ピジョン株式会社(本社:東京都中央区、社長:北澤 憲政)は、国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)と共同研究において、出産時の母親の背景因子「分娩方法」「出産経験」が初乳中の成分(TGF-β1, TGF-β2, IgA)と関連があることを明らかにしました。本研究結果は、国際学術雑誌「Nutrients」のオンライン版に公開されました。
母乳中のTGF-βは、乳幼児のアトピー性皮膚炎の発症を防ぎ、血清中のIgAを促進する可能性が示唆されており、重要な免疫因子として着目されています。また、母乳中のIgAも重要な免疫因子の一つで、乳幼児の腸の免疫成熟に重要な役割を果たすことが分かっています。一方、母親の背景因子と母乳中成分(特に脂質などの栄養素)の関係についてはこれまでに多くの研究報告がありますが、母乳中の免疫成分との関連は明らかではありませんでした。そのため、今回、母親の背景因子と母乳中の免疫因子(TGF-β1, TGF-β2, IgA)の関連を調べました。
本研究では、国立成育医療研究センターで出産した26~46才までの母親42名を対象とし、出産後2-6日に初乳を、約1ヶ月後の25-37日に成熟乳をご提供いただき、母親の背景情報として質問紙へのご回答もお願いしました。初乳中の免疫成分の濃度は大きな個人差がありましたが、約1ヶ月後には収束していきました。(図1)
近年、分娩件数は減っている一方で帝王切開の割合は増えており、帝王切開後の授乳は経腟分娩時に比べると負担も大きいため、授乳開始が遅くなるとも言われています。
今回の研究では、帝王切開で出産した母親の初乳中の一部の免疫因子(TGF-β1,TGF-β2,IgA)の濃度が経腟分娩の場合よりも高く、初乳をあげる重要性を改めて確認することができました。手術後の痛みがひどく起き上がれず直接授乳が難しい場合は、さく乳器を使うなど母親の状態に合わせて子どもに初乳を届ける工夫が必要となります。
また出産経験においては第1子を出産した初産婦の方が第2子以降を出産した経産婦に比べて濃度が高く、分娩後の初乳をあげる機会を逃さないよう出産前から母親自身(特に初産婦)が理解できるような情報提供の仕方を検討していくことが望まれます。(表1)