【プロトレーナー監修】子どもの運動神経の伸ばし方。運動神経が良い子の特徴や年齢別おすすめの遊び

【プロトレーナー監修】子どもの運動神経の伸ばし方。運動神経が良い子の特徴や年齢別おすすめの遊び

子どもの「運動神経」を伸ばしたいと考えているママやパパは多いのではないでしょうか。両親共に運動が苦手な場合、子どもも似てしまうのでは、と悩むこともあるかもしれませんが、実は運動神経は鍛え方次第で伸ばすことができます。今回は、子どもの運動神経について伸び始めるのはいつからか、運動神経が良い子どもの特徴から運動神経の伸ばし方、年齢別におすすめの遊びや運動をご紹介します。

そもそも「運動神経」とは?

※写真はイメージ(iStock.com/kokoroyuki)
※写真はイメージ(iStock.com/kokoroyuki)

運動神経は、目や耳から入ってきた情報を脳が処理し、体の各部に指令を出す神経回路のことを言います。

 

一般的にいわれる「運動神経が良い」とは、この神経回路がよく発達し自分の思った通りに体を動かせたり、力の調整やコントロールが上手いことを指します。

また、1950年代からドイツの神経生理学者やスポーツ運動学者によって体系化され、ヨーロッパのほか日本のスポーツの現場でも取り入れられてきた「コーディネーショントレーニング(Coordination training)」理論では、運動神経が良いことを「コーディネーション能力が高い」という意味合いで表現しています。

コーディネーション能力には、「リズム能力」「バランス能力」「変換能力」「反応能力」「連結能力」「定位能力」「識別(分化)能力」といった7つの能力があり、どんなスポーツや運動をする時でもそれらが複雑に組み合わさっていると考えられています。

コーディネーション能力

子どもの運動神経が伸び始めるのはいつ?

子どもには、個人差はありますが運動神経が伸び始める「ゴールデンエイジ」という時期があると言われています。

具体的には、およそ6~12歳頃とされており、専門家によって1、2歳の差があります。

この時期に様々な運動や遊びで体を動かす経験をしておくと、その後の運動能力に大きな影響を与える可能性があるとされ、楽器演奏の指使いなどスポーツ以外の面でも影響が出やすいといわれています。

また以下のように、「プレ・ゴールデンエイジ」「ゴールデンエイジ」「ポストゴールデンエイジ」と3つの時期に分けて考えられることも。

・プレゴールデンエイジ(4〜8歳頃)

神経回路の発達が著しく、様々な動きを経験して基本的な運動動作を身につける時期。

この時期に多種多様な動きを経験しておくと、次のゴールデンエイジ期に運動神経を高めやすい。

・ゴールデンエイジ(8〜12歳頃)

新しい動作を何度か見るだけで短時間で理解し覚えられる、大きく成長しやすい時期。

この時期に覚えた動きは一生忘れにくい。

・ポストゴールデンエイジ(12~14歳頃)

今まで身につけた基本動作の反復練習をしながら、質を高めていく時期。

脳や骨格や筋力、心肺機能が発達してくるため、複雑な動作ができたり、スタミナをつけるトレーニングの効果も表れやすい。

ポストゴールデンエイジ期には、子どもの体の神経系統がほぼ完成に近づいている状況です。そのため、この時期になると、以前の時期ほど劇的な運動神経の成長が見込めないという説もあります。

運動神経が良い子どもの特徴

文部科学省が実施した「体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究(平成19年度から21年度に実施)」によると、運動神経が良い子どもにはいくつかの傾向が見られることがわかっています。

運動神経が良い子の特徴についてご紹介します。


1日1時間以上は外遊びをしている

文部科学省調査によると、外遊びが多い子どもほど体力総合評価が高く、さらに外遊び時間が「3時間以上」になる子の54.3%の体力評価が、AもしくはB判定という好結果です。

文部科学省では、少なくても「毎日60分以上」体を動かすことが望ましいという指標も立てており、幼稚園や保育園に登園しない休日でも体を動かせるよう親も一緒に意識することが大切かもしれません。

なお「毎日60分以上の身体活動(※)」は、世界保健機関(WHO)をはじめとする多くの国々でも推奨されており、この目安は現在の世界的なスタンダードになるようです。

もし外遊びができない状況でも、散歩やお手伝いなどでも多様な動きの経験ができるため積極的に実践できると良いでしょう。

※身体活動…安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての営みのこと


多くの友達と遊びを楽しんでいる 

※写真はイメージ(iStock.com/JGalione)
※写真はイメージ(iStock.com/JGalione)

文部科学省の調査では、より多くの友達と活発に遊びを楽しむ幼児ほど運動能力が高いという傾向もあります。

多くの友達と遊ぶことでルールを決めたりコミニュケーションを高めることができる他、やる気や集中力、社会性、認知的能力などを育む機会も与えてくれるでしょう。


自己肯定感が高い

また、文部科学省の「幼児期運動指針ガイドブック」によると、積極的に体を動かす子どもはやる気がある、我慢強い、社交的など前向きな性格傾向があるようです。

子どもの頃は友達と体を動かす場面が多く、そのような中で「ほめられる」「他の子より上手」といった成功体験が多いと、自信がつき、自己肯定感を高めることにつながることでしょう。自信がつくともっと新しい挑戦をしたくなり、成功体験と挑戦を繰り返していくことで運動神経もおのずと成長しやすいようです。


勉強ができる

文部科学省の「小中学校の全国都道府県学力テストの結果と体力・運動能力の調査結果」によると、運動ができる子は勉強もできるという傾向があります。

人間が運動する際は、脳のさまざまな部位が活性化します。それによって集中力や記憶力を高め、勉強のパフォーマンス向上につながるようです。


出典:

体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究/文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/youjiki/index.htm

幼児期運動指針ガイドブック/文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319772.htm

体力特製と遊び習慣の関係について/文部科学省

https://www.mext.go.jp/sports/content/20211215-spt_sseisaku02-000019583_4.pdf

令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果の総括/スポーツ庁

https://www.mext.go.jp/sports/content/20211215-spt_sseisaku02-000019583_4.pdf

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36パターンの基本動作を経験する

幼少期に、遊びや運動、生活動作のなかで様々な動きのパターンを経験しておくと、運動の基礎となる神経回路を育みやすいかもしれません。

以下のように、人の動きは36パターンの基本動作から構成されています。それを幼児期に身につけることで、将来スポーツなど色々なことにチャレンジしやすくなるでしょう。

36パターンの基本動作

ひとつの動きにとらわれない

※写真はイメージ(iStock.com/hanapon1002)
※写真はイメージ(iStock.com/hanapon1002)

ランニングのような特定の動きを繰り返す単一の運動を繰り返している間は、運動神経よりも持久力や筋力を中心に鍛えていることになります。

また、運動の頻度や強度の高いトレーニングなどは、特定の体の部位にストレスが加わりやすく注意が必要かもしれません。

様々な状況に対応し体を思い通りに動かせる運動神経、すなわち「コーディネーション能力」を鍛えるには、多様な動きが含まれる遊びや運動をバリエーション豊かに楽しめるように工夫しましょう。

例えば、ボールを投げるにしても、同じ投げ方で何度も繰り返すのではなく、後ろ向きで投げたり目を閉じて投げるなど、色々な面白い動きを取り入れ動きに変化をつけてみましょう。


多様な基本動作が習得しやすい遊びやスポーツをする

文部科学省の「幼児期運動指針」では、幼児期に必要な多様な動きの獲得や体力・運動能力の基礎を培う運動として、鬼ごっこが取り上げられています。

鬼ごっこでは「走る」「止まる」「よける」「追いかける」「急な方向転換」など色々な動きが習得できる他、運動神経だけでなくルールを決めたり協力して逃げるなど、友達とのコミュニケーション能力も向上しやすいでしょう。

その他、多様な基本動作が習得しやすい、ボール遊びや縄跳び、スキップも、運動神経に刺激を与えるのにおすすめです。

ボール遊びは、野球ボールやドッチボールといった大きさの違うものを使ってみたり、手の平で打つ、ひざやかかとで蹴るなどいつもと違う遊び方をしても効果的でしょう。

スキップは、足でしっかり踏み込み、腕を大きく振って体を引き上げる必要があります。この動作は速く走る動作にもつながり、スキップが上手くなればなるほどかけっこも得意になるかもしれません。


出典:幼児期運動指針ガイドブック/文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319772.htm

【年齢別】子どもの運動神経を伸ばす遊びや運動

文部科学省の幼児期運動指針ガイドブックをもとに、子どもの運動神経を伸ばすのにおすすめの遊びや運動について幼児期の年齢別にご紹介します。


3~4歳頃

日常生活や遊びの経験をもとに、基本的な動きがひと通りできるようになる時期です。この頃は、何度も繰り返すことに面白さを感じられる遊びの環境があると良いかもしれません。

滑り台やブランコ、鉄棒、木登り、巧技台、マットなどで全身を使って遊ぶことで、立つ、座る、寝ころぶ、起きる、回る、転がる、渡る、ぶら下がるなどの「体のバランスをとる動き」や、歩く、走る、はねる、跳ぶ、登る、下りる、這はう、よける、すべるなどの「体を移動する動き」が経験できるとよいでしょう。


4~5歳頃

※写真はイメージ(iStock.com/T-kin)
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全身のバランスをとる能力が発達し、それまでに経験した基本的な動きが定着しはじめる時期です。

友達と一緒に運動したりルールや決まりをつくることに楽しみを見いだしたり、身近の用具を使って操作する動きも上手になります。

なわ跳びやボール遊び、トランポリンなど、リズムをとったり用具をコントロールする遊びの中で、持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴る、積む、こぐ、掘る、押す、引くなどの「用具などを操作する動き」が経験できるとよいでしょう。


5~6歳頃

無駄な動きや力みなどの過剰な動きが少なくなり、動き方が上手になっていく時期です。

友達と力を合わせ役割分担して遊ぶようになり、満足するまで取り組むようになるほか、今までの経験を生かして遊びを発展させる姿も見られるように。

また、全身運動が滑らかで巧みになり、全力で走ったり、跳んだりすることに心地よさを感じるようになります。

ボールをつきながら走るなど基本的な動きを組み合わせた運動、色々なルールの鬼ごっこ、縄跳びや自転車といった道具を使った遊びなど、これまでより複雑な「体のバランスをとる動き」「体を移動する動き」「用具などを操作する動き」が経験できるとよいでしょう。


出典:幼児期運動指針ガイドブック/文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319772.htm

子どもの運動神経についてママたちの体験談

※写真はイメージ(iStock.com/RichLegg)
※写真はイメージ(iStock.com/RichLegg)

子どもの運動神経についてママたちの体験談を聞いてみました。

 
 

私自身が子どもの頃は、比較的運動神経がよく体育はいつも“5”だったのですが、どうもうちの子は全員あまり運動神経が良い方ではないことに加えアクティブではないので、運動嫌いにならないように…と思って結構頑張りました。

子どもの運動神経を鍛えるために、小学校内の朝活動として行われている陸上クラブ(毎朝7時30分~30分間)に子どもと一緒に参加するようにして走るようにしたり、その他の運動に関してもなるべく一緒にやるようにしました。

親も言うだけでなく一緒に朝早く起きて行って走るので子どもも『NO』とは言えず、頑張っていました。結果、3人とも決してずば抜けた運動神経の持ち主ではないですが、それぞれ今も自分たちの好きな運動を続けています

 
 

小さいうちは、自分のできないことがお友達が得意だったり上手だったりするのを見て、コンプレックスを持ちがちな気がします。

私は子どもたちの小学校で運動クラブのお手伝いを長くやってきましたので、子どもたちにはこの時期はそれぞれの体の成長の度合いも違うこと、いますごく早くても体の使い方によっては遅くなる場合があることなどをきちんと説明して、幼少時代の運動が人と競うことに重点を置かず自己の記録や体力の向上に寄与する話をよくしました。

きちんと体の使い方を教えることで早くて3年生で、遅くても6年生になる頃には得意不得意のものはあっても基本的にはみんな運動神経がよくなっていったと思います

 
 

運動神経が良い子は、やはり体を動かすことが好きであり、苦でない子だと思います。

小さいうちは中にはやんちゃ過ぎるくらいの子もいて無駄に体力を消費するタイプの子もいますが、成長とともに体の使い方を教えることで上手に自分の体を使えるようになっていくと思います。また、運動神経の良い子は比較的勉強もできるような子が多いように思いました

 
 

自分の遺伝で子供の運動神経が悪くならないかな?と心配でしたが、長男はサッカーを始めた小学3年生から、次男は幼稚園のときから運動神経が良かったです。

うちはふたりともサッカー一筋で、好きなことなので自主的に筋トレしたり走ったりして、当たり負けしない体になったかもしれません。

また、サッカーの初めてのセレクションのときにびっくりしたのが、応募フォームに両親の身長を書くこと。遺伝要素も選考基準に含まれているということですかね。

あるクラブチームでは実際に遺伝子レベルでその子の適正を見るという噂も。運動神経全般と各競技の適性は別かもしれませんが、どちらもある程度遺伝はあるのかもしれませんね。私が運動神経よくないので息子たちになんとなく申し訳ないと思ってしまいます

 
 

小6長男と小1次男はとても運動神経が良く、悩んだことは基本的にはありません。子どもの運動神経を鍛えるために試したこととしては、外に連れ出すことは意識していました。『自分は運動ができる』ということがひとつの自信にはなっているようです。

運動神経が良い子の特徴としては、足が速いイメージがあり、1~2歳の走り始めた時期から運動会の徒競走で1位で足が速いんだなと思っていました。その後もだいたいクラスで1位をとることが続いています。

体を動かすことがとにかく好きで、小さい頃から外遊びは頻繁にさせておりパワーがありあまっている感じです。

逆に8歳の長女は、もちろん一緒に公園遊びなどはしますが、基本は家で読書や自分ひとりでできる遊びを好みます。私は、運動神経がよくない娘の気持ちが痛いほどわかるので、『お母さんも走るのは遅かったけど大人になって困ったことは一度もないよ』『運動会も嫌なら休んでもいいよ』と言ってあげています

楽しく子どもの運動神経を伸ばそう

※写真はイメージ(iStock.com/eggeeggjiew)
※写真はイメージ(iStock.com/eggeeggjiew)

子どもの運動神経を育むには、個人差はありますが、プレゴールデンエイジ期から様々な体を動かす体験をさせてあげることが大切でしょう。

外遊びが難しい場合も、屋内遊戯施設へ連れていく、家事のお手伝いを頼むなど体を動かす経験ができる環境を大人が積極的に用意してあげるとよいかもしれません。

また、子どもの運動神経を良くしようと焦って運動させたくなる時もあるかもしれませんが、気分が乗らない場合に無理強いはしないようにしましょう。

日頃から楽しく運動する習慣を、親子で身につけられると良いですね。


監修:

Profile

齊藤邦秀(スポーツトレーナー・フィットネストレーナー)

齊藤邦秀(スポーツトレーナー・フィットネストレーナー)

有限会社Wellness Sports代表取締役、(公財)日本健康スポーツ連盟日本メディカルフィットネス研究会委員、ライプチヒ大学公認コオーディネーショントレーナー、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)日本支部副代表、(社)国際予防医学協会講師。1990年代からスポーツトレーナーとして活動し始め、これまでに約5万人の運動指導者を育成。プライベートでは3人娘の父親で子どもの発育発達に合わせた運動指導に興味を持ち、ドイツ・ライプチヒ大学で学ぶ。メディア出演、行政・学校へのセミナー講演、トレーナー育成、キッズ〜ジュニア運動指導者向け講習会など活動は多岐にわたる。

2022.11.14

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