世界的自動車メーカーなのに社員の名刺が驚きの薄さと安っぽさ…「ケチ」の逸話だらけのカリスマ経営者
年間18万台程度の小さな静岡の軽自動車専業メーカーが世界ベスト10へ
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自動車業界を塗り替えた経営者は誰か。モータージャーナリストの鈴木ケンイチさんは「自動車メーカーのスズキはいまでこそ大企業だが、もとは小さな小さな静岡の軽自動車専業メーカーだった。成長を遂げられたのは、1978年から2015年まで『自分は中小企業のおやじ』というスタンスを通してトップを務めた経営者の手腕による」という――。 ※本稿は、鈴木ケンイチ『自動車ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
自動車業界「スーパースター列伝」
自動車業界には、スーパースターのような偉大な経営者が数多く存在します。そもそも、先ほど説明したように、自動車メーカーの名称の多くは創業者の名前です。そして、その多くが一代で、自身の自動車メーカーを世界に名だたる存在に育て上げています。
エンジン車を発明したベンツ氏とダイムラー氏に始まり、フォード氏、クライスラー氏、ポルシェ博士、ルノー氏、シトロエン氏と、そのブランドの数だけ、奇跡のような成長の物語があると言っていいでしょう。すべてが偉大な人物です。
日本における偉大な創業者と言えば、本田宗一郎氏が該当します。ホンダのルーツは宗一郎氏が戦後に手に入れた発電機用エンジンを自転車に取り付けたところにあります。補助動力となるエンジン音が「バタバタ」ということから、この自転車は「バタバタ」と呼ばれて大成功を収めます。これが戦後間もない1946年のことでした。その後、宗一郎氏率いるホンダはオートバイメーカーとして成長し、1960年代からは4輪事業に参入。
いくつもヒット車を生み出して、ホンダを世界的な自動車メーカーに成長させました。何の後ろ盾もない裸一貫からのスタートでのサクセスストーリーです。
ちなみに、宗一郎氏は、引退後きっぱりと会社から身を引き、ホンダを同族企業にしなかったというのもユニークな点でしょう。