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子どもの誤飲と窒息。知っておきたい応急処置と事故が起こりやすい原因
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クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
クローバーこどもクリニック院長/日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。
命に関わる重大な事故につながることもある子どもの誤飲。大人が目を離したすきに事故が起こることも多いため、目が行き届きにくくなる場面では注意が必要です。今回は、乳幼児期の誤飲について、起きてしまう原因、実際に誤飲してしまったときの症状や応急処置、家庭での対策について解説します。
乳幼児期に起こりやすい誤飲事故
乳幼児期の子どもは好奇心旺盛で、さまざまなことができるようになる一方で、事故にあう場面も増加します。
誤飲事故は、家庭内で起こる事故の中で、0歳から3歳の子どもに多く、小さなおもちゃをはじめ、たばこ、電池、医薬品、洗剤、画鋲など家庭にある身近なものを飲み込むことによって起こっており、飲みこんだものによっては命の危険も伴います。
なぜ誤飲事故が起きてしまうのか
生後5~6カ月ごろにみられる成長に、目にしたものや手につかんだものに興味を持って何でも口に持っていくという行動特性があります。
この行動は物を確かめるといった学習行為であり、成長するにあたって必要な発達ですが、おもちゃ以外にも、大人なら絶対に口にしないようなタバコの吸い殻や電池、薬品などを飲み込んでしまうことも少なくありません。
小さな子どもはのどが狭く、口の大きさはおよそ4cmと小さくなっています。それだけでなく、飲み込む・吐き出すといった力が弱いために、口に入れた物でのどを詰まらせて器官に入ってしまう誤嚥や、窒息を引き起こす危険があります。
特に、6~20mmの大きさのおもちゃは、子どもののどに詰まりやすいため注意しましょう。兄弟がいる場合は、上の子どものおもちゃの大きさを確認しておくことも大切です。
食事中の誤飲は窒息の危険が伴う
また、誤飲による窒息事故は、おもちゃなどで起こる以外に、食事中に起こる場合も。厚生労働省の「食品による窒息事故に関する研究結果等について」の資料によると、食品の窒息事故を経験した約半数の保護者が、危険について認識しておらず、注意をしていなかったという報告もありました。
たとえば、丸くて表面が滑らかなブドウやミニトマトなどは、うまく噛むことができず飲み込んでしまうと、喉につまって息ができなくなることも。
ほかにも、水分量が少なく飲み込みにくい餅やパン、固くて噛み切りにくい生野菜や肉類などは、十分に咀嚼ができていない状態で飲み込むと大変危険です。
乳歯が生えそろう3歳頃までは、噛む力が弱く、丸飲みが起こりやすくなっています。窒息事故は、遊び食べや、寝転んで食べる、一度にたくさん口の中に入れてしまうなどでも起きるため、正しい姿勢でよく噛むということ以外にも、保護者が見守ることも大切です。
窒息の危険は、授乳の場合でも起こります。授乳後は縦抱きでげっぷをさせてから寝かしつけを行い、窒息しないように意識しましょう。
誤飲・窒息したときの症状と対応
子どもに誤飲や窒息と思われる症状が現れた場合、飲み込んだものによっては早急な処置が必要です。窒息した場合、数分で呼吸が止まることもあるため、正しい対応を知り、実践することが大切です。
窒息によって意識がない、息をしていない場合は、119番や救急ダイヤル、中毒情報センターへ早急に連絡しましょう。
誤飲したものや量によっては、最初は無症状でも後日になって咳や嘔吐などの症状が現れることもあるため、必ず医療機関を受診してください。
誤飲した場合
誤飲した場合の症状は、飲み込んでしまったものの種類や量、大きさ、それが身体のどこにあるかによって異なります。
誤って飲み込んだものが食道や胃にとどまった状態の「消化管異物」が起こると、場合によっては、うずくようなずきずきとした痛みや嘔吐、出血などの症状が現れるケースもあるため注意が必要です。
電池の誤飲では、内容液が漏れだす危険や、消化管が傷つくことによって穴が開く恐れも。また、薬品や化学物質を誤飲した場合は、「急性中毒」に注意が必要です。
また、子どもの誤飲で圧倒的に多いとされるタバコの誤飲では、吐き気や嘔吐、顔面蒼白などの症状が出る場合があるため早急に医療機関を受診しましょう。
子どもが誤飲した場合の対応は、水や牛乳を飲ませて誤飲したものの成分を薄めたほうがよいケースと、何も飲ませないほうがよいケースがあり、誤飲したものの種類によって対応が違う場合があるため注意が必要です。
誤飲により窒息した場合
食品や誤飲したものが喉に詰まった場合、反射的に以下のような行動や症状が現れることがあります。
・声が出せなくなる
・喉をおさえて苦しそうにする
・喉に詰まっているものを取ろうとして口の中に手を入れる
・苦しそうに呼吸をしている
・顔色が青くなる
・唇が紫色になる
窒息状態になると、ほんの数分で呼吸が止まって意識を失います。最悪の場合、心停止や脳死する可能性もあるため、一刻も早い処置が必要です。
子どもに窒息の症状が出た場合は、まず救急車を呼び、到着するまでの間に喉に詰まったものを吐き出させるための応急処置を行います。乳児の場合は、うつぶせで頭を低くした状態で背中を叩く背部叩打法、1歳以上の幼児の場合は、後ろから両腕を回してみぞおちの下で腹部を圧迫する腹部突き上げ法を試みましょう。
【背部叩打法】
1.口の中に指を入れずに片手で乳児の体を支え、うつぶせの状態で頭を低くする
2.乳児のあごをしっかり支えながら、もう一方の手で乳児の背中を連続して叩く
【腹部突き上げ法】
1.子どもの背後から両手をまわし、みぞおちの下を片方の手で握りこぶしを作り、もう一方の手で握りこぶしをにぎる
2.握りこぶしを起点に子どもの腹部を上に向かって圧迫する
※この方法が難しい場合は、横向きに寝かせる、または座って前かがみの姿勢の状態で、背部叩打法を試みてください。
これらの方法は、いざというときに実践しようとしても難しく、うまくできないこともあるかもしれません。万が一の場合に備え、ぬいぐるみを使って練習したり、消防署などが実施する講習会に参加したりして学んでおくと安心かもしれません。
事故を起こさない環境作りと配慮が対策に
子どもの誤飲は、保護者が周りの環境に配慮して対策することで防げる場合が多くあります。
たとえばおもちゃなどの保管場所です。誤飲をしやすいものや危険なものは、子どもの目に触れない場所や手の届かない場所に保管することが大切です。子どもの手が届く高さの目安は、1歳児では約90cm、2歳児では約110cm、3歳児では約120cmとなっているため、ソファーや椅子などの踏み台になるものを近くに置かないように気を配ることも忘れてはいけません。
また、食事の際は、子どもの月齢や年齢に合った大きさや固さに調理するだけでなく、よく噛んで食べる習慣づくりや、子どもがちゃんと噛んで飲み込むことができているか大人が見守るようにしましょう。
誤飲から子どもを守るために保護者が適切な対策をしながら、目を離さないことが大切です。また万が一の事故に備えて正しい対応ができるよう応急処置等の知識も身につけておきましょう。
出典:子どもを事故から守る!!事故防止ハンドブック/消費者庁
監修:眞々田容子(クローバーこどもクリニック)
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眞々田容子
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。