冬の乾燥で増加する子どもの手荒れ対策

冬の乾燥で増加する子どもの手荒れ対策

新型コロナウイルス対策として、入念な手洗いやアルコール消毒が日常となった昨今。例年に比べ、子どもの手荒れが気になる方も多いのではないでしょうか。加えて、これから本格的な冬を迎えるため、乾燥によってさらに悪化の懸念も。今回は、子どもの手荒れについて、原因や症状、家庭で行うケアについて解説します。

子どもの手荒れが悪化しやすい原因

毎年冬になると乾燥から手荒れしやすくなりますが、大人だけでなく子どもの手荒れも深刻な問題です。

子どもは大人と違い自分の意思でケアをしようとはしないため、気が付けば手荒れが悪化していた、というケースも多いのではないでしょうか。


手荒れを引き起こすメカニズム

帰宅後の石鹸による手洗いはもはや常識となりつつありますが、実は手をきれいにするための石鹸も手荒れの原因のひとつ。洗浄力の強い石鹸は、汚れやウイルスだけではなく、皮膚のバリア機能である角質と皮脂まで落としてしまうのです。

角質層は、皮膚のバリア機能として、水分を保持するふたとしての役割や、ウイルスなど異物の侵入をブロックする役割を担ってくれています。

ウイルス対策のために手洗いや消毒をしているにもかかわらず、石鹸やアルコール消毒液の使用が手荒れを引き起こし、手荒れが進むとさらにバリア機能が低下する…というループに。

特に子どもは大人よりもバリア機能が弱いため、痛みなどから手洗いが不十分になると、ウイルスを十分に落とすことができません。

さらに、これから本格的な冬を迎えるにつれて空気が乾燥し、寒くなることでお湯で手を洗う機会も増加。お湯は水に比べて洗浄力が強く、皮膚に必要な皮脂まで落としてしまうため、症状を悪化させる可能性があります。

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手洗いや消毒のやりすぎは手荒れを招く原因に

ウイルスを気にするあまり、過剰に手洗いやアルコール消毒をすることで乾燥し、かえって手が荒れてしまうケースもあります。

あまり神経質にならず、帰宅時やトイレの後、食事前など、適切なタイミングで実施することを心掛けましょう。

また、清潔を心がけて石鹸を利用しても、すすぎが不十分だと手に残った石鹸の成分にかぶれてしまい、手荒れを起こす場合も。

指の間や手首は特に洗い残しが起きやすい部分であるため、保護者がしっかりとすすげているか確認することが大切です。

また、敏感肌やアトピー性皮膚炎、アレルギーといった体質にこれらの外的刺激が合わさることで、手が荒れやすくなることもあります。

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手荒れのさまざまな症状

手荒れが起こると、以下のようなさまざまな症状が現れます。


  • 乾燥
  • かゆみ
  • 赤み
  • 腫れ
  • 痛み
  • 水泡
  • 膿み
  • ひび
  • 赤ぎれ
  • 湿疹

一般的に、最初は乾燥やかゆみを感じる程度ですが、症状が進むとひびやあかぎれを起こし、痛みや出血を伴うケースも。

手荒れの症状レベルにもよりますが、初期段階の乾燥であれば、手洗いの頻度を減らす、保湿を心がけるなどするだけで改善することもあります。

数日様子をみてもよくならない場合や、悪化している場合、症状がひどく生活に支障がある場合などは、皮膚科を受診しましょう。

治療には、抗炎症作用はステロイド剤、かゆみが強い時には抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤が処方されます。

「お子さんにステロイドは使いたくない…」という保護者の方もいますが、正しく薬を使用することで、手荒れを長引かせることなく完治させましょう。

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正しい手洗い方法と保湿で手荒れを改善

手荒れに気が付いたら、早めに治療することはもちろん、その後再び手荒れしないように日頃から手荒れ対策をすることも重要です。


手荒れしにくい手洗いのコツ

しっかりと汚れやウイルスを落とし、かつ手荒れを防ぐ手洗い法があります。今までの方法を見直し、実践してみましょう。


  1. 手首の洗い残しを防ぐため、袖をまくる
  2. 人肌程度の流水で手指を濡らす
  3. 泡タイプ、もしくは固形石鹸を十分に泡立て、30秒ほどかけて細部まで丁寧に洗う
  4. 流水で15秒以上すすぎ残しがないよう洗い流す
  5. こすらないよう水分をしっかりと拭き取る

刺激を防ぐため、使用する石鹸は、液体タイプは避けましょう。

泡タイプ、もしくは固形石鹸を十分にネットで泡立てたものを使うことで摩擦を減らし、手のひらや甲はもちろん、指は1本ずつ、指と指の間、指先、手首までしっかり洗います。

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また、手に水分が残った状態だと、蒸発する際に皮膚の水分も一緒に気化してしまうため、洗い終わったら、タオルで摩擦が起きないようゴシゴシとこすらず、軽くポンポンと叩くようにして水分をしっかりと拭き取ることが、手を乾燥させないコツです。

小さなお子さんの場合、手洗い後にすすぎ残しがないかを保護者がチェックするようにしましょう。未就学児でもコツさえ覚えれば自分でしっかりとできるようになります。

また、流水で洗うだけでも細菌やウイルスを洗い流す効果があるため、石鹸が手元にない場合や手荒れにより石鹸がしみる場合などは、流水でしっかりと洗い流しましょう。


手洗いと保湿はセットで

しっかりと水分を拭き取ったら、すぐに保湿を行うことが大切です。手洗い後にアルコール消毒を行う場合も、アルコール消毒後に同様に保湿を行いましょう。

保湿剤は、ヘパリン類似物質やワセリン、尿素が配合されたもの、市販のハンドクリームなどで大丈夫ですが、手荒れがひどい場合は皮膚科医にご相談のうえ、処方してもらいましょう。

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iStock.com/Pollyana Ventura

手洗い後の保湿には、以下のような効果があります。

・手を洗うことによって落ちた皮脂や保湿成分をカバーする

・皮膚表面の水分を保湿剤でふたをすることで乾燥から守り、皮膚を保護する

軟膏やクリームタイプは人差し指の指先から第一関節まで、ローションなどの液体タイプは1円玉大が両手のひらに塗る場合の適量といわれています。手のひらだけでなく手の甲や手首までたっぷりと塗れるよう、適量の2倍の保湿剤を塗るのがよいでしょう。

子どもと手洗いをした後に、ハンドクリームを塗る習慣づけをすることが理想です。手がべたつくのを子どもが嫌がる場合は、液体タイプの保湿剤を使ったり、どうしてもベタベタを嫌うお子さんの場合、就寝後に塗るのもよいでしょう。

子どもの手の健康を守るためのサポートを

手荒れを起こさないためには、手洗い時にしっかりと石鹸をすすぎ、手洗い後は水分をしっかりと拭き取る。そして、こまめに保湿剤を塗り、皮膚の水分を保つことが大切です。

手洗いや保湿ケアは子どもひとりでは不十分。特に、子どもの肌はデリケートなため、保護者によるサポートが必要不可欠です。

多少のかさつきがひどい手荒れになってしまう前に、手荒れしにくい手洗い法や保湿ケアの習慣をつけ、子どもの手の健康を守りましょう。


監修:小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

Profile

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。 2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。

2021.01.13

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