低年収の人ほど飛行機・タクシーに乗ったことがない…「移動できる人」と「移動できない人」の知られざる格差

低年収の人ほど飛行機・タクシーに乗ったことがない…「移動できる人」と「移動できない人」の知られざる格差

年収300万円未満の46%は海外渡航経験がない

年収は私たちの生活にどんな影響を及ぼすのか。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員の伊藤将人さんは「日本人の移動手段や旅行経験について調査してみると、年収や社会階層による格差が存在していることが分かった」という――。(第1回/全3回) ※本稿は、伊藤将人『移動と階級』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

全国調査で判明した「移動格差」

本稿では、全国の2949人が回答した、移動に関する独自の調査結果をもとに、移動と移動格差の知られざる実態を明らかにしていく。

はじめに、移動手段ごとの利用経験をみてみよう。

移動と言ってもその内実はさまざまだが、多くの人にとって最も直接的かつイメージしやすいのが「交通手段・移動手段」ではないだろうか。通勤通学している人の大半は、電車かバス、自動車、自転車のどれかを日常的に使っているだろう。利用する側ではなく、交通手段や移動手段に関する仕事に就いている読者もきっと多いはずである。

それでは、一体、誰がどんな移動手段を使っているのだろうか、移動手段の利用をめぐる差は存在するのだろうか。

飛行機、新幹線、タクシーに乗らない人たち

図表1は、自家用車、タクシー、新幹線、飛行機を「利用したことがない」人の割合を示したものである。日々、これらを使って移動するのが当たり前の人は驚くかもしれないが、移動手段の利用をめぐっては明確に格差が存在する。それは、4つの移動手段すべてにおいて、年収が低いほど利用したことがない人の割合が高いという事実である。

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出所=『移動と階級』

ここでは、比較的、移動費用や所有にお金がかかると思われる移動手段を図表にしてみた。本調査では他にも自転車、公共交通バス、高速バス、鉄道(在来線)について同様の質問をしているが、年収が低い層ほど、利用したことがない人の割合が高い傾向があった。

つまり、最も日常生活に近い移動手段の利用という観点でみても、移動をめぐる格差が存在しているのである。

自家用車の保有に関しては、一般社団法人日本自動車工業会が保有世帯のより詳しい調査結果を示している(2024年)。それによれば、年収を5つの層に分けた場合、低所得層では56.7%の世帯しか車を保有しておらず、ほぼ半分の世帯は自家用車社会の恩恵を十分に受けられていない。

平等な移動を実現していくためには、この階層により幅広く移動サービスを提供していくことが求められるのである。

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2025.05.24

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