「食費1日700円」まで切り詰めても国保料6万8000円が払えない…6人家族を苦しめる「国民健康保険」の重い負担
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税金の滞納が続いた場合、役所が徴収のために財産を差し押さえる場合がある。だが近年、悪質な差し押さえ行為が相次いでいるという。ジャーナリスト・笹井恵里子さんの新著『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)より、その実態の一部を紹介する――。(第2回/全3回)
給与だけでなく不動産の差し押さえ、タイヤロックも
近年、給与収入や年金、不動産や自動車を差し押さえられる例が多発している。
大阪社会保障推進協議会が厚生労働省提供のデータをもとに分析を進めると、差し押さえ率が高い自治体が明らかになった(図表1参照)。ワースト3は、佐賀県、群馬県、長崎県だ(2016年度の分析)。例えば佐賀県は県全体で9億2641万円の滞納額に対し、9億192万円の金額を差し押さえている。群馬県にいたっては滞納額が県全体で約38億8700万円に対し、60億1700万円も差し押さえている。なぜ滞納額を差し押さえ額が上回るのかといえば、不動産を差し押さえるからだ。
その差し押さえ率が高い群馬県前橋市で、過酷な差し押さえから市民を守ろうと奮闘していたのが、故・仲道宗弘氏である。仲道氏は「例えば5、6万円の滞納額に対して、100万円の評価額がある不動産を差し押さえるケースなどがある」と話していた。
「国税徴収法48条により滞納額を大きく上回る財産を差し押さえてはならないのに、実際にはあれこれと理由をつけて不動産の差し押さえが横行しています。ほかにも仕事で使う車をタイヤロックするという『自動車の差し押さえ』もよくあります。タイヤロックをすると車に乗れません。ついこの間もタイヤロックされた人が、仕事で車を使えないと困るので親戚中に頭を下げて、お金をかき集めて納付していました。違法ではないのですが、行政の進め方が強引だと感じます」
行政による「違法行為」が頻発している
20万円の国保料滞納があったとする。しかし1万円ずつ20回払いが許されず、5万円ずつを4回で、あるいは10万円ずつを2回でなどと言われ、それができないとなると一方的に差し押さえられる例を見てきた、と仲道氏は憤っていた。
「国保料は支払い終わり、延滞金の9万円のみが残って、2か月間連続で払わなかったらタイヤロックされたという人もいました。18年までは銀行口座に給与が振り込まれたその日に即座に全額差し押さえるというケースも。ただしこれは前橋地裁で『脱法的な差押処分として違法』という判決がなされました」(なお東京高裁18年12月19日)
本来、国保料滞納による差し押さえは「生活保護相当の生活費」は残しておかなければならない。にもかかわらず、違法行為の差し押さえが近年も頻発しているのだという。