「岡本太郎の絵の前でじっと立っていた」3歳で自閉症と診断された少年をアーティストにした“奇跡の遠足”
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それまで「1分」も立ち止まっていることができなかった
佐藤楽音(GAKU)さんは3歳の時に自閉症と診断されたアーティストだ。父親で自ら福祉施設を経営するアイム代表の佐藤典雅さんは「がっちゃんが絵を描くことに目覚めたきっかけは、スタッフのココさんに出会ったことだ。彼女が岡本太郎の絵を見せに連れて行ったところ、1カ所に1分も立ち止まれないがっちゃんが、5分も立ち止まっていたのだ」という――。
※本稿は、佐藤典雅『GAKU,Paint! 自閉症の息子が奇跡を起こすまで』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。
「環境を自閉症の子に近づける」
がっちゃんが中学校の支援学級を卒業した時点で、自前でノーベル高校をつくったのには理由がある。実はボクも知らなかったのだが、高校は義務教育ではないため、支援学級がない。支援学級の生徒たちが卒業後に行くのは、特別支援学校(元養護学校)である。
この特別支援学校は、従来イメージされている障害(ダウン症など)を前提とし、就労支援へ向けた訓練に重きを置いている。
しかし、がっちゃんのような自閉症は行動パターンが規格外(ボクはニュータイプと呼んでいる)で、就労支援の内職作業には向いていない。そのため、彼を特別支援学校に通わせるのは難しいように思えた。
そこで、通信サポート校である明蓬館の協力を得て、ノーベル(ノーベル高等学院)をつくった。生徒はアイム(※当時は放課後デイサービスのみ運営)に通っていたがっちゃんとタクミくんの2人となった。
「自閉症の子を普通に近づけるのでなく、環境を自閉症の子に近づける」
そんな高い理念を持って始めたノーベルだったが、こちらの思惑は早くから崩れ始めた。