現役学生「東大医学部の4割が医者ではない道を選ぶ」という衝撃…過熱する医学部受験ブームで起きていること
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医学部の受験熱が過熱している。慶應義塾大学医学部の木下翔太郎特任助教は「各大学の医学部には、強い医師志望ではなく成績が良いだけで医学部を受験する生徒がいる。大学受験における競争の頂点である東大理三も例外ではない」という――。(第1回) ※本稿は、木下翔太郎『現代日本の医療問題』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
25年前から偏差値が17もあがった医学部
日本の医療に関しては今後の課題など暗い話題が多く、制度なども大きく変わりつつある時期になっています。一方で、そうした事情を知らずか、あるいは知った上でなお、医学部を志望する学生は多く、受験競争の厳しさが続いていることはご承知のとおりかと思います。そうした状況が続いていることは果たして医療にとってよいことなのでしょうか。
日本に限らず、医師という仕事は他の高収入の職業と比べて景気変動に左右されにくいことが認識されています。日本における医学部人気の高まりは、バブル崩壊以降の長期の経済停滞の中で、不況に強い職業として医師の人気が高まり、医学部入試の受験競争が過熱化していったためとみられています。
なお、この間で医学部全体の入学者の定員は大きく増加しており、防衛医科大学を除いて1990年度には全国で7685人だったのが、2015年度には9134人まで増えています。しかし、それによって医学部入試が楽になったということはなかったようです(図表1)。
医学部に優秀な人材が集まるデメリット
本書では特に受験の細かい内容には踏み込まないため、あくまで参考程度の情報としてご覧いただければと思いますが、河合塾が作成した入試難易予想ランキング表(2024年11月18日更新時点)に基づく、医学部の入試難易度を図表2に示しました。
ご存知の方も多いかと思いますが、基本的にどの総合大学においても医学部が最難関学部となっており、東大・京大・早慶などの難関大の理系学部と同等以上の偏差値の医学部が複数あることがわかるかと思います。
また、医学部内の偏差値の違いについては、国立・私立ともに歴史が古い大学の偏差値が高くなる傾向にあること、私立の場合は学費が安い大学の偏差値が高くなる傾向にあることが知られています。
このように医学部の受験競争が激しいことについては、入学後も多くの勉強を求められる環境に適応しやすい優秀な学生が集められる、というプラスの見方をしている医療者は少なくありません。しかし、現実問題として、他の理系分野よりも医学部に人材が集中することのデメリットもあります。
昔からよく指摘される点としては、勉強ができて親や教師にすすめられたから、勉強ができることを証明したいから、といった理由だけで、医学部を目指す学生が出てくる、という批判です。