多様化する出産スタイル。計画出産とはどのような出産方法なのか

多様化する出産スタイル。計画出産とはどのような出産方法なのか

計画的な誘発分娩や無痛分娩など、自然分娩以外の選択肢も積極的に取り入れられるようになってきた昨今。それぞれの特徴を知って、自分らしいスタイルで出産したいと考えている方もいるでしょう。今回は計画出産について、それぞれの出産方法や費用、よさや注意点について詳しく解説します。

計画出産には多様な選択肢がある

出産には、自然分娩をはじめ、誘発分娩や無痛分娩、帝王切開などさまざまな方法があります。最近では、多様化する出産スタイルの中から、自分に合った分娩方法を選択する人も増えています。


計画出産とは

母親の持病や胎児の状態などを考慮し、あらかじめ出産予定日を決めて分娩を行う方法のことを「計画出産」といいます。

計画出産が行われるケースとしては、医学的な理由と社会的な理由の2種類があります。

【医学的な理由】

・胎児や母体の状態が悪く、妊娠を続けることにリスクがある場合

【社会的な理由】

・立ち会い出産など家族の事情で出産日をコントロールしたい場合

・自宅から分娩施設が遠い場合 など

他にも、無痛分娩を選択する場合は分娩日を決めるため、計画出産となります。

iStock.com/Kwangmoozaa
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計画出産は、あらかじめ決まった日程で出産が行われるため、施設スタッフの多い時間帯に分娩することで、何か異常が起きた場合でも迅速に対応するというよい点が挙げられます。

また、胎児の心拍パターンを終始管理することで、お産の安全性が高まるという大きなメリットも。

心の準備含め、あらかじめ出産への準備ができることや、上の子の入院中のお世話を前もってお願いできることなども、計画出産ならではの利点です。


それぞれの分娩方法

計画出産の分娩方法は4種類あります。

・誘発分娩

・無痛分娩

・和痛分娩

・帝王切開

誘発分娩の場合、バルーンと呼ばれる器具を挿入し、徐々に子宮口を開かせながら、陣痛促進剤を投与します。陣痛促進剤は、子宮収縮を促すオキシトシンやプロスタグランチンという、いずれも母親の体内で作られるホルモンでできています。

陣痛が順調に強くなり、出産に必要な程度まで子宮口が開いたことが確認できれば、通常通りお産が行われます。

無痛分娩は、下半身のみの局所麻酔である硬膜外鎮痛法を用いて、陣痛やお産の痛みを和らげる出産方法です。

日本産婦人科医会の「分娩に関する調査」によると、無痛分娩で出産する人の割合は、年々増加しています。

麻酔の痛みの感じ方には個人差があり、痛みをほぼ感じない場合から生理痛程度の痛み、そこそこ痛みを感じる程度までとさまざまです。上半身には麻酔がかかっていないため、意識もはっきりした状態でお産をすることができ、生まれてすぐの赤ちゃんに母乳を与えることも可能です。

iStock.com/isayildiz
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無痛分娩の他に「和痛分娩」がありますが、ガイドラインなどによる明確な線引きがありません。

施設によって呼び方や意味合いが異なり、同じ硬膜外鎮痛法を「和痛分娩」としている施設もあれば、呼吸法やリラクゼーションなど、薬を使わない方法のことを「和痛分娩」としている施設もあるため、具体的な方法や内容について確認しておくことが大切です。

また、計画出産を予定していても、予定日よりも早くにお産が始まってしまった場合や、母体・胎児の状態が変化した場合などは、状況により実施できなくなることもあります。そういった場合は、無痛分娩の予定が自然分娩での出産となることもあります。

その他、前回帝王切開で出産している場合や多胎(双子や三つ子)を妊娠している場合、逆子や母体の状態などによっては、帝王切開による計画出産を行うケースもあります。


出典:分娩に関する調査/公益社団法人日本産婦人科医会

計画出産はいつからできるのか

最適な時期は妊娠38週頃

iStock.com/Adene Sanchez
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計画分娩には、実施が可能な時期があります。一般的には、妊娠37週以降の正期産の時期に入った妊娠38週頃が最適とされています。これより早い時期だと、胎児が十分に成熟していない可能性が考えられるため、受けられないことがあります。

実施時期は、医師が母体と胎児の状態を総合的にみて判断し、出産の準備が整う時期を予測して決めます。基本的には、母親の希望を考慮して予定日を決めますが、母体や胎児に緊急性があり、早く出産したほうがよいと判断した場合は、安全性を考慮した予定日に実施されます。

誘発分娩や無痛分娩は、母親の希望で選択することができますが、帝王切開については、医師が必要だと判断した場合のみ実施されます。

前回帝王切開で出産している場合や多胎(双子や三つ子)を妊娠している場合、逆子や母体の状態などによっては、医師の判断で帝王切開による計画出産が選択されます。

計画出産を行う場合は、基本的に予定日の前日に入院し、母体と胎児の状態を確認しながら、それぞれの分娩方法に応じた処置が行われ、準備が整ったらいよいよ出産となります。


理由によって費用は変わる

出産はけがや病気ではないため、計画出産であっても、基本的に健康保険の対象にはなりません。個人的な事情により計画出産を選択した場合は、全額自己負担になり、一般的には、通常の出産費用に加え、数万~20万円としている施設が多いようです。

しかし、逆子や母親の持病、胎児の状態などによりやむを得ず計画出産を行った場合は、妊娠・出産時の異常とみなされるため、保険が適用されます。また、医療保険に加入している場合は、保険金が支払われることも。

計画出産に要する費用は行われる処置や施設によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

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計画出産のリスク

計画出産の主なリスクには、誘発分娩の際に起こることのある「過強陣痛」や、無痛分娩や帝王切開の際に使用する麻酔に対するアレルギーなどがあります。

iStock.com/nicoletaionescu
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「過強陣痛」とは、陣痛促進剤によって、薬が効きすぎたために過度な陣痛を起こしてしまうこと。

母親の感じる陣痛の痛みが強くなるだけでなく、子宮収縮が必要以上に強まることで胎盤の血流が悪くなります。その状態が続くと胎児の状態が悪くなったり、強い収縮に耐え切れず子宮や産道が裂け、多量出血する可能性もあるため危険です。

そうならないため、陣痛促進剤は正しい知識を持つ医師のもと、母体と胎児の状態を終始みながら慎重に使用されます。

また、ごくまれなケースで、無痛分娩や帝王切開の際に投与する麻酔の成分に対して、アレルギーを発症する人もいます。アレルギー症状が重い場合、母体はショック状態になり、胎児にも生命の危機が訪れる危険性も。

事前に麻酔に対するアレルギー検査が可能なため、検査を行っておくと安心でしょう。

リスクを知り正しい知識を持って選択を

iStock.com/Srisakorn
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計画出産にはさまざまなメリットがありますが、少なからずリスクもあります。自然分娩含め、どの方法を選んでも出産は命がけです。

誘発分娩時に使用する陣痛促進剤や、無痛分娩・帝王切開時に使用する麻酔剤などについて、少しでも不安に感じることや疑問に思うことがあれば、納得できるまで医師や施設に確認し、しっかりと理解した上で選択しましょう。


監修:林聡(東京マザーズクリニック)

Profile

林聡(東京マザーズクリニック)

林聡(東京マザーズクリニック)

医学博士。産婦人科専門医。広島大学医学部卒業。広島大学大学院医学系研究科修了。大学の医局に勤務後、フィラデルフィアで胎児診断を学び、国立成育医療センターで国内初の胎児診療科の立ち上げ参加を経て、2012年に24時間365日対応の東京マザーズクリニック院長に就任。これまで手掛けてきた無痛分娩は延べ4000件以上。専門分野は胎児診断・各種胎児疾患の治療、臨床遺伝学(出生前診断)、周産期医学。著書に『怖くない・痛くない・つらくない 無痛分娩』(PHPエディターズ・グループ)。

2020.12.18

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