渋滞のストレスは本当に軽減されました。日本史上最長の渋滞は、95年12月27日に名神・秦荘PAから東名・赤塚PAまでの区間で発生した距離154キロメートルのものです。また、当時は100キロメートル超の渋滞が頻発していて、流れるスピードも時速10〜15キロメートル程度でした。しかし、今は年末年始やGW、お盆でも渋滞は長くて50キロメートル。しかも、渋滞が流れるのは時速25キロメートルと大幅に速くなっています。

渋滞が小規模化している背景には、ETC導入が進んで料金所での渋滞が激減し、新しい路線が開通したことがあります。たとえば大渋滞が起きていた名神・東名の交通量は、新名神・新東名の開通で分散されました。東北自動車道下りは大谷PA付近で3車線から2車線になっていたためボトルネックでしたが、宇都宮ICまで3車線が延びたことで渋滞が解消されています。

レジャー渋滞だけではありません。首都高はC2(中央環状線)が全線開通したことで、C1(都心環状線)が空くように。世界の大都市はどこも日常的に渋滞しますが、日本は平日に都心の渋滞がなくて海外の人に驚かれます。

冒頭に示したように渋滞全体は拡大していますが、一つ一つの渋滞は小粒になり、抜けるのに何時間もかかるケースは減ってきました。渋滞だからといって、もはや恐れる必要はありません。不意に渋滞に遭遇した場合も、どうせすぐに抜けられると割り切って、ストレスなく運転しましょう。

清水草一(しみず・そういち)

モータージャーナリスト。1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、編集者を経てフリーラ イター。これまで14台のフェラーリを購入。『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリの買い方』(みなみ出版)などフェラーリに関する著書多数。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年5月30日号)の一部を再編集したものです。

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