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元鈴木さん流、子育ても美容も「比べない、頑張らない」生き方
出産を機に自分をケアする時間が激減し、いつしか自信がなくなり、自分を愛せなくなっているママは多いはず。そこで今回は、Twitterで「コルセットの人」として圧倒的人気を誇る元鈴木さんに、自分らしく生きることの大切さや「頑張らなくても作れる美」についてお聞きしました。
子どものために多くの時間と無償の愛を注ぎ、家族の前では笑顔を絶やさない。
世間が求めるそんなあるべき「よき母親」像に、息苦しさを感じることはありませんか?
本来の自分のやりたいことや、なりたい姿に目をつぶり、子どもや家族に尽くせば尽くすほど、いつしか自分自身と向き合う時間は後回しになります。
これは、私たち女性が、幼い頃から「妻は、母はこうであるべき」という呪いの言葉を、無意識レベルで受け取っているからかもしれません。
世間が求めるよい母親像から解放され、もっと自分自身を愛するためにはどうすればよいのでしょうか。
そこで今回は、事業家であり、3歳の娘を育てる母である元鈴木さんに、産後の自分の体型との向き合い方や、自分の体を愛することの大切さ、それを叶えるためのマインドセットについてお伺いしました。
「みんな一緒」の同調圧力からの解放
ーー日本にはさまざまな抑圧的な風潮がありますが、「自分の体、自分自身を愛する」ことができなければ、子どもにもこの価値観が受け継がれてしまうのではないか、という不安があります。元鈴木さんはSNS上でも女性をエンパワーメントする存在であり、同調圧力には屈さないというイメージがありますが、現在のメンタルをどのように形成されたのでしょうか。
元鈴木さん:SNSやメディアなどで顔を出して発言していると、「幸せいっぱいに育ってそう」「恵まれてそう」といったイメージを持たれることがあるのですが、実は私は、いわゆる毒親育ちで、自尊心も自己肯定感も低く、メンタルも強くありませんでした。
学生時代は学校も苦手で馴染めないタイプで、「みんなで同じことをやろう」という雰囲気や、それが良しとされている世界、団体行動なども苦手で。周りは「ああしろ」「こうしろ」と言ってくるけど、私はそれができないんです。
でも、結局「あれこれ言ってくる他人は何もしてくれない」ということに気がつきました。
たとえば今、「母親なんだからもっと地味な恰好をしなさい」と言ってくる人がいて、その人の望む格好をして本当に自分は満足しますか?
他人は無責任に文句はつけてくるけど、責任はとってくれません。それをいちいち真に受けていたら身がもたないし、だったら自分が納得して、ベストだと思う恰好をしたい。
どんな服を着ていようが、他人に迷惑をかけるわけではありません。何ごとも「自分軸」で考えて、自分自身が結果に納得することがすべてなんです。
ーー自分に自信が持てないことの根本には、「自分がどうありたいか」ではなく「どう見られるか」の方を教え込まれる日本の社会も影響しているような気がしますね。
元鈴木さん:自分のありたい姿より、「どう見られるか」を大切にしてしまうのは、日本の小学校教育の良くないところでしょう。「みんな同じように仲良くしましょう」とか、「ちょっとでもはみ出しちゃいけない」みたいな価値観からはいい加減に卒業したいですよね。
たとえば、私の年代だと、「女子で一人称が「僕」はちょっと痛い子」みたいな価値観があるんですが、娘の一人称は「僕」です。
でも、まだ性自認も分からない中で、彼女が決めたことを否定するのは違うと思い、そのままにしています。
ーーそういうとき、子どもを尊重してあげたいと思いつつ、つい世の中の「常識」と照らし合わせそうになってしまいますね。
元鈴木さん:私自身、発達障害が強めで、できないことがとても多いんです。たとえば、夜、鍋に火をかけているのに、急に「今すぐ、庭にいちごを植えなければいけない」と思うと行動してしまう。
その私が消し忘れた火を消してくれて、私ができないことをカバーしてくれるのが夫です。もちろん、彼ができないことは私がカバーしています。
夫と出会い、付き合うようになってから「この人が好きでいてくれる私を否定してはいけない」と思えるようになったんです。子どもを産んでから、その思いはさらに強くなりましたね。
元鈴木さん:夫が「家事はお手伝いするものじゃなく、夫婦で一緒にやるべきことなんだよ」と言ってくれたのも、私がスーパーウーマンじゃなかったからかもしれません。
日本の女性ってみなさん仕事も家事も育児も何でもやっていて、すごいと思うんですけど、もっと甘えていいんじゃないかなと思うんです。
ーー自分に甘くしたり、優しくしたりするのが苦手という人は日本人にはとくに多いように思います。もう少し自分に寛容になることが、自分を愛することにもつながっていくのでしょうね。
元鈴木さん:世の中、我慢することや自らに鞭を打つことを美徳としていますよね。私は我慢があまり向いてないので、無理をしないことをすごく大事にしています。
無理をしていっぱいいっぱいになって、つまづいたときに立ち上がれないほど傷ついてしまうくらいなら、最初から「できない」と言ってしまう方がいいんですよね。子どもにも、「親は完璧な存在じゃない」という姿を見せていきたいと思ってます。
コルセットを広めた元鈴木さんの「努力しないための努力」という考え方
ーー元鈴木さんは現在3歳のお子さんがいらっしゃいますが、産後の体型の変化や、自分をケアする時間がとれないことに対して葛藤はありましたか?
元鈴木さん:体型の変化は妊娠の段階からものすごく感じていました。自分の体にはくびれがあるのが当たり前だと思っていたので、お腹が前に出たり、今まで着ていた服が着れなくなったりしたことはショックでした。
出産は帝王切開だったので、傷が残っただけでなく、縫い目が引き攣れて、皮もすごく余って、それを見た時は落ち込みましたね。
元鈴木さん:とはいえ、産後は4カ月くらいまでは赤ちゃんで手一杯だったので、美容どころではなく、コルセットはつけていませんでした。
でも、夜中に3時間おきに起きてミルクをあげているとき、ふと「私、子どもを産む前はどんな人間だったっけ…?」と思いまして。
それで、子どもを寝させてから、自分の書斎でコルセットを締めて「そうだ。私、前はこんな感じだったわ!」と、自分を奮い立たせました。
ーーコルセットといえば、これまで結婚式など特別なときにつけるもので、締め付けが苦しいものという印象でしたが、元鈴木さんは、日常にコルセットを取り入れ、無理なく理想の自分に近づけていくことを広めました。なぜコルセットだったのでしょうか?
元鈴木さん:最初にコルセットをつけ始めたのは、イベントコンパニオンを始めたばかりで仕事があまりとれなかった頃。仕事をとるにはまず、オーディションを突破しなければいけません。
オーディションの審査員は1日に何十人も見ているわけだから、彼らの記憶に残るにはどうしたらいいのかを考えたんです。
私は運動が苦手なんですが、イベントコンパニオンの仕事は、朝9時から夕方5時くらいまで、硬い床の上でハイヒールで立ち続け、帰りの電車では爆睡してしまうほどハードワークです。その後疲れた体に鞭打ってジムに行くのは、運動嫌いの私には到底無理でした。
元鈴木さん:そこで、「まずはコルセットで驚くほどのくびれを作り、見た目でインパクトを与えてから、自分のスキルを見せること」を思いついたんです。思惑どおり、そこから順調に仕事を取れるようになりました。
ーー当初は既製品を使われていましたが、その後自らコルセットを作りブランドを立ち上げたんですよね。
元鈴木さん:コンパニオンをやめて、ビューティー系のライターをしているときにコルセットのことを書いた記事がものすごくヒットして、コルセットが一気に広まりました。
でも、当時私が使っていたものは外国製で、使用方法によっては1週間で金具が取れて壊れたり、金具が上に着ている服を突き破ったり、金具で肉をはさんで痛かったり……それらをすべて我慢していました。
しかも、西洋人向けの作りだったので、アジア人には丈も合わない。
「じゃあ私が、日本製でオリジナルのアジア人の丈に合った製品を作るべきじゃない?」
と思ったんです。それまでのコルセットは、ゴスロリや、SMなど、ちょっと特殊な趣味のためのもの、という印象があったので、もっと一般の人にもっと使いやすいものを作ろうと思いました。
ーーコルセットといえば、「くびれ」がキーワードだと思いますが、どういった反響が多いのでしょうか。
元鈴木さん:これまでに海外製のギヂキチのコルセットをつけたことがある方からは「すごくラクで、どこも痛くならない」「でも、きちんとくびれができる」「アンダーが落ちた」「感動した」という意見をたくさんいただいています。
私自身、くびれ=正義とは思っているわけではありません。ただ、「くびれがある自分を見てみたい」という気持ちには応えたい。
やはり、これだけご好評いただいてる一番の理由は、これまでのコルセットのように、つけるときに気合がいらないことだと思います。
これまでのモノは20個くらいホックがあり、時間をかけ、頑張ってやっと着用できるものでしたが、忙しい朝に、女性がコルセット着用にかけていた時間を、もっと別のことに使ってほしい。
そう思い試作を重ね、しめやすくて頑丈なファスナーをつけたので、装着は10秒で完了します。
元鈴木さん:現代女性は忙しい方が多いので、このつけやすさもご支持いただいている理由のひとつだと思います。
私はこれを努力しないための努力と呼んでいます。ジム通いとか、運動とか、疲れてできない自分を責めるくらいなら、コルセットを10秒で締めて、「私、こんなにいけてます」と自信を持って外を歩いてほしいですね。
頑張れない私だからこそ生まれたアイデア
ーー現在、コルセットだけでなく、お尻や胸が大きい人向けアパレルブランドも展開されています。どのようにしてこういった商品のアイデアが生まれたのでしょうか。
元鈴木さん:基本的に、TwitterなどのSNSの声をヒントにモノ作りをすることを大事にしています。
たとえば、アパレルの売れ筋にヴァージニースカートという商品があるのですが、このスカートは500mlのペットボトルがポケットにおさまるんです。しかもポケットに入れているときにまったく違和感がない。これも実はSNSの声をヒントにしています。
元鈴木さん:男性には、当然のようにジーンズに大きめのポケットがあり、「男性は長財布を入れてカバンを持たずに身軽に移動できるのに、女性のジーンズのポケットは、シルエット重視で小さい」という声を見て、「よし!かわいい上に、男性よりものすごくモノが入るポケットの付いた服を作ろう!」と思ったんです(笑)。
ふんわりしたスカートのシルエットを守りながら、ポケットから大量に物が出てきたら最高だと思ったので、布量は普通のフレアスカートの2、3倍は使っています。
ーースカートのポケットにオムツやおしり拭き、哺乳瓶を入れて持ち歩こうと考えた人はこれまでいないでしょうね。
元鈴木さん:とくにママになると荷物が増えるのに女性のアパレルはポケットが小さい。大きなママバッグを持たなくても、身軽で出かけられれば、もっと気軽に子どもとのお出かけが楽しめると思います。
収納力抜群のスカートというアイデアは、結果的に、幅広い年齢層の女性から支持されています。
ーー企画からデザイン、素材選びまで一貫して関わられていることには、どんなこだわりがあるのでしょうか。
元鈴木さん:おそらく、世間からみた私は「インフルエンサー社長」のカテゴリーに入ると思いますが、一般的なインフルエンサーさんの場合、デザイナーから上がってきたパターンの中から選んだり、少しコメントしたりするくらいです。
でも、私が作りたいのは、胸が大きくてもきれいに着られたり、そもそも服から拒絶されないという「機能」なんです。
機能を大切にしながらも、自分が「かわいい」「好き」と思えることを大事にしているので、両立するには、自分がゼロから関わらなければ無理なんです。
予算などさまざまな条件がある中で「どんなものを作れるか?」を毎回考えている感じですね。
元鈴木さん:会社として、コルセットやアパレルを販売することになったときに考えたのは「世の中のためになるようなもの作りをしたい」ということ。
女性の自立を応援したいという気持ちから、フェミニズムを基本にしてモノ作りをしています。
たとえばアパレルなら、出かけるときの制約がないように大きなポケットがついていたり、1人で着られるように背中にジッパーをつけないようにしていたり。細かい点ですが、女性の自立支援という意味で大事だと思ってます。
私は自分がおおざっぱな人間で良かったと思っています。そうでなければ、しわにならないよくのびる服や、500mlペットボトルが入るポケットという発想は生まれませんでした(笑)。
一般的にはアパレルをやる人は「おしゃれなものを作りたい」のだと思いますが、私は「問題を解決したい」から作っているんです。
「女性ものはシルエット重視でポケットをなくそう」などさまざまな規制があるので、そこを軸にしていたら、うちのような製品は作らないでしょうね。
ありのままを愛せなくてもいい、自分の理想の形になろう
ーー産後とくに、自分の見た目が好きになれない、自信が持てないという人が多いと思いますが、自分の体を愛することの重要性について元鈴木さんの考えをお聞かせください。
元鈴木さん:私の会社のコルセットのテーマは「自分を好きになるための魔法」です。
たとえば私は、白髪が結構あるんです。真っ白ならピンクにしたり、そのままグレイヘアを楽しむこともできるけど、そこまでではなくて。自分の見せたいイメージから外れると、雑音になってしまうので、白髪染めを使っています。これって罪悪感を感じることではないですよね。
自分の見せたい自分に近づけるという行動は、「ボディポジティブ」のような名前はないけど、誰もが日常的にやっていること。その一環として、コルセットも活用してくれたらなと思います。
「結果より過程が大事」という考え方もありますが、ダイエットなどの過程で苦しんだのに結果が出ず、自分を責めて終わるのは一番もったいないですよね。
ほかにも、私はすごく面倒くさがりで、美容室もネイルサロンも、予約をしてその時間に間に合うように外出しなければいけないと考えるだけで苦痛なんです。
自分以外の完璧な人間のようにがんばろうとした時もありましたが、今はもう美容室は4、5ヶ月に一度くらいしか行かないので、その分はなるべく自分に合ったラクなホームケアを見つけることにフォーカスしています。
なにごとも、他人軸ではなく自分軸で考えれば、もっとラクになると思います。
ーー産後の体型の変化にとまどったとき、「コルセットをつけることで自信を取り戻した」という声も多く見かけます。
元鈴木さん:世の中には「体重をコントロールできないのはだらしない人間」「それができない自分はなんて駄目なんだ」という風潮や思い込みがありますよね。
本当はそんな言葉に耳を傾ける必要はないんですが、残念ながら現実に見た目一つで対応が変わることは私も実感しています。コルセットをしめる前もしめた後も同じ人間なのに。
だから、「自分のことが好きじゃない」「自信が持てない」と思っていた人が、コルセットをつけたことで「自分は本来これだけ大切にされてもいい人間なんだ」と気づいたり、思い出してくれるのが嬉しいんです。
元鈴木さん:最終的にはコルセットをつけなくても「私は十分素晴らしい」と思えたら、つけることをやめてもいいんです。
いろんなものを乗り越えて、その結果、ありのままの自分を認められるようになった人はすごく強いと思います。でも、世の中そんなに強い人ばかりじゃない。
もっと手軽に自分を好きになれるのなら、無理にありのままの自分を認めなくてもいいんじゃないでしょうか。
私は頑張るのも苦手だったからこそ、自分と同じような人のために、細かいニーズに応えられる商品をこれからも提供していきたいと思います。
<取材・執筆>KIDSNA STYLE編集部