子どもの可能性を引き出すために、大人・教育者ができること
「次世代幼児教育研究プロジェクト」のオンラインシンポジウムが開催
子どもたちの自主性をサポートし、試行錯誤する楽しさを伝え、自ら何かを創り出す力を実感できる学びのあり方を研究する「次世代幼児教育研究プロジェクト」は、シンポジウム「子どもの可能性を引き出すために、教育者・大人ができること」をオンラインで開催。
教育関係者や保護者を対象としたこのシンポジウムでは、保育園や幼稚園、小学校の先生、NPOの教育関係者の方などが参加。今回で、4回目の開催となる。
モデレーターには、FutureEdu 代表・Learn by Creation 代表・Peatix.com 共同創設者の竹村詠美氏を迎えた。Crimson Global Academy カントリーマネージャ・文科省中央教育審議会委員の松田悠介氏、コビープリスクールよしかわみなみ園長の三鍋明人氏と共に、テーマについて語り合い、3名が視聴者からの質問にも答えた。
今回のテーマは、“育てていきたい子ども像と大人ができること”、“ICT教育の理想の取り入れ方”など。3名それぞれの観点から、「好き」を探究する大切さ、大人がアンテナを張る必要性、ICT教育の良さについて語られ、終了後の参加者アンケートでは共感の声が多く寄せられた。
育てていきたい子ども像と、大人ができること
「育てていきたい子ども像」については、登壇者の3名とも「好きなことを探求し、感性や表現力を育むこと」の大切さを挙げた。
三鍋氏は幼児期を出会いの場と表現し、子どもたちに様々な体験の機会を提供し、先生や大人も一緒に楽しんで寄り添い、その中で好きなことを見つけてほしいと話した。何が好きで楽しいかを子どもは表現しているけれど、大人は忙しさゆえその発信を見逃しがち。ゆとりを持ち、気づくことの大事さにも触れた。
松田氏は、「好き」を徹底的に探究する時間を確保する大切さを話しました。今の学校のカリキュラムは詰め込まれていて余裕がなく、子どもの時間を必要以上に奪っていることに警鐘を鳴らし、より効率的な学習をベースに感性や直感を育む探求時間を持つことを提案。
竹村氏は、子どもの発信に気づくために大人がアンテナを張り、「変わらなきゃいけない」という意識よりも、「子どもと一緒に楽しく変わる」という意識を持つことが良いのではないかとまとめた。
ICT活用で高度な内容を効率的に学べ、ダイバーシティへの気づきに
小学校でも徐々に ICT 教育が普及し始めている中で、どのような取り入れ方が理想かを話し合った登壇者の3名。
松田氏は ICT教育の良さについて、世界最高レベルのものを誰もが受けられる点と、個別最適化されたものを提供できる点を挙げた。オンラインでも子どもたちは深く繋がることができており、知識の習得を効率化できると言います。効率的な学習で空きができる分、習い
事やプロジェクト学習に当て、好きなことを追求しオフラインの時間を持つスタイルを提案。
三鍋氏は、ICT 機器を使うことで、作業の心理的なハードルを下げられる良さに触れました。例えば絵をコンピュータ機器で描くと、やり直したいと思ったら簡単に線を消すことができ、また、絵を描くまでのプロセスを可視化することでアイデアが生まれる過程を共有しやすくなったと言う。
竹村氏は、大人が失敗させないように補助線を引き過ぎていることに触れ、ICT 機器の活用で「良い失敗経験」を積むきっかけになり、作業の過程を仲間と共有することでダイバーシティに気づくきっかけにもなると述べた。
オンライン学習では、子どもはより自立して学ぶ力が問われ、成長する姿を見てきたと言います。今後はオンラインとオフラインを循環させ、子どもたちがクリエイティビティを発揮できることを期待した。
松田氏は自身が経験した進路や学校での指導経験を元に、「大人が正解を持っていて、子どもに正しい道を用意しているという意識が蔓延している」と指摘。大人の視点や常識で、子どもが本当にやりたいことを選べず、好きなことを阻害している場合があると言う。
園児と関わる三鍋氏は、まずは教員が楽しみ、本気になって子どもと一緒に取り組むことを大切にしていると言う。
竹村氏は、大人も子どもも「好き」なことにより焦点を当てて深くしていくことで、お互いの価値を認め、高めあうことができるのではないかとまとめた。
シンポジウム終了後の参加者へのアンケートでは、「大人が変えるべきマインド」について、共感の声が多く寄せられた。
シンポジウム概要動画
次世代幼児教育研究プロジェクト(Early Education For Tomorrow: E4T) https://www.e4t.jp/