誰もが「ウワーッ」と声を上げる…佐々木俊尚・直伝「6合目までなのに感動必至、知る人ぞ知る富士山の歩き方」

誰もが「ウワーッ」と声を上げる…佐々木俊尚・直伝「6合目までなのに感動必至、知る人ぞ知る富士山の歩き方」

雄大な光景をつまみ食いだけして楽に歩くコース

富士山を存分に楽しむ方法はないか。ジャーナリストの佐々木俊尚さんは「『富士山の五合目から上は岩だらけで単調で、登ってても何も楽しくない』と思っていたが、ある年に富士山の雄大な光景をつまみ食いだけして歩くコースを考えた」という――。(第2回/全2回) ※本稿は、佐々木俊尚『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

富士山は登る山なんかじゃない

「富士山は登る山なんかじゃなく、見るための山だ」

富士山は登らないんですか? と聞かれるたびに、そう言っている。

「富士の秀麗な姿を堪能したいのなら、まわりにある三ツ峠山とか愛鷹山とか竜ヶ岳とかの低山に登ってそこから眺めたほうがずっといい。富士山の五合目から上なんて緑もなくて岩だらけで単調で、登ってても何も楽しくない」

とはいえ、こういう自分の発言は「ちょっと天邪鬼あまのじゃくすぎるかな」と内心思っているのも事実だ。富士の驚くほど広大な斜面や、そこから見下ろす雲海は間違いなく魅力的だから。

ただ、この雄大な光景を見るために一泊二日を費やし、急登なうえにものすごく混んでいる五時間以上もの登山道を歩かなければならない。この苦行が、果たしてコスパに見合っているのかということだ。

雄大な光景をつまみ食いだけして歩くコース

そこである年に考えたのが、雄大な光景をつまみ食いだけして楽に歩くというコースの設定である。

五合目をスタートし、しかし六合目までしか登らず、あとは水平移動して別のコースを下山するという行程を考えてみた。山頂に行かない富士登山というのは奇妙な響きがあるが、新たな富士の楽しみ方として検討してみてほしい。お楽しみは、広大な宝永山の火口の斜面と、そして「大砂走り」体験の二つである。

スタート地点は、静岡県側の富士宮口五合目だ。新富士駅や富士宮駅からバスが出ている。夏のシーズンは自家用車が規制されており、クルマの場合はふもとの水ヶ塚公園駐車場から路線バスに乗り換える。

富士宮口五合目はけっこう狭く、夏山シーズンだったこの日は人でごった返していた。雑踏を避けたくて早々にパッキングを済ませ、宝永山荘と雲海荘という二つの山小屋がある六合目を目指す(なお六合目まで上がらず、駐車場から車道を少し戻って宝永山に向かうもっと楽なルートもある)。

登りはきついが、あっという間に六合目に着く。頂上を目指す登山道とは別に「宝永山」と書かれた道しるべを探そう。小屋の奥のほうに続いている道がある。そちらに足を踏みいれると、急に登山者は激減して静寂が広がった。

道は富士山の山腹を巻くようにまっすぐに続く。一〇分ほど歩くと、唐突に広いところに出た。そしてだれもが「ウワーッ」と声を上げてしまう光景が目の前に。

宝永山の火口だ。江戸時代、富士山の最後の大噴火のときにできた巨大な火口が眼前に広がっているのだ。おまけに登山道をたどっていくと、火口の底にまで歩いて下りることができるのである。なんという壮大、なんという感動。

火口に降り立って「ここがドカーンと噴火したのか……」と自分が熱いマグマに吹き上げられるところをイメージしてみた。まったく想像の上限を超えている。火山というものの奥深さ、すさまじさに圧倒されるばかりだ。

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2025.06.08

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